だってだってだって、気になるんだもん。






弱虫バンビーナ






「ねぇ、大楠くん」

「んー?」

「あの子、よく一緒にいるね?」

「ああ、バスケ部のキャプテンの妹」


もぐもぐと購買のパンを食べながら
大楠くんはその女の子の方を見た。
可愛らしくて、女の子って感じがする。
ケンカっ早いあたしとは大違い。

そしてその女の子の隣にいる洋平は
いっこうにあたしに気づいてくれない。




昼休み。
洋平が桜木くんと体育館でバスケしながらご飯食べるって言ってて
ヒマだったらも来ればって言われたから
ちょっと早めにご飯済ませて、体育館に来てみたら


洋平の横には女の子。

で、シュートの自主練をしている桜木くん。


野間くんと大楠くんの高宮くんは壁側で
まだむしゃむしゃ食べている途中。
あたしはというと、なんとなく声掛けづらいし
洋平の近くになんか行きづらいし


とりあえず、大楠くんの隣に座って

手元にあった、パンの袋を勢いよく開けた。


「・・・ちゃん」

「・・・なに」

「・・・それ俺の・・・」

「・・・えぇ?」

「や、なんでもねぇ」



もぐもぐと口を動かしながら、洋平たちを見つめる。
桜木くんのシュートがきれいゴールに入ると
桜木くんは目を輝かせて2人の元へやってくる。

「晴子さん!!見てくれましたか今の!」

「うんうん!見てたよ!桜木くん調子よさそうね!」

「花道、シュートあと何本だ?」

「昼休み分はあと30!」

そう言って、桜木君はまたゴールに向きなおし
ボールを放った。
次のシュートは外れてしまって、桜木君がぶつぶつ言いながら
ボールを拾いに行く。
すると、洋平と「晴子」ちゃんの話し声が聞こえた。

「晴子ちゃん体育館来るの早かったけど、ちゃんとメシ食った?」

「今日は時間短縮でちっちゃいお弁当にしたの」

「ちゃんと食わねぇともたないよ?」

「平気よぅ。洋平君ほんと優しいのね」



2人の笑い声が聞こえる。
ていうか・・・聞こえちゃった。今聞こえちゃったよ・・・

何、2人名前で呼び合う仲なワケ!?

なんかモヤモヤする。

いや、うそついた。

正直イライラする。


ぐしゃ、手にしていたパンの空き袋を手で潰す。
そしてそのまま立ち上がり出口へ歩きだす。

「え、ちゃんもう行くの?」

「うん。もーいい。大楠くんパン食べてごめんね」

それだけ言って、体育館を後にした。

だって洋平と喋りたかったのに、ちっともこっち見てくれないんだもん。

イライラする半面、


(あたし・・・こんなに心の狭い奴だったんだ・・・)


と、落ち込んだり。

テンションが定まらないまま、自分の教室に着いた。

教室の時計を見ると、あと10分で昼休みが終わる。

それまで机に突っ伏して、時間をつぶした。


(あー・・・なんかしんどい・・・)













































昼休みが終わって、そのまま5時限目に入る。

先生が入ってくるまで、ずっと机に突っ伏して寝たフリをした。

洋平が、少しでもあたしのこと気にしてくれるかな・・・





なんて。













































5時限目が終わって、自分の席で背伸びをしていたら
声をかけられた。


「洋平・・・」

「よぅ、昼休み体育館来たんだって?ごめんな気づかなくて」

「・・・んーん」

「ずっと寝てたけど、どっか悪ぃの?」

そう言って、洋平があたしの額に手を当てる。

それだけでさっきのモヤモヤ、もといイライラはどこへやら。

顔がふにゃっとなるのがわかるけど

そこは、恥ずかしいから必死に耐える。


「ど、どこも悪くないってば!」

「ほんとか?」

「ほんとに。あ、そうだ洋平今日ー・・・」



「水戸くーん!お客さん!」



話しを遮られて、教室入口の方から声がした。

2人でそちらを降り向く。

そこにいたお客さん、とは



「あれ、晴子ちゃん」

「!!!!!!!」


洋平は、呼ばれた方へ駆け寄り
何やら話し始めた。

さっきなくなったモヤモヤが再び。

心がどんどん薄黒くなっていくのがわかる。

洋平と晴子ちゃんは少し話して、

洋平が自分の机から教科書を取り出して、それを晴子ちゃんに渡した。

晴子ちゃんはお礼を言い、手を振って教室からいなくなった。

そして洋平は、またあたしの机の近くにやってきた。


「・・・可愛い、子だね。晴子ちゃん」

「あ、知ってる?赤木晴子ちゃん。バスケ部のキャプテンの妹なんだけど」

「知ってるよ。さっきも見てたもん」

「さっき?ああ、体育館?」

「可愛いし、大人しそうだし、なんか女の子って感じするよね」

「ああ、まぁな。かなり天然だけど」

「・・・あたしとは、大違い」

「は?」

自分で色々言ったくせに、言い終わったら泣けてきて

そのまま立ち上がって教室出ようと思ってたのに

洋平に手を掴まれた。


「ちょ・・・っ離して!」

「・・・、泣いてんのか?」

「な・・・!泣いてない!」

「おいで」


手を掴まれたまま、教室の外に出て

そのまま一番人通りの少ない渡り廊下まで来た。

そして向き合ったまま、その場に座った。


「」

名前を呼ばれた、けど顔を上げられない。

なんか恥ずかしくて、洋平の顔まともに見れない。


「」


もう一度名前を呼ばれて頭を撫でられた。

我慢していた涙がぽろっとこぼれた。


「やっぱり泣いてた」

「ちがっ・・・これは今・・・!」

撫でられた手にそのままぐい、と引き寄せられる。

そして肩に顔を埋めた。


「が怒ってる理由、なんとなく・・・だけど・・・晴子ちゃん?」

「ち、違うの、あたしが悪い」

「別に悪くねぇよ、だってヤキモチ妬いてくれたんだろ?」

「は、はぁ!?」

「ちげぇの?」

「・・・ち・・・違わな、い・・・けど・・・」


なんだそれ、って言って洋平が笑ってるのが聞こえた。

悔しいけどなんかホッとしてる自分がいた。


「が心配するようなことは一個もねぇから」

ぽんぽん、と頭を撫でられた。

なんでこう、洋平はいつも人のこと子供みたいにあやすんだろう。


・・・嫌いじゃないけど。



「つうか、もヤキモチとか妬いて泣いたりするんだな」

「・・・!、ど、どうせヤキモチも泣いたりするのも似合わないわよ!」

「似合わないってなんだよ。可愛いじゃん」

「!!!!?」


もうモヤモヤイライラもございません。

今はもうハンパない早さで心臓が動いてるだけ。





























(言い忘れてたけど、花道が晴子ちゃんのこと好きなんだよね)(ええ!!?そうなの!?)
(オレいっつもフォローしてんだ)(てゆーかもっと早く言ってよ!!)
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