空も海も飛び越えて、君を思い続けてみようか。






隣 の 彼 女 12






飛び出した保健室を後にして

職員室に向かう。


栄治に会わなくちゃ



別れるなんて思ってない。


ただ、寂しいと思っただけ。


離れてしまうけど、繋がりが断ち切られるのはもっと辛い。




(栄治・・・)




職員室の前で立ち止まって弾む息を整える。
栄治に会って、上手く話せる自信はないけど
でも、この誤解を早く解きたい。

意を決して、職員室のドアに手を掛けた
すると同時にドアが開いた。

「わ!」

「え、あ」


そこに居たのは、栄治だった。


「あ、栄治」

「・・・どーし・・・」

「栄治!ちょっと来て!」


今朝と、まるで逆。

今度は何もわからない栄治を私がさらう。


腕を掴んで走る走る。

きっともうすぐ授業が始まる。

2人で、話が出来るところ。








「・・・さむ・・・」

「ご・・・め。2人で話せるところが思いつかなくて」

「・・・話?」


連れてきたのは屋上。
寒いのは承知の上で、無理矢理連れてきて
壁にもたれかかって2人で座った。


「あのね、栄治さっきの話なんだけど」

「・・・あぁ・・・いいよもう。俺なら大丈夫」

「いーや、栄治わかってないもん」

「わかってるって、そんな傷えぐらなくていいだろ!」

「ほらやっぱり!勘違いしてる!」


一向にこちらを見ないことと、
完全に勘違いをしている栄治に腹が立って

並んで座っていた場所から栄治の目の前に座った。


「・・・なにが」

「私、栄治と別れたりしないから」

「・・・え?」

「私、別れたつもりないからね?」


栄治が気が抜けた顔してて、ちょっと面白かった。
ていうかやっぱり別れたって思ってたんだ。
勘違いもいいとこだ。


「・・・別れたんじゃ、ないの?」

「私が、弱音吐いたのが悪かったんだと思うんだけど・・・」

「や、それは・・・」

「ごめんね、あたし覚悟が出来てなかったっていうのは本当だけど」

「・・・・・・ん・・・」

「でも、別れるのは嫌なんだよ」

「・・・」

「ごめんね」


にこ、笑い掛けるを見て

栄治が顔を伏せて、手で顔を隠した。

ホント昔から変わらない


この泣き虫なところ。



「栄治」

「・・・・・・」

「私と、」




「結婚して」



























涙と鼻水でくしゃくしゃの顔のまま

栄治が勢いよく顔をあげた。


またあたしは大笑いしてしまったんだけど








そんなのお構いなしに




栄治の大きなその腕に抱きしめられた。

























これが、プロポーズの返事。










***




























「えいじー荷造りすんだ?」

「・・・ていうかいつ来たんだよ」

「え?さっき?おばさんには言ったよ」

「でもここは俺の部屋だっつーの」


明後日には栄治はもう空の上だ。

だというのに


「・・・え、全然荷造りしてないじゃん」

「してるって」


そう言って部屋の隅に置いてある旅行バッグを二つ指差した。


「いやいやいや。あんなもんじゃないでしょ普通!」

「なんでいきなりそんな持って行かなきゃいけないんだよ」

「は?・・・だ、って・・・向こうで生活始めるんじゃないの!?」

「へ?」

「・・・・・・・・・・・・へ?・・・っ、て・・・」





なんだ?このかみ合わない会話。





「栄治、アメリカ行くんだよね?」

「おう」

「出発は明日でしょ?」

「・・・そうです」

「荷物、少ないよね?」

「・・・一週間で帰ってくるし・・・」

「は!!!!!!!!!?」



の大声に驚きに、栄治は後ずさる。
が、は栄治の胸ぐらを掴んだ。

顔が、怖い。






「あの、さん顔が怖い」

「話が違う!!」

「や、待って!怖いって!」

「栄治もうあんまり帰って来れなくなるんじゃないの!?」

「・・・そうだけど、今回は・・・」

「今回?」

「・・・今回、は、部屋探しとか・・・学校手続き・・・とかだけ」

「聞いてない!!」

「なんか!なんか話が深刻すぎて言えなくて!」

「くっそー!なんか騙された!!」

「人聞きわりぃ!」









嬉しいけど、なんか拍子抜けだし悔しいし。





だけど





卒業まで、もう少し






色んな君を、焼き付けようと思う。
































(もう栄治と結婚すんのやめるー)(!!!)
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