あの日の景色が頭から離れないのです。 隣 の 彼 女 07 「・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・」 さっきから手が止まらない。 ぽっきーを開けて ぽてとちっぷ開けて ふらん開けて それを友人2人が呆れた顔で見つめる。 「ストップ。。いい加減にしないと怒るよ?」 「呼び出してといて、ひたすらお菓子食べ続けて30分てどーよ?」 栄治を話をした次の日。 学校が休みで栄治と顔を合わさずにすんだのは助かったけど ぐるぐると回るこの気持ちを1人じゃ対処できなくて わざわざ家に来てもらった友達2人。 でもいざ来てもらったら何からどう話してたらいいのかわからなくて テーブルの上に並べたお菓子をもくもくと食べ続けた。 そしたらもう30分も経ってしまったらしい。 「ごめん・・・」 「・・・テンパってるのはその食いっぷりでわかったからさ どうしたの?」 「・・・どうって・・・」 「あれでしょ?沢北絡みでしょ?」 「!!!! なっ、なんで!」 「あ、あたり?」 手に持っていたぽっきーの袋が 力が入ってばきばきと全部折れた。 友達2人は「やっぱりか」みたいな顔してこっちを見た。 「で、沢北がどうしたの?」 「・・・栄治、が」 ぽつり、上手く言えるかわからないけれど ていうか自分でも、この状況はよくわからないんだけど。 「栄治、アメリカ行くらしくて・・・」 「アメリカ!?」 「あ、バスケで?」 「ん、まぁ今回もバスケで行くんだけど」 「へー・・・やっぱすごいんだねぇ沢北って」 「で?いつ行くの?アメリカ」 「・・・来月」 「は!?はや!!」 「・・・うん・・・」 「それでヘコんでんの?」 「え、それもあるんだけど」 「違うの?」 「ん・・・いつも栄治遠征でアメリカ行くとき楽しそうなんだよね」 「・・・まぁバスケ馬鹿だもんね」 「でも今回は、行きたくないって言ったの」 「へぇ?」 「だから、なんでって聞いたの」 「うん?」 「そしたら・・・」 「・・・そしたら?」 「お、お前って指さされて」 「・・・・・・!」 「そのまま栄治先に帰っちゃって・・・」 「・・・・・・」 「で、なんか・・・わかんなくなっちゃって・・・」 はぁ、と話終えてひとつ息を吐く。 前の2人はこそこそと話を始めていた。 「え、ねぇ、何?」 「や、なんかやっとかぁと思って」 「え?やっと?何が?」 「見ててもどかしかったのよアンタたち」 「は?」 「だから、沢北はあんたが好きってことでしょ?」 「・・・えっ、えーー?!」 「えーじゃないでしょ!ていうかもそうでしょ?」 「あたし!?え?あたしも?」 「何言ってんの?そんな驚かなくても・・・」 「え、ちょっと待って、あたしそうなのかな?」 「自覚ないんだ?」 「えー・・・」 「昔っから沢北がバスケでシュート決めたら自分のことみたいに 大喜びして自慢してたくせに」 「そ、それは単純に栄治がすごいでしょって言いたくて・・・」 「誰に告られても、見向きもしなかったくせに」 「いやそれも・・・別に・・・」 「よく考えてみなって。が沢北が好きってなると 全部のことの辻褄があうんだから」 *** 友達と少し買い物に出て、その帰り道。 買い物に行ったけれど何も買わなかった。 (つうか買い物どころじゃなかったんだけど・・・) 帰りなれた道をてくてくと帰る。 栄治が引っ越してきたばかりの時に 帰り道がわからなくて半泣きだった栄治を よく手を引いて帰っていたことを思い出す。 (あんなに泣き虫だったのに、今じゃ全国区選手だもんなぁ) バスケしてるときは本当にカッコいいし 女の子にはもてるし なんだかんだで優しいし。 あたしなんて、 「!」 近くでボールの弾む音がした。 無意識に音を追ってそちらに歩いて行ってしまう。 気付けば公園に到着していて、そこには 見慣れた、男の子の姿 「栄治・・・」 ボールを追いかけて シュート決めて いつもの、一番かっこいい栄治の姿。 心臓がきゅうって音を立てて なんか、泣き出してしまいそうになった。 あんなに近くにいた栄治が カッコよくなって 女の子にモテていって あたしなんてって思ってた。 好きだなんて、思っちゃいけないと思ってたけれど (あたし、栄治のこと・・・) 「?」 聞き慣れた声で名前を呼ばれた 振り向かなくても誰だかわかる。 「栄、治・・・」 私の好きな人は 隣の家の泣き虫だったあの子です。 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |