近くにいたのは、いつもいつでも君でした。






隣 の 彼 女






「っあーつっかれた!」


バスケ部の練習を終えて、家にやっと帰りつく。
今日はお金持ってなくて帰りに飲み物も食べ物も買えなかった。

栄治は玄関に着くなり大きな鞄をその場に置いて座り込んだ。


「栄治?帰ったの?」

「かーちゃん飯ー」

「わかったから、鞄部屋に置いて着替えてきなさい!」

「へいへい」

のろのろと立ち上がって、階段を上がる。
部屋のドアノブに手を開けて開けた瞬間と同時に母ちゃんの声がした。


「あ、栄治!ちゃん来てるからね!」

「うぅわ!!?」


そして母ちゃんの声と俺の声がかぶった。


「あーごめん間に合わなかったみたいね」


そんな母ちゃんの声は右から左へ。
今は自分のベッドでぐーぐー寝てるこいつしか見えない。

「おい!!!」

「・・ん、あ、栄治おかえりー」

「おかえりーじゃねぇよ!なに人のベッドで寝てんだお前!?」

「栄治に貸してたノートを返してもらいに来たの」

「俺が夜になんないと帰ってこないの知ってんだろ!」

「だからー、待ってたんじゃん」


ベッドの上でごろごろしながら、あははーと笑う彼女。
栄治は何の反論もせず、小さくため息をつく。

と、いうか、彼女のこんな態度も慣れたもので。

隣の家の彼女は、出会ったその日からこんな感じだった。






「で?ノートどこ?」

「あ、ああ」


ベッドの反対側にある出窓の上に、そのノートは置いてあった。
そこにあるから、勝手に取れと言ってもよかったのだが
はきっと
「借りたのは自分なんだからちゃんと返せ」
って言うに決まってるから


「ここに、」

ベッドに手をついてノートを取ろうとした

が、

手を付いたその場所は



むにっ



ちょうど、の胸の上だった。





「!!!!!!!!」

「!!!!!!!!!?!!」




栄治は何もかもに驚いてベッドから落っこちた。
は飛び起きて、目を丸くしながら栄治を見る。


「いいいいい今っ今!今!むむむむむ胸ー!」

「わっわざとじゃ・・・わざとじゃねぇって!!」

「エロ!ばか!!信じられない!!」

「だからわざとじゃねぇって!!」

「わざとだったら絞め殺す!!」

「そ、それにそんなにわかんなかった・・・し」

「はぁあぁぁ!?」






ばき!

鉄拳が顔に飛んできた。

そしてそのままノートを握りしめて(結局ノートは自分で取って行った)
は帰っていった。




絶対にこいつ女じゃねぇ!!



出会った時から彼女はこんな感じ。



俺の周りで一番「女の子」を感じさせない奴。



それが俺の家の隣の彼女。









(・・・意外とあった・・・)(はっ、本当に変態じゃん!!)


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