思わぬわがままに気が付いてしまいました。






隣 の 彼 女 04






「なぁなぁ、沢北」


朝、部活が終わって教室に行くなりそんなこと言わなくてもよくねぇ?


「あ、何?」


後ろの席の男。西田くん。
なにやら、キリッと決意をしたような表情でがっしりと肩を捕まれる。


「俺、今日の昼休みさんに告るから」




・・・





「は・・・?」

「だから、告白するって」

「なんで」

「なんでって・・・そりゃつき合いたいから?」

「でも、え!?」

「何テンパってんだよ沢北。つき合ってないんだろ?お前ら」

「つき合ってねーけど・・・」



(なんでよりによって今!?)



ここ最近ずっと頭にあるもやもや。
とりあえず出てくるのはの顔。

コンビニから一緒に帰ったあの日から、
のことが気になって仕方がない。





(なんでなのか、ずっと考えてんのに・・・)

(なのになんでこいつは今動き出すんだよ!?)





そわそわして、落ち着かない。
授業が始まりもう後ろが向けなくなった。
ホントはもっと西田に色々と聞きたいことがあるのに。

ちら、と目がいくその先は。
ここ最近、授業中に眺める先はいつもそこだった。



(あれ)



心なしかも少し落ち着きがなく見える。
ペンをくるくると回したかと思えば
ため息をついてうつむいたり。

(!!)

ぐるり、後ろを向いた。
そして西田に詰め寄る。もしかして、もしかして・・・


「お前、まさかもうになんか言ったのか?」

「は?なんかって何だよ」

「だから・・・その、告白・・・」

「あぁ、まだ言ってねぇよ。昼休みに屋上に来てくれっつったけど」



間違いない。の落ち着かない理由はそれだ
昔から、何かあるとそわそわと落ち着かなくなるのは
沢北もも一緒だった。

気持ちばかり焦って、ただ何もできなくて

沢北は自分の机にうずくまって、じっと時間が経つのを待った。









昼休み。
もくもくとお弁当を食べながら、沢北はの方ばかり気にしていた。
気づけば西田はもういなくなっていて
はいつも通り友達と3人で喋りつつもお昼を食べて
その後1人、席を立った。


「えーと、じゃあ行って来る」

「いってらっしゃーい!がんばれよー」

「そんなおっきな声で言わないでよ!」

「あはは。ごめんってば!」

「じゃあ行って来るね」

「はいはい」


友達に手を振っては教室を出ていった。
沢北はいよいよ落ち着かなくて
屋上まで見に行こうかと思ったけどそうもいかない。
色々と考えていると、といた友達たちの会話が聞こえてきた。


「を呼び出した相手って西田なんでしょ?」

「そうそう。西田もモテるよね」

「サッカー部のレギュラーだしね」

「ただは目が肥えてるからねぇ」

「普通なら西田に告られたら喜ぶんだろうけど」

「ねぇ」

2人は目を合わせて、小さく笑った。
見ていた沢北は2人の会話の意味がさっぱりわからなくて
もやもやはひとつもなくならなかった。

























昼休みの終わりぎりぎりには教室に入ってきた。
ばたばたと自分の席に座り、ふう、と一息ついた。
どうなったのか聞こうと思っていたのに西田は帰ってこなかった。


授業はおじいちゃん先生の歴史。
ポイポイと手紙を友達と交換していた。
俺はというと、その手紙の中身が知りたくて知りたくて。
もうそろそろ限界だった。




「!」

授業が終わり、沢北はが友達の所に行ってしまう前にを呼んだ。

「え、なに?」

「ちょ、来て!」

「は!?ちょっと?」

ぐい、と手を取ってずるずるとを引っ張って教室を出た。

とりあえずどこに行けばいいのか迷ったけれど

屋上まで登った。



「さむっ」

「・・・ごめん」

「何、謝って」

「や、なんか無理矢理・・・」


屋上に出て冷たい風に吹かれて我に戻る。
ほんと、何いきなりひっぱってきてんだ俺。
文句言われても仕方がない。

けど、は笑ってた。


「いいよ。なんか話?」


寒そうに腕を組みながら、は沢北の前に立つ。
沢北はというと、いきなり心臓が高鳴って何も言えないでいた。


「栄治?」

「や、あ・・・あ!寒いよな?ごめん!!」


沢北は着ていた学ランを脱いで、に掛ける。
は目を丸くして沢北を見た。


「・・・ていうか栄治寒くない?」

「おれ?俺はいいんだよ!」

「・・・ありがと」


かわいい。
やばい。


ずっと、隣に置いておきたい。



のことを。









そーいうのって・・・


























(そっか、おれ)




























(が、好き、なんだ)





















「栄治?顔が・・・」

「は・・・は?!」



「すっごい赤い」



大丈夫?とが心配そうにのぞき込む。
心臓が痛いくらいに鳴ってる。


やばい。


好きだ。







誰にも渡したくない。















ぎゅ、と手を握られた。
びくっと身体が反応する。

「栄治、風邪引くから中入ろう?」

「あ、おう」

「っとに、世話が焼けるなぁ栄治は」


くすくすとが俺の手を引いて笑う。
何となく、懐かしい感じがする。


「栄治がしっかりしないから、彼氏も作れやしない」
「なんちゃって」


「・・・あ、お前!西田は!?」

「え、やだなんで知ってるの?」

「付き合わねぇの?」

「付き合わないよーちゃんと断った」


「あ・・・」

「ん?」

「あああああああ」


力が抜けて、の手を握ったまま
その場にへたれ込んでしまった。


「栄治!!何座りこんでんの!?」

「なんか・・・一気に力抜けた」

「はぁ?」

「も、教室戻らなくてよくねぇ?」

「サボるの?」

「が一緒にサボってくれるなら」

「・・・仕方がないなぁ」


目の前で、座って笑っている彼女。

相変わらず心臓は鳴りまくってるけど

もやもやは晴れた。





俺は隣の家のこの彼女のことが好きです。


















(栄治の学ランでかーい)(やべぇ俺その格好超好きかも)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

→