それでもやっぱり、私の願いは






隣 の 彼 女 08






名前を呼ばれて振り向いたものの
続く言葉が出てこない。
それは栄治も同じのようで、うつむいて言葉を探していた。


「栄治!」

ぱっ、と顔をあげて栄治の名前を呼ぶ。

もう今までで何回呼んだかわからない

一番、呼びなれたこの名前。

「ね、バスケしよ!」

「へ?」

「ほら、ボールもあるしさ!」

栄治の手の中にあるボール。
きっと近くのゴールのある公園で練習していたのだろう。
そこも、思い出の場所だった。

「や、バスケできねーじゃん」

「うるさいな、だからフリースロー対決だよ!」

「・・・フリースローも入んない・・・」

「うーるっさい!行こうってば!」

ぐい、と栄治の手を引いて公園の方へ向かう。

きっと

振り払おうと思えば簡単に振り払えるはずだったのに

栄治はそのまま

手を引かれたまま公園に一緒に来てくれた。



誰もいない公園の小さいバスケットコート。

昔はゴールがあんなに高く見えたのに。

「・・・今でも遠いだろ。は」

「・・・うるさいな。あたしから投げるから!10本勝負!」


もう今うるさいって何回言ったっけ私?

なんて考えながら、ボールを投げた。




































目の前で、がボールを放る。

昨日の今日で、声掛けたけど

走って逃げられるくらいの覚悟をしてたんだけど。


(つうか、バレてない?)


昨日は一応告白のつもりだった。

それでが気付いて、それなりのリアクションを覚悟していたのだが・・・


さっきから一生懸命ボールを投げる。

そのボールはまだ2回しか入っていない。


「・・・はい終了〜」

「・・・・・・・・・」

「えーと、2点?」

「じゃ、栄治2回しか外しちゃダメだからね」

「よゆー」

ぱっ、とからボールを取って

の投げていた場所よりも遠くからボールを放った。









「うわー・・・」

わかっていたけど、栄治のシュートが外れることはなく

すべてのシュートが綺麗に弧を描いてリングに入っていった。

勝てるわけはないと思っていたけれど。

(1回くらい外すとかさ!)

ボールをくるくると回しながら、栄治がこちらへ振り向く。


「・・・俺の勝ち。・・・てか何の勝負?」

「栄治は、やっぱりすごいねー」

「なにが」

「バスケ」

「ん、」


栄治が少しうつむく。

やっぱり、いつもの栄治らしくない。


「だから、楽しんで行っておいでよアメリカ」

「え?」

「栄治らしくないよ?」

「・・・けど、」

「いつも楽しそうに遠征行くじゃん」

「でも、今回は違うんだって!」


栄治の声が少し大きくなった。

表情もさっきボールを持っていた時と全然違う。


「栄治」

「・・・なんだよ」

「あたし、待ってるから」

「え?」

「だから!栄治が帰ってくるのずっと待ってるから!」

「・・・え?」

「・・・あれ・・・、栄治あたしの、こと、好きなんじゃない、の?」

「え!?は!?いやっ・・・」

「は!?違うの!?え、違うの?えー!恥ずかしい!!」

「いや!待て待て待て!違わねぇ!」


がし、と肩を捕まれた。

距離が近くなって少しドキリとする。

栄治の顔が焦ってるのがわかる。

私も似たような顔をしてるのだろうか?


「えっと・・・」

「・・・さっきの話本当?」

「へ?どれ?」

「どれって・・・その・・・待ってるって・・・」

「ああ!うん。ホントホント!」

「・・・軽っ」

「そう?」


軽く返事を返した私に、栄治がため息をつく。

肩を捕まれた手に力が入るのがわかった。

栄治の、顔をじっと見た。


「お前、わかってる?超、遠距離になるの」

「まぁ、遠いよね」

「なかなか、帰って来れねぇし」

「うん」

「帰ってきても、バスケしちゃうだろうし」

「うん。そうだろうねぇ」

「でも、いい、の?」

「んー、しょーがない」

「しょうがないって・・・」

「栄治が笑ってアメリカに行ってくれるなら、頑張るよ」


アメリカに行くって聞いてショックだったけど

栄治が笑って楽しくバスケ出来ないのもなんか嫌で


やっぱり、バスケしてる栄治が見たいと思ってしまったんだ。





































「あー・・・なんか・・・安心して気ぃ抜けた」

公園のベンチに並んで座る。

肩から手を離してもらったけど、代わりに手を握られた。

なんか慣れなくてドキドキする。


「・・・なにが?」

「や、まぁ色々・・・」

「ふうん?」

「あー・・・」

「なに??」

「あのさ」

「うん?」

「だから・・・」

「だから何?」










ぎゅう、握られた手にさらに力がこもる。














「明日!遊びに行かねぇ?」
















ドキドキしてるのは、私だけではないらしい。






(それ言うのにあんなどもってたの?)(うるさいな)
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