幸せとは、案外側にあるモノです。





隣 の 彼 女 05





気づいてしまったその事実に頭の回線がパンクしそうだった。

部屋のベッドでゴロゴロと転がる。
のことが好きだと、今になって気付いてしまった。
出会ったのが小学生の時だったから、かれこれ10年の付き合いなのに


ちらり、と頭をかすめた昔の話。

昔からにちょっかいを出して泣かせていた。
泣かせても、なんとなく仲直りをしてそれの繰り返し。
一回だけ、クラスの奴がにちょっかいを出して泣かせたことがあった。
そのとき、そんなにケンカなんて強くもないのに、そいつをぼこぼこにした。


(・・・今考えたら好きな子いじめってヤツだよなぁ・・・)


枕に顔を埋めて考える。
バスケ以外のことをこんなに頭をいっぱいにしたのは初めてだった。


ぼーっとしている所に耳元に置いていた携帯がなった。
びっくりして栄治は飛び起きて、携帯を開く。
そして届いたからのメールを読んで目を丸くした。



“超おいしいチーズタルト買った!おすそ分けに今から栄治んち行くから!”


「まじで・・・っ」

携帯をベッドに放り投げて、クローゼットを開ける。
適当に洋服を選んで、部屋を片づける。
今まではが来ると言っても少しだけ片づけるだけだったけれど


無理無理無理!つうか部屋に入れなきゃいいんじゃん!

いやでも絶対部屋に入ってくるし!

できる限りの事をするしかない!
















「・・・栄治なにそんな息切らしてんの?」

「や、ちょっと・・・うん」

「ふーん?じゃ、栄治の部屋行っとくからお茶よろしくねー」

「・・・やっぱりそーなんのか」


は迷うことなく脱いだ靴を揃えて階段を登っていった。


















「、開けて」

「はーい」

かちゃ、ドアを開ける。両手でお盆を抱える栄治が立っていた。
お盆をテーブルに置いて紅茶の入ったティーカップをの前に置く。
ふわり、湯気がたって紅茶の香りが部屋に広がる。

「あーいい匂い。栄治紅茶いれるの上手くなったね」

「が厳しく指導してくれたおかげだよ」

「指導した甲斐があったわー」

紅茶を一口飲んで、は小さく微笑む。
そんな笑顔も可愛いと思ってしまう自分は重症だと思う。


「そーいえば、今日部屋どうしたの?」

「は?何が?」

「部屋、超キレイになってる」

「や・・・まぁ、たまには」

「ふぅん?あ、栄治タルト切ってー」

「お、おう」


の持ってきたタルトをなるべく均等に切り分ける。
それをがお皿に乗せて栄治の前に置いた。

「これね、期間限定でね、すっごいおいしいの!絶対栄治も好きだから!」

「うまっ!超美味いじゃんこれ!」

「うわ早っ!ちょっと味わって食べてよ」

「いや味わったって!超美味い!」

「じゃ、もう一個あげるよ」

「マジ!?いいの?」

「いいよー」




隣にがいて

ケーキ食えて


結構これはこれで幸せなんじゃね?



「・・・は、彼氏いないっつってたよ、な?」

「へ?うん・・・」

「好きなヤツとか・・・いねぇの?」

「は!?何いきなり!」

「や、深い意味は別にないけど!」

「・・・なにそれ・・・」

「いや、なんもない!別いいや!ちょまだ食っていい!?」

「!! まだ食べれるの!?」



そのままチーズタルトをワンホール食べ終わって
少し話して、いつものように過ごした。



本当に、幸せでこのままずっと続けばいいと思った。


























「・・・あ、」

次の日、朝練を終わらせて教室に入ったところでに会った。

「おはよ、何今来たの?」

「いやちょっと・・・職員室行ってた」

「ふぅん?」

「・・・ね、栄治」



「おーい、席つけよ」



が何が言いかけたところで
間の悪い担任が入ってきた。
は、ぱっと合わせていた目を反らして自分の席に行った。



何か、違う。

昨日はあんなに目を合わせて楽しそうにしていたのに
わかりやすいぐらいに、態度が違う。


(なんか、あったのか?)


こーいうときに距離を感じる。
なんでも話せる存在になるのは難しいことなのはわかっているけど



「あー沢北!」

「え、は・はい?」

「・・・お前ぼーっとしてんなよ」

「あ、すいません」

「昼休み、堂本監督が部室に来いって行ってたぞ」

「へ?あーわかりました」


俺の話で朝のHRが終わった。

監督の呼び出しに頭をかかえる。なんかしたかな?















「あ!!!」











忘れていたわけじゃないけど


いや、忘れていたのかもしれないけれど






楽しみにしていたその出来事が今どすん、と背中にのしかかる。












俺、アメリカに行くんだった。

























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