※事後話。注意!

























ドキドキしているのは、私だけなのだろうか?






天然乙女心キラー






頭の上で音がする。
うるさい。
今日は土曜日のはずなのに

携帯のアラームがなんでなってるの?


「ん・・・・・・うるさ・・・」

手だけもぞもぞと出して
いつもの場所にあるはずの携帯を探す。

が

携帯は見つからないし、音は鳴り止まないし
腹が立って目を開けた。


「!!!?」

何もかもがいつもと違った。
目を開けて見たものは、楓の顔のドアップ。

(え、え!?あれ!?楓の部屋?!)

身体を起こして窓の外を見るとまだ真っ暗で
携帯のアラームはもう止まってしまっていた。
さらに自分が薄着な事に気が付くと、もう何もかも把握した。


(・・・あー・・・そうでした)


隣で寝ている楓は薄着というか、何も着ていなくて
先ほどの自分たちの行為を少し思い出して顔を隠す。

「つうか何時!?」

携帯を探し当てて時間を見る。
デジタル時計は10時と表示していた。
いつも楓の部屋に遊びに来ても11時には家には帰っているので
慌てて楓をたたき起こす。


「楓!楓!!起きて!」

「ん・・・」

「早く服着ないと!」

「・・・んー」

「楓!!」

「うるせー」

がし、と腕を捕まれて布団の中に引きずり込まれた。
あたしの事を抱き枕か何かと勘違いをしてるんじゃないか
ぎゅう、と力一杯抱きしめられて身動きがとれなくなった。

「かっ・・・!もう!」

「・・・」

耳元でささやかれた。
こんなことされたら、もう太刀打ちが出来ないことを
この男は知っているのだろうか。




































「・・・なんか、頭がいてぇ」

「気のせいじゃない?」


腕の中にずっといたい気持ちもあったけれど
そうもいかないので悪いと思いつつ楓をぐーで殴った。

(だってそうしないと起きないんだもん)

楓は起きたけど、頭が痛いと繰り返す。
力の加減を間違えたみたい。


「ほら、楓、髪の毛ぼさぼさだよ。いつもだけど」

ベッドに座って欠伸をしている、楓の髪を手櫛でなでる。

「おめーもぼさぼさじゃねーか」

後ろを向いて楓があたしの顔を見る。
そして同じようにあたしの髪を楓が手でなでた。

もう何度も楓に触れられてるのに
心臓がいつもまでたっても慣れてくれなくて鼓動が早くなる。
今も髪を撫でられただけなのに、少し心臓の動きが早まった。


「・・・楓って何げに乙女心のツボを心得てるよね」

「は?」

「んーんー、他の子にはやんないでね」

「何を」

「今の」

「意味わかんねぇ、てか早く服着ろ」

「へ?あ、理性飛びそう?」

「・・・ホントに襲うぞ」


あれだけキャーキャー言われている楓が
あたしごときに欲情って、それなんて謎?


「ほんと、不思議」

「あ?」

「何も。さーて帰るかぁ」

「・・・おー」


ハーパンに、Tシャツ姿の楓が相づちを打ったにも関わらず
私の手を離さない。


「また、明日来るから」

「ん、」


名残惜しそうに楓があたしの手を離す。
そんなにじっと見ないでよ。


「じゃあね」


そう言って、楓の部屋の窓から自分の部屋へ渡った。
自分の部屋に足をついて、伸びをする。
きっと、自分は今この家では浮いているはず。


(だってなんか、楓の部屋の匂いがする・・・)


お母さんにバレないようにどうやってお風呂場に行こうかと
考えていると、後ろでがらっと窓が開いた。


「かえで?何してんの?」

そこには、下手したら泥棒だと通報されかねないのに
楓が窓枠に足をかけて部屋に入ってきた。
楓が窓から私の部屋へ来ることはほとんどない。
なんたって楓はでかいから目立つし。

「忘れモン」

「え?何?」

ぐい、抱き寄せられる。
そして文句を言う前に口を塞がれた。
待て待て、と制止する意味を込めて楓を叩く。
ゆっくりと楓が離れていって
今度こそ何か言ってやろうと思ったら

「じゃーな」

と言って楓はまた帰っていった。

ぽかん、と口元を押さえたまま私は楓が帰っていくのを眺めていた。
なんとも自己中心的というか、意味不明というか

「ていうか忘れ物って今の?」

恥ずかしいやら何やらで何も言えなくて
近くにあったクッションを窓に投げつける。

それでも、嬉しいと思ってしまうのは

乙女心を弄ぶ、あの男のせいだと思う。







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たまには甘いだけ。