矛盾だらけ、理解不能な私の心






隣 の 彼 女 11






結婚して




栄治の言葉が耳に残って離れない。

辺りは静まって、時計の秒針の音が聞こえるくらいだ。



栄治はじっ、とこちらを見て視線を外さない。

その視線に心臓の音がどんどん大きくなって

さらに身体も顔も体温は上がりっぱなし

栄治は何も言わない。

私からの返事を待っているのだろうか。





「え・・・じ・・」

唇が乾いて上手く喋れない。

「あ、たし」

振り絞って出した声は




































ピンポンパンポン〜♪




『バスケ部沢北栄治、至急職員室まで来なさい』

















校内放送によってかき消された。
















さっきとはまた違った沈黙。
栄治がびっくりするくらいがっかりした顔をしてる。
それを見て思わず、小さく笑ってしまった。
栄治が気付いて、じっとまた見つめられる。


「あ、ごめ・・・」

「っはー・・・今のタイミングあり?」

「・・・ぷっ」

「ちょ、笑うなよ」

「あはは、ごめ・・・!」


笑うな、と言われればますます面白くなってきて
あとから笑いがふつふつとわき上がって
変なツボに入ってしまい


笑いが止まらなくなってしまった。



「あはははははは!もーだめだ!おっかし!」

「ちょ!こら!」

栄治が掴んでいたあたしの腕をガクガクと揺らす。
一緒に身体もガクガクと揺れて

バランスを崩した2人は

ベッドに倒れ込んでしまった。



向かい合う様に2人で寝ころんで目を合わす。

ふっ、と栄治が小さく笑った。



「・・・なんか、見たことあると思ったら」

「・・・え?」

「や、なんかこの風景見たことあるなって」

「・・・?」

「ほら、小学生の時ンちで昼寝しただろ?」

「うん。したね」

「で、いつも目が覚めると目に入るのは、横で寝てるお前なの」

「・・・・・・」

「今、それ思い出した」

「あたしも憶えてる。栄治いっつもお腹出して寝てたよねー」

「いーんだよそーいう事は憶えてなくて」

「懐かしいねぇ」

「・・・・・・」


ゆっくりと名前を呼ばれた。
昔とは違う、栄治の顔。
手を握られて、また心臓がドキリと鳴った。

「・・・おれ、は・・・」

言いかけて、栄治は口を結んだ。

「栄治?」

「や、いい加減俺もしつこいな」

「え?」

「ちょっと、行って来る」

「え、え!?」


栄治は1人起きあがって
ベッドの周りのカーテンを開けてその場を離れて行った。
1人残されたあたし。


「っはー・・・」


何も答えがでなかったような気がするんだけど
なんかもうあの空気が限界だ。







がらっ

「!!」

ベッドで一息ついていたら
ドアの開ける音がした。
そうだ、よく考えたら今さぼって保健室にいるんだった!

ベッドの中に隠れようともぞもぞと動いていると
覆ってあったカーテンが開いた。

「あーいた!」

「え、なんでここに?」

「沢北くんがここに居るからって」

「何それ!朝喋ってた途中でさらって行ったの栄治なのに!」

「・・ていうか、大丈夫?」

「は?」

「や、沢北くんと職員室で会ってのこと聞いたんだけど」

「・・・うん?」

「なんか・・・泣きそうな顔してたよ?」

「・・・え?」

「別れ話でもしたの?」

「・・・別れ話・・・・・・え!?え?あれ別れ話!?」

「は?」

「あたし、あたしそんなつもりじゃ・・・!」

「落ち着いて、何話したのか教えてよ」


ベッドに2人腰掛けて、先ほどの栄治との出来事を話した。
私が、栄治と離れる覚悟が出来てなかったのだという話と
結婚して、と言われたことも。


「いや、それは別れ話じゃないの?」

「は!?なんでそうなんの?!」

「だって、が離れるのが怖くなったってことは
 アメリカに行く沢北くんと一緒には居れないって事でしょ?」

「・・・・・・」

「で、沢北くんはにプロポーズしたわけでしょ?」

「・・・プロポーズっつーか・・・」

「で、返事何もしなかったんでしょ?」

「・・・しなかったというか・・・できなかったというか・・・」

「で、沢北くんのあの顔」

「・・・・・・」

「少なくとも、沢北くんは終わったと思ってるんじゃない?」

「そんな!!!」

「て、いうかね。自信がないなら止めときなって」

「え・・・?」

「だって、離れてるの怖くなったんでしょ?」

「・・・そう、だけど・・・」

「だったら」

「だけど!あたしは・・・!」










結局は、一体どうしたいのか私たち。

























気付いたら、保健室を飛び出していた。









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