それくらいの方が守り甲斐があるってもんだ。






ライオンバンビーナ!






「ねぇ、そこ邪魔なんですけど」

青い縦じまのシャツ着て凄んでも、まぁびびんないよね。

むしろ、逆上してくるに違いない。


「はぁ?!なんだテメェただの店員だろーが!」


ほらね。

あたしのバイトしてるコンビニは

いつのまにかヤンキーたちのたまり場と化していた。

店長はびびってなんも言えないし

今日シフト一緒の男はなんか言い訳並べて動かないし

あんな入口の真横で座りこまれちゃ

商売あがったりだっつーの!



と、いう流れで現在に至る。

そして、注意したら案の定逆切れ。

まぁ、あたしの言い方が悪かったかなっていう気もするけど。

「ほかのお客様のご迷惑になりますので、
 入り口に座りこまれるとこちらとしても、大変迷惑なんですが」

「なんだよねーちゃん、このコンビニの店員さんは客に文句言うわけ?」

「文句ではなくて、他のお客さまに迷惑がかかるんです!」


じっ、とあたしはヤンキーを睨みつける。
もちろん向こうだって引かない。
店長と同じシフトの男はハラハラしながらこっちを見ている。
絶対に助けには来てくれないだろうから当てにはしてないけど

「いちいちうるっせーんだよ!女だからって容赦しねーぞ!」


睨みあっていた男の後ろから、
短気そうな男がイライラしながらこっちに来た。

あ、こいつ絶対話し合いとか応じてくれなさそう。
どうしようかな。

ぐっ、とヤンキーが手に力を込めたのがわかった。
女の子でもやっぱり殴るんだ!サイテー!
ここはもう一発殴られるしかない、か?
ぎゅっと目を瞑って身構えた。
殴るならさっさと殴れ!警察沙汰にしてやる!!


・・・と、思っていたけど

一向に手は振ってこない。
それどころか、何か知らない声が一つ混ざっていた。
そっ、と目を開けて状況を確認してみた。


「あ・・・れ?」


目を開けて見てみれば
あたしを殴ろうと近寄ってきていた男は何やらお腹を押さえていて
他の仲間たちはすぐにでも立ち去る気満々だった。

で、あたしの目の前に立っていたのは、


「よ、洋平?」

「・・・ったく、相変わらず危なっかしいなは」


同じクラスの水戸洋平。
こいつもヤンキーだけど、
洋平たちを見てヤンキーにも色々いるんだなって思った。
それくらい、洋平たちはいい奴らでみんなと仲良くしてるんだけど


「え、てかどーしたの?」

「・・・店長から電話着た」


そしてこのコンビニで洋平とは一緒に働いてる仲間でもある。
いつもはあーいうヤンキー排除は洋平の仕事なんだけど


「なんで俺がいねー時にあーいうことするかな」

「・・・だって、邪魔だったんだもん」

「それでも、あぶねぇだろ」

「・・・うん」

「ま、頑張ったんじゃねぇ?」

ぽす、と洋平の手があたしの頭をなでる。
チクショウ。子供扱いか!!


「あ、」

「ん?」

「俺、ちゃんと間に合った?」

「へ?何に?」


あたしの返事に答えずに、洋平はあたしの顔をじっと見る。

ち、近い!

近いよちょっと!

顔を動かそうにも洋平の手があたしの顔を固定してて動かせない。


「ちょ、洋平!なんなの!」

「や、殴られてねぇよなと思って」

「え?」

「俺が来た時、もうお前一発くらい殴られたのかと思って」

「ああ、大丈夫だよ。てか一発くらい殴られても平気だけど!」

「・・・またそーいうこと言う」

「だって平気だもん!っと、あたし仕事中だった」

「おお、じゃあな」

「あ、洋平今日何時?」

「俺は今日は10時入り」

「じゃーその時間に遊びに来るね!」

ばいばい、と洋平に手を振ると
同じように手を振って返してくれた。
なんか洋平が手ぇ振るのって似合わないなって少し笑えた。

































***








9時半ちょい前。
10時入りなら、普通5分前に出勤だろうけど
あたしが今日行くねって言ったから
きっと洋平は少し早く来てくれるに違いない。

「おかーさーん、バイト先に忘れ物したから取りに行ってくる!」

そう言って、家を出た。
コンビニはすぐ近く。

携帯と財布だけを持って足を進めた。



「・・・あ、てんちょーだ」

店について中をちらっと覗く。
すると店長がレジに立っているのが見えた。
中に入ると洋平に会えないから
裏にある従業員入口の近くに座った。
携帯を見ると、9時35分。


(洋平まだかな)


