どうしたらいいのか、教えてください神様。 隣 の 彼 女 06 「で、いいな?沢北」 「は、え?」 「・・・ちゃんと聞いとけよ」 「すいません監督・・・もう一回言ってもらっていいっスか」 「だから、アメリカ行きは来月だからな」 「あー・・・はい」 昼休み。 朝、先生に言われたとおりに、監督のところに来た。 まぁ、アメリカ行きの確認みたいなもんで 親父もおふくろも来月が出発なのは知ってるし 遠征行ったときにパスポートは作ったから別に焦ることもない。 ただ・・・ がらっ、と戻った来た教室のドアを開ける。 無意識に見てしまう、の席。 友達と3人でわいわいと騒いでいる。 遠征でアメリカには何度か行っていた。 そのときは、ただ遠征が楽しみで仕方がなかった。 だけど 今回は他の、あの子の、のことで頭がいっぱいで (やべぇ・・・) 行きたくない、なんて頭をかすめてしまった。 「じゃあ今日は解散ぴょん」 練習が終わって、帰る者、自主練する者分かれてバラバラになる。 栄治は、いつもは練習が終わっても深津や河田に勝負を挑んでいるのだが・・・ 「深津」 「・・・言いたいことは大体わかるぴょん」 「もうすぐアメリカ行くっつーのになんだアイツ」 体育館の隅で座り込んで、ボールをじっと見つめる沢北。 その沢北に、深津が近づく。 「沢北」 「え、あ、はい?」 「やる気ないなら、帰れぴょん」 「え!や、自主練・・・」 「いいから帰れぴょん。やる気ないヤツがいると邪魔ぴょん」 「・・・・・・すみません」 「明日は、ちゃんとしろぴょん」 「・・・はい」 立ち上がり、沢北は部室へ歩いていった。 ロッカーを開けてTシャツを脱ぐ。 やはり、出るのはため息ばかり ふと、何時か気になり携帯を見る。 するとメールが一件入っていた。 「あ・・・」 からだった。 少し、自己嫌悪。 いきなり元気になって走って家に帰った。 帰ったらまた、部屋の掃除をしなければ。 「栄治!」 「どこ登ってんだお前」 “部活終わったら教えて。聞きたいことがある” と、メールが着ていたのできっとは俺の部屋に来るんだと思っていたが 呼び出されたのは、歩いて5分の近所の公園だった。 がいたのは、その公園のジャングルジム。 そのジャングルジムのてっぺんからは栄治に向かって手を振っていた。 「栄治を見下ろすなんて新鮮!」 クスクスと笑いながらてっぺんから話始める。 栄治も負けじとジャングルジムに登ろうと足をかける。 が、 「あ、登っちゃダメ!」 「は?なんで」 「あたしの、質問が先」 少し、沈黙が流れて栄治はジャングルジムの下に座った。 の顔は全然見えなくなった。 「・・・聞きたいこと・・・あるんだけど」 「・・・おう」 「栄治、アメリカ行く・・・の?」 心臓が大きく跳ねた。 は、まだ知らないはずなのに 「・・・え、バスケ部のやつしか・・・知らないはずなんだけど」 「ん、今日知った。朝職員室行ったら堂本監督と先生の話聞こえちゃって・・・」 「そっか・・・」 もう日が落ちるのが早い。 空はもう青色から赤色に変わっていて少し薄暗い。 俺は、返事をどうするかずっとずっと考えていた。 考えても、仕方がないのはわかっている。 何を どうしたって 考えたって 俺は、来月行ってしまうのだから。 「・・・アメリカ、行くよ」 「・・・!」 「来月に、とりあえず出発・・・」 「え、来月!?」 「あ、や、その日は・・・」 「なんで・・・なんで教えてくれないの・・・」 「へ?」 「・・・そんな・・・来月って・・・早すぎる」 最後の方はもう声が小さくてほとんど聞こえなかった。 は今、どんな顔してるのか 何を思っているのか 全然わからなかったけれど でも いてもたっても居られなくなって 「!」 「!!」 昔はてっぺんに登るのにあんなに苦労したのに 一歩二歩三歩で、もうてっぺん。 「・・・何、登って来てんの・・・」 「ごめん・・・」 「だめって言ったのに・・・」 「・・・、泣いてる?」 「・・・うぅ、ん」 「・・・・・・ごめん」 「なんで・・・謝るの」 「や、・・・泣いてるから」 「・・・泣いてない・・・よ」 「いや、泣いてるじゃん」 「泣いてない・・・っ」 どうしていいかわからなくて でもは泣いてて 泣かせてるのは自分で 思わず 抱きしめてしまった。 「っ!?え、えーじ!?」 「な、泣くな!」 「や、だから!泣いてないってば!」 「泣いてた!見た!」 「見たって・・・」 「お前が、が泣くと、どーしていいかわかんねぇんだよ!」 何を言っているのか、自分でも途中からわからなくなって テンパってる俺を見て 涙目のが笑った。 少し落ち着いて、向かい合って座った。 赤かった空はもう暗くて、街灯の光があちこちで光る。 「アメリカ・・・ってもう何回か行った?」 「ん、3回くらい」 「へーいいなぁ」 「も、来ればいいじゃん」 「アメリカに?」 「俺もっと英語喋れるようにしとくから」 「え、まだ喋れないの?」 「や、全然喋れるけど!」 「うそでしょ」 いつもの空気に戻る。 心地よくて このままでいいと思ってしまう。 つい、本音もぽろり。 「あー・・・行きたくねぇなー・・・」 「は!!?」 「え?あ、口に出てた!?」 「バスケのことしか考えてない栄治が何の冗談!?どうしたの?!」 「・・・俺だってなぁ、考え事のひとつやふたつ・・・」 「へぇ、アメリカ行きを拒否るくらいの考え事って何ー?」 「・・・・・・・・・・・・」 ちらっ、と顔をのぞき込んでくるの顔が目に焼き付く。 最近はずっとそうだ。 目を閉じても出てくるのはの顔。 「・・・・・・お前」 精一杯だった。 俺に、指を指されたは時間が止まったかのように固まってしまった。 いなくなる俺は、好きだなんて言えないから。 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |