ちょっと、特別な日。






雨 と 恋 の し ず く






いつもの時間に携帯のアラームが鳴って目を覚ました。
軽く身体を伸ばすと、窓の外から小さく音が聞こえてくるのに気づいて
少しだけカーテンを開けた。


「あ・・・」


その天気を見て、携帯を手にして電話をかける。
いつもの隣の彼へモーニングコールも兼ねて。


何度かコールした後、ぷちっと切れた。


(このやろう・・・切りやがった)


負けじと、プルルとコールをする。
いつもは窓を開けて、部屋まで直接起こしに行くのだけれど


『・・・誰だ』

何度目かのコールで出た返事がこれ。
ほんと、失礼。

「あたし」

『・・・?』

「うん。てかあのね、楓。外見て」


受話器からごそごそという音がする。
きっと布団から出て、窓の外を見に行ったのだと思う。


『雨・・・』

「そーなの。雨なの」

『・・・・・・』

「朝練、どうする?」

『・・・体育館でする』

「そう?」

『付き合え』

「じゃあ行く時アイスね」

『おー』


電話を切って、制服に着替える。

そして、楓の家に向かう。

そこからそこの距離なので傘をささずに小走りで。

雨の日は濡れるから嫌いだけど、ちょっと特別。


「おはよ」

「おー」

「ちゃんと顔洗った?」

「洗った」

「(ホントかなー・・・)じゃ、行こっか」


楓の家を出て、ここまではいつも通り。

いつもと違うのは


「ふふ」

「・・・何笑ってんだ」

「あたし、雨の日実は好きなんだよね」

「は?」

「だってさ、雨の日くらいなんだもん」

「なにが」

「楓と並んで歩くのが」


めんどくさいから傘は一つ。

背は楓の方が高いから、傘は楓が持って

そして近い距離。


「いつも並んで歩くの嫌がるじゃねーか」

「だって楓と歩くと見られるんだもん」

「・・・今日はいーんか」

「雨の日は別に・・・いいかなーって」

「・・・ふぅん」


いつもの自転車に乗って、
2人で公園に朝練に行くのも楽しいんだけど
本当はこうやって、ひっついて2人で歩くのも
大好きだったりする。


「あ、楓アイス!」

「あ?」

「朝買ってくれるって言ったじゃん」

「知らねぇ」

「はぁ?!」


学校に行く途中の唯一のコンビニの前に差し掛かって
アイスを催促するけれど
楓は一向に止まる気配がない。


「ちょ、アイス!」

「早く行かねーと練習する時間なくなる」

「えーっ!うそつき!」


ホントは引きずってでもコンビニに行きたかったけど

傘は楓が持ってるし、傘から出ると濡れるし・・・。



「・・・・・・」

「・・・・・・」


さっきのご機嫌なテンションはどこへやら。


「・・・」

「なに」

「・・・キレんな」

「キレてない」


さっきはぴったり寄り添っていたが

心なしか、少し離れてしまった気がする。

と、いうか

よく見たらの反対側の肩が少しだけ濡れていた。


「おい、離れると濡れんぞ」

ぐい、との腕を掴んでひっぱる。
軽く自分の腕との腕が当たった。


「・・・別に、肩くらい濡れてもいい」

「・・・まだ拗ねてンのか」

「別に」


は流川から顔をそむける。
流川はそれに少しムッ、として立ち止まる。

「・・・楓、なに・・・?」

立ち止まって、自分より背の低いの顔の近くまで屈む。
もう本当にすぐそこに流川の顔があって、流川の髪の毛が自分の額に当たる。
そして、持っていた傘を少しだけ前に倒した。

「ちょ、楓近い!てか傘倒したら濡れる・・・」

「早く機嫌直せ。どあほう」


言ったかと思ったら、そのまま口をふさがれた。

そしてぼんやりと思ったことは



(傘、前に倒したのって)

(キスするとこ、隠した・・・つもり?)



冷静な自分と、パニックな自分。

感情がぐるぐると頭の中を駆け巡った。


唇が離れた時に、そっと目を開けるとばっちり流川と目があった。

本当はがっつり怒鳴ってやろうと思ったけど、声が出ない。


「な、にすんの」

「おめーが拗ねるから」

「だ、からって!なんで道端でキス!?」

「サプライズ」

「はぁ!!?」


徐々に上がっていく声。

流川は飄々とそのまま歩きだす。

は相変わらず挙動不審のままで

はっ、と気づいたようにきょろきょろと周りを見渡す。


「何してんだ」

「だっ、誰かに見られてたらどーすんのっ」

「こんな時間、誰もいねー」

「・・・だ、といいんだけど・・・」

「と、言うことでもう1回」

「あほか!!」




パシャパシャと雨音を立ちながら、

そのまま学校まで

ぴったり寄り添って歩いた。





雨の日だけに起こる

こんな出来事。














































(お、、お前今日道端でちゅーしてたんだって?)(マジでかさん!!)
(ちょ、え、み、三井先輩どこで見て!?)(いや、噂になってんぞ)(最悪!!)

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