それでも誰よりも一番最初に!






一番最初の君の言葉






コタツに入ってミカンを食べながらテレビを見る。
これが毎年の大みそかの過ごし方。
ちなみに、楓の部屋で。

が、

今年はちょっと違う。



「・・・」

「・・・何」

「・・・・・・うっとーしー」

「だって・・・だって・・・!」



こたつの真ん中に置かれた全壊のホールケーキ。
そう、楓のバースデーケーキ

に、なるはずだったケーキ。

あたしのお気に入りのお店で予約して
今日楓の家来る前にウキウキで受け取りに行ったのに
まさか、まさか・・・


「だってケーキ持ったまま階段でこけるとか思わないじゃんかー!」


あああああああ
もうやだー最悪!!!
せっかくのせっかくのケーキ!!
ケーキにも楓にも何もかもに申し訳ない・・・


「別に俺はケーキとかいらねぇし」

「何言ってんの!?誕生日つったらケーキじゃん!」

「別にケーキなくたって誕生日はくんだろーが」

「そう!ケーキがないと誕生日らしいことできないじゃん!?」

「・・・自分が食いてぇだけだろ」

「違います。あーあ、元旦に楓の誕生日するの恒例だったのになぁ」

「・・・あぁ、そーいや毎年やってたな」

「あ、じゃあさ」

「・・・何」

「初詣行こう!」

「1人で行け」

「ケチ!」

「別にいー」

「いいじゃん!行ったことないでしょ?」

「どーでもいー」

「・・・このやろ・・・」


悪態をついてるあたしのことを無視して
楓はテレビのリモコンを手にして番組を次々と変えていく。
あたしは紅白見てたのに何勝手に変えてんの!!!
チャンネルが変わらなくなったと思ったら
楓は机に肘をついてだらっとしていて
もう気を抜けばすぐにでも眠りに落ちてしまいそうだった。


(ほんと、毎年楓を12時まで起こしておくの大変なんだよね・・)



「ねぇ・・・楓、初詣・・・」

「行かねぇ」

「・・・わかった。じゃあ他の人と行こ!」

「おー」


おー、だと?
誕生日なのに放置かよ!とか言わないわけ!?
まぁ、楓は言わないだろうけど・・・

携帯を取り出して、ある人に電話。
コール音が途切れて電話の相手の声がした。


「あ、三井先輩?」

「・・・!」

楓が少し反応して、テレビの方を見てた楓がこちらを向いた。
お前誰に電話してんだ。っていう顔してる。


「そうです、初詣!行きませんか?」

「おい」

「あーそうなんですね!わかりました!」

「」

「11時45分?細かっ!あはは。はーい!わかりました!ではー」

「コラ」

「もう、電話してる時に何ー」

「なんで三井先輩なんだよ」

「え、一番ヒマそうかなって」

「行くのか」

「え?初詣?今約束したけど」

「・・・俺も行く」














































「おー!」

「あ、三井先輩!小暮先輩!こんばんわー」

「・・・・・・・・・」


11時45分。
当たり前のように寒い。
ものすごい厚着をしてても寒い。
息も白いし、手もピリピリする。

それでも

この人の多い神社は何かわくわくした。
そんなテンションの高いあたしとは真逆の男が後ろに。

「・・・」

「んー?何?」

ひそひそ声で楓が顔を寄せて話しかけてきた。
それに少し驚きながらも、そちらへ耳を傾けた。

「2人じゃねーのか」

「は?なんの話?」

「・・・初詣、三井先輩と」

「あぁ、違うよ!みんなで行くから交ざるかって言われて」

「・・・みんな・・・?」

「うん、あと桜木君たちとリョータ先輩と彩子さんも来るって」

「・・・ンだそれ・・・」

「三井先輩と2人だと思ったの?」


それヤキモチだよねーと小さく笑うと、楓がムッとしたのがわかって
さらに笑ったらデコを叩かれた。ちょっと痛い。

なんてしてるうちに、周りはいつの間にか大人数。
いくぞーって三井先輩が声を上げる。
そんな遠足じゃないんだから・・・

神社の中に進む途中、代わる代わる色んな人とお喋り。
まぁ基本的には彩子さんと一緒にいたけど。
楓もずっと後ろを歩いてたけど、不機嫌だったからずっと無口。
・・・・・・や、まぁいつも無口だけど。

賽銭箱の前にみんなで並んでお金を投げた。
手を合わせて、来年の運勢を祈願。
それぞれがお祈りを終えて来た道を戻っていく。
お守りを買いに行くモノも居れば、屋台に心奪われたり。

「ていうか、もーすぐ12時じゃない?」

彩子さんが携帯で時間を確認する。
そー言われて、あたしも腕時計で時間を見ると
ほんと、12時2分前くらいで慌てる。

「わぁ、楓!楓!!」

振り向くと、楓はちょっと遠くで
小腹が減ったのか、遠くから屋台を見ていた。

「楓!」

楓の元に駆け寄ろうと走り出すが
人ごみを掻き分けらけず、思わずよろける。

(うわ、人多すぎ・・・!)

よろけて、さらにそのよろけた方向の人にぶつかって
上手く歩けない。そんでもって後ろの人がいきなりぶつかって来て

「うわ!!」

こんな人ゴミでこけたら、
絶対踏まれる!!と覚悟を決めていると

「ぶっ・・・!」

顔面が誰かにぶつかった。
ほんと、申し訳ない。

「おい」

「あ・・・楓・・・」

「何してんだ」

「ごめ・・・ていうか何時!?」

「は?」

勢いよく腕を巻くって時計を見る。
すると12時1分過ぎていた。

「過ぎた!!」

「何が」

「楓!!」

「・・・どーした」

「楓、耳貸して!」

「耳?」

楓が少しかがんでくれたから、
耳元に手を添えてこそっと呟く。




「楓」


「お誕生日、おめでと」




言い終わって、楓と目が合う。
楓がちょっとびっくりしてた。


「いつも、言ってるでしょ」

「あたしが一番最初におめでとうって言うんだって」
















Happy Happy Happy Birthday!!