周りをきょろきょろと見渡してみる。
すると、



「・・・げっ」

「なんだよ、昼間のねーちゃんじゃん」


昼間、店の前でやりあったヤンキーたちがこちらに歩いてくる
最悪だ・・・会いたくもない奴らに会ってしまった。


「人には店の前に座んなって言っといて自分はいいのかよ」

「あ、あたしは人を待ってるんです!」

「なんだその言い訳。おい、謝れよ」

「・・・は?」

「自分もやってんのに人にばっか注意してんなってことだよ」

「何その上げ足取り!」

「いいから謝れっつーの!今度こそ殴るぞ」

「殴れば!?全然平気だし!」

「っといちいち腹立つ!」

今度こそ、今度こそ絶対殴られる・・・!
ぐっと歯を食いしばって身構える。
きっと殴られたら洋平に呆れられるんだろうな


「おい、いい加減にしろよ」


ぱち、いきなり声がして目を開けた。
目の前にあったのは昼間と同じ光景だった。


「え、あ、洋平!?」

「、ちょっと下がっといて」


そう言われて、あたしは少し後ろに下がった。
ていうか洋平の声がいつもより低くて怖い。

「昼間の一発じゃ懲りねーってことか」

「あぁ!?」

「・・・2度もに手ぇ出そうとしたあんたらが悪ぃ」

と、次の瞬間。
洋平はあたしを殴ろうとしていた男を掴んで
ぐい、と引き寄せたと思ったらそのまま脇腹に一発入れた。
男は昼間とは比べ物にならないくらい顔をゆがめて
その場に座り込んでしまった。

「・・・まだやる?」

後ろにいた男たちを、洋平がじっと見る。
男たちは顔を見合わせて、いきなり謝ってきた。

「お、俺らが悪かったよ!」

そう言いながら、座り込んだ男を無理やり立たせて

「もうこのコンビニこねぇから!」

と、言い残して去って行った。



「ざまーみろってーの!」

「」


いつもの調子で、ヤンキーたちに悪口を言っていたら
洋平にさっきの低い声で名前を呼ばれた。
慣れないその洋平に、あたしはどきっとして黙ってしまう。

「・・・な、に?」

「あぶねぇからって、昼間言っただろ」

「う・・・うん」

「もっと逃げるとか、店ん中入るとかあるだろ?」

「・・・う・・・」


目の前の洋平が盛大なため息をついた。
殴られても殴られなくても、どのみち呆れられてしまった。
ていうか、いい加減あたしのこと面倒くさくなった・・・?


「ほんと、お前は」


ぐい、いきなり手を引かれてぐらついたと思ったら、
洋平が身体ごと受け止めてくれた。
そしてすっぽり、洋平に納まってしまった。


「・・・よ・・・!?」

「ほんと、お前目が離せねぇな」

「・・・そ、そんな子供みたいに言わないでよ・・・」

「もうさ、いつも近くにいてくんねぇ?」

「え?」

「一番、近くで守らせてよ」


自分を抱きしめている洋平の手に力が入る。
少し苦しいくらい。

だけど

だけどこんなに心地がいいのはなんで?








































「・・・あのー水戸君?」

いきなり後ろから声がした。
あたしも洋平も、ゆっくりと離れて声がした方を向いた。

「・・・ごめん、10時過ぎてんだけど・・・」




店長だった。









「ちょ、店長!?普通今声かけますか!?」

「いやそれでも5分待ったんだよ!?」

「いっつも洋平にはお世話になってるんだから少しくらい・・・」

「店長、ちょっとお願いがあるんですけど、いいスか」

「「へ?」」


あたしと店長が言い合いをしている間を割って
洋平が「お願い」を切り出した。


「10時のバイト俺しかいないっスよね?」

「ああ、水戸君と・・・僕とだね」

「も入れていいスか」

「は!!?」

「え、・・・っと・・・なんで?」

「今、1人でこいつ帰らすと危ないんで」


大真面目な顔して、洋平が店長に話す。

あたしはいつもの調子で「大丈夫だから」ともいえず

顔をただ真っ赤にして黙ってうつむいた。


「水戸君の言うことも一理あるし、いいよ」

「え、店長いいの!?」

「ありがとうございます」

「じゃ僕は奥で仮眠とるから、よろしくね」


と、店長がひらひらと手を振って奥へ入って行った。
いきなり、働くことになってしまった。
ので、とりあえずロッカーに制服を取りに行こうとした時に
洋平が、あたしを呼びとめる。


「」

「ん?」

「さっきの、意味わかった?」

「・・・んー・・・た、ぶん」

「じゃ、今日のバイト終わるまでに返事な」

「えっ・・・えーと・・・わかった」


顔が熱い。

またきっと顔が真っ赤なんだろうな

洋平がそんなあたしを見て少し笑った。


「は、休んでていいから。俺が勝手に入れたんだし」

「そうもいかないよ。あたし夜初めてだし、楽しみだなー」

「別に夕方と変わんねぇよ?」

「えー怖いお客さんとかいるんでしょ?」

「・・・またケンカふっかける気かお前」

「しないって!でも絡まれたら、助けてくれるんでしょ?」

にか、と口元を緩ませて洋平の顔を見る。

洋平は少し驚いたような顔をしてたけど、すぐにまた笑って


「当たり前だろ」


そう言って、洋平はあたしの頭をぐりぐりと撫でた。

やっぱり子供扱いされているような気がしてちょっとムッとしてたら

それに洋平が気づいた。


「・・・なんか、怒ってる?」

「・・・だってなんか子供扱いしてるでしょ」

「してねぇよ」

「してるもん」

「俺はのこと、女としてしか見てねぇのに」


あたしの頭の上にあった手が、ぐい、とあたしを引き寄せる

目の前が洋平しか見えなくなって

気づいたら、顔がものすごい近くて

一瞬柔らかいものが唇に触れた。


「な?」

「な・・・なななななになにが!!?」

「子供扱いしてねぇだろ?」

「!!!!!」



























(ていうか返事まだしてないのにキスしたね?)(あ、そうだ忘れてた)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
オチがない。強制終了。すみませんー