晴れ時々曇りがち 最近の私の心情。 隣 の 彼 女 09 「あ、えーじー!」 きょろきょろしてたら、目に入った。 少し遠くから走ってくる、栄治の姿。 「はやっ」 姿が見えてから、こちらに来るまでの距離は 結構あったように思えたが 栄治はあっという間にこちらまで来た。 「ごめっ・・・寝過ごした・・・」 息を弾ませながら栄治が頭を下げる。 そして、暑かったのか巻いていたマフラーを取った。 「・・・・・・・・・」 「・・・?」 「え、あ、なに?」 「いや・・・怒ってんの?」 「・・・え、いや、なんか新鮮だなって」 栄治を遊びに行くことはあったけれど いつも、栄治が家に迎えに来てくれるか 私が誘いに行くかのどちらかで こんな風に待ち合わせをしたのは初めてだった。 「へ?新鮮?なにが?」 「んーん、ていうか相変わらず早起き苦手だねー」 「や、絶対遅刻しないようにすげー早く寝たんだけど」 「・・・だけど?」 「・・・夜中に目が覚めて、寝付けなくなって朝方寝てて・・・」 「で、寝過ごした。と」 「ごめん」 「あはははは!何それ!赤ちゃんじゃん!!」 「うるせー!」 「あーおかしい。今日のお昼は栄治のおごりねー」 「おう」 「じゃ、行こっか」 「ん、」 ゆっくりと、歩き出す。 そういえば、栄治と街を歩いたことはそんなにない。 今日は栄治のアメリカ行きの買い物をしようと街に出てきた。 「栄治、何買うの?」 「んー・・・CDとか?」 「ああ、英会話の?」 「・・・・・・ちげぇよ」 「買っときなってば」 笑いながら、CDショップに入ろうとしたその時 後ろから、呼ばれる声がした。 「あのっ!山王工業の沢北さんですか!?」 「へ?」 「本物だ!沢北さんだ!!」 「本物って・・・」 騒ぎ立てる2人の女の子が栄治の前でキャーキャーと叫ぶ。 私のことは眼中にないらしい。 「あの、一緒に写真撮ってもらっていいですか!」 「え、写真!?」 「あ、シャッター押してください」 「え、私?」 目の前に携帯を差し出された。 写真って携帯で撮るの? 2人は栄治を挟んでニコニコ顔で私の方を向いている。 栄治はなんかなんとも言えない表情で しょうがなく、私はシャッターを押した。 「ありがとうございましたー!あの、私たちバスケ部でー」 写真撮ったら終わりではなく、そのままトークが始まった。 ぽつん、と取り残された私は 1人でCD屋に入るわけにもいかずにそのまま立ちすくんだ。 「沢北さんよかったらアドレス教えてくださいー」 「今度遊びましょうよ!」 さっきから、彼女たちしか喋ってなくて 栄治は一言も反論出来ずにジタバタしてる。 今は携帯を出して、女の子たちが迫っていた。 「や、ちょ、いいかげんに・・・」 「えー、だめですか?」 「バスケ部同士で遊びましょうよ!」 「ちょ、待って!!!」 やっと栄治の声が出た。 何もしてないのに、息弾んで顔が赤い。 「彼女!待たせてるから!ごめん!」 逃げるように、栄治が女の子の元から少し離れた私の所へ来た。 「おかえりー」 「・・・ごめん」 「なに、栄治謝ってばっかり」 少し笑って、栄治の背中をばしっと叩く。 栄治が小さく唸って背筋をのばした。 「よし、行くよ!」 栄治の手を引いてCDショップへ入る。 新しく出たCDを手にとって見る。 栄治もCDを見ているかと思えば まだもじもじとして何か言いたそうだ。 「・・・どーしたの?」 「・・・・・・」 「うん?」 「怒って、ない?」 「へ?」 「いや、さっき放置、しちゃったし」 「ああ、別に怒ってないよ」 「・・・ほんと?」 「なんか、別世界の出来事だなーって思って見てた」 「何それ?」 「んー、なんか知らない栄治を見たなぁって思った」 「・・・」 「まだ、いっぱいあるんだろうねー見たことない栄治の姿」 一緒にいたけど、まだまだいっぱいあるんだと思う。 まだ、見たことのない君。 「そんなん、俺だって一緒だよ」 「へ?」 「俺の知らなかったが見れたし」 「・・・なんか、見せたっけ?」 「・・・・・・まーな」 「なにそれ。わかんないっつーの」 「うるせー!CD探して!」 CDショップをうろうろして(栄治はCD5枚も買ってた!) お昼ご飯食べて(ランチ奢ってもらっちゃった) ぶらぶら洋服見たり(可愛いブーツがあった!) 気付いたら、もう外はもう暗くなっていた。 「うわー暗い」 「暗くなるの早ぇなー」 「・・・どうする?」 「え、・・・どうするって・・・」 「どーもしない・・・帰ろっか」 の声のトーンが下がったのは気付いた。 そしてなんとなく帰りの電車ではなんとなく、一言も言葉を発することもなく。 駅について、2人で改札を出たところで 足を止めた。 「?」 「・・・えと・・・あの、あたしちょっとコンビニ寄って行くから!」 「? じゃあ俺も一緒に」 「いい!1人でいいから!じゃあね」 それだけ言い残すと、は家とは反対方向に走っていった。 楽しかった、今日一日が 灰色になって終わった。 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |