うっかり、目もはなせない。 隣の彼女 03 いつも通りに練習を終えて、家に帰る途中。 お腹が空いて足が止まる。 暗くなった夜道に明るい光を放つコンビニ。 ついつい足が向いてしまった。 「いらっしゃいませー」 自動ドアが開いて、足を進める。 軽く店を一周して飲み物を手に取る。 そしてパンを真剣に選ぶ。 (あれ、そーいや今日・・・) ごそごそとズボンのポケットを探り財布を開ける。 中にはお札はなく、じゃらじゃらと小銭のみが入っていた。 (ジュースじゃんけんで負けたんだった・・・!) 五人でじゃんけんをして負けたらみんなのジュースをおごるというゲーム。 すっかり忘れていたが、栄治はそれに今日負けて 五人分のジュースを奢ったのだった。 本当はパンを二つ買うつもりだったが予算オーバー。 栄治はジュースとパンを一つ持ってレジに向かった。 「・・・あ」 レジでお金を払い、品物を受け取ると 隣から、声がした。 「あ、」 栄治もそちらを向くと、そこにはがいた。 もちょうど会計を済ませて、店を出るところだった。 家の方向が同じ二人は自然と歩幅を合わせて、並んで歩いた。 「お前、こんな時間に一人で出歩くなよ」 「こんな時間ってまだ8時だよ?」 「じゅーぶん遅ぇつーの」 がさがさと音を立てて、栄治は今買ったパンをほおばる。 と、思った瞬間に食べ終わってしまった。 「はや!」 「あー足りねぇ」 「あ、栄治ご飯まだなんだっけ」 「全然足りねーよ。家まで保たない・・・」 「家にご飯あるんでしょ?今食べたら、ご飯食べれなくなっちゃうよ?」 「いや全然食えるけど」 「あっそう・・・あ、じゃあ」 ごそごそと、も袋を漁って何かを取り出した。 「これ、あげるよ」 「なんだこれ」 「肉まん。なんか珍しく食べたくなって買っちゃった」 「は!?食っていいの?」 「いいよ。あたし夜ご飯食べたし」 はい、とまだ温かい肉まんを差し出された。 栄治は意気揚々とそれを受け取った。 口を開けてほうばろうとして・・・とまった。 「・・・?栄治?食べないの?」 「いや・・・」 持っていた肉まんをぱかっと二つに割った。 その一つをに差し出す。 「ん、」 「え、全部食べていいんだよ?」 「昔、よく半分こして食ったじゃん」 「あ・・・そうだったね」 「だから、やる」 「・・・なにそれ、・・・ありがと」 ぱく、とほぼ同時くらいに肉まんをほうばる。 ゆっくりと食べるを横目に栄治はまたしても 早々と食べ終わってしまった。 「だから、早いってば」 「しょーがねーだろ腹へってんだから」 「ほんと、なんでそんなに食べて太らないの?不思議」 口をもごもごさせながら、がじろじろと栄治を見る。 つられて、栄治もをじっ、と見た。 大きめのパーカーに短めのスカートからすらりと伸びた足。 ひらひらと動くスカートに若干ハラハラする。 「・・・ちょ、お前スカート短けぇよ」 「え?そう?」 「短い」 「誰も見てないって!」 「馬鹿お前!夜にそんな短いスカートで一人歩いてたら」 「・・・もーお父さんみたいな事言わないの」 ぺちん、と腕をたたかれて盛大に笑われた。 このやろ。人がせっかく・・・ 「でも、栄治心配してくれたんだよね」 にこーって笑ってこちらを見上げる。 あ、まただ。 また、が可愛く見える。 「ありがと、栄治」 今日は栄治がいるから平気だねーとか言いながら は買った物の袋からカフェオレを取り出して飲み出す。 そして俺の洋服の袖を掴んでいた。 心臓が、どんどん速度を増していく。 「栄治?」 「顔、赤いよ」 あれ、これなんだ。 「あ、栄治。今、肉まんあげたから、明日はーげんだっつ買ってー ガトーショコラ新発売なの!」 「・・・・・・・・・・・・ぉぅ」 もやもやとした気持ちも 早鐘みたいに鳴ってる心臓も 今日はどちらもなくならない。 もしかして、もしかする? いやいや、まさか。 まだ蓋をして、気づかない振り。 (栄治、ご飯は?)(なんか今日胸が苦しくて食えない) 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |