正直死ぬほど驚いた。 これは、一生の宝物。 恋色マカロン いつもは必要最低限なコトしか喋らない楓が意外なことを聞いてきた。 「…今なんつった?」 なもんで、思わず聞き返してしまった。 すると楓はなんか少し顔ゆがめてもう一度言った。 「誕生日、何欲しいっつった」 ずっとずっと一緒にいるけど、何が欲しいなんて聞かれたの初めてだし 何か特別にもらった覚えもなかった。 (ケーキ一緒に食べたりとかパーティしたとか… 幼稚園のときにお花もらったりしたけど、それはまた別でしょう。) 「楓あたしの誕生日覚えてたんだね…」 そう。私の誕生日は明日。 先週くらいからチラチラアピールしてたけど バスケ忙しいし絶対忘れてると思った… 「いるのか、いらねーのか」 「いる!いります!!」 はいはい、と座っていたソファーから身を乗り出して手をあげた。 …しかし。 何をねだればいいものか… 幼馴染だからといって高いものねだるのもアレだし こ・恋人でもないし? 「あ…」 「…なに」 ぱっ、と思いついて出た声に楓が相槌を返す。 ものすごい欲しいもの思いついた! 「マカロン!!!」 「…は?」 今ちょうどハマってるのがマカロン。 イチゴとかバニラとかチョコとかもう超おいしい! どうせだから、デパ地下とかに売ってる高めのを買ってもらおうv 「マカロンってお菓子なのね。デパートの地下とかに売ってるの! 楓にもあげるから。それ食べたい!!見た目も超かわいいんだよv」 お菓子なら、楓にもあげれるしそんなに高いものでもないし。 どうかな…。 チラ、っと手を合わせては流川のほうを見た。 楓は少し考えてから、「わかった」と言って出て行った。 「…わざわざそれ聞くために家まで来たのかな…」 勘違いだったとしても嬉しくって、つい口元がにやけてしまう。 早く明日にならないかな。 *** 次の日。 朝から両親にプレゼントをもらい。 楓の両親からももらい。 学校に行けば友達からもプレゼントをもらい。 さすが誕生日。 いいコト尽くめ!!! と、は一日ご機嫌で。 しいていうなら、流川がいまだに現れないのが不満だった。 「…楽しみにしてたんだけどな。家でくれるのかなぁ」 少し暗くなった放課後。 教室で友達とケーキを食べてて遅くなってしまった。 プレゼントの入った紙袋がずっしりと重い。 「おい」 後ろから呼ばれて振り返ると、そこには自転車に乗った流川がいた。 「楓?今帰り?」 「何ちんたら歩いてやがる」 「だって重たいの。や、嬉しいんだけどね」 と、大きな紙袋を見せる。 「貸せ」 ひょい、とその紙袋をの手から取り自転車のかごに入れた。 「…乗せてってくれるの?」 「どーせ家、隣だろ」 「やった!」 は流川の肩につかまり、自転車の後ろに乗った。 それを確認して流川はゆっくりとペダルを踏んだ。 「ねぇ楓。プレゼント買ってくれた?」 「…こんだけ貰ってまだ足りねーか」 「だって楓のプレゼント楽しみにしてたんだもん」 「…家にある」 「ほんと?じゃあ荷物置いたら楓の部屋行くね」 「おう」 「よーしもっと早くこいでー」 「おめーが重てぇから無理」 「!!!」 ぎゃあぎゃあと一方的に口げんかをしながら帰り道を走り 家の前では下ろされ、5分で行くから!と言って家に入った。 バタバタと部屋に入り、 貰ったプレゼントを片っ端から開けたい衝動を抑え 制服を脱ぎ捨てて、がらっと窓を開ける。 窓を開ければ、流川の部屋はすぐそこなのだ。 「楓ー!来たよ!!」 ひょい、と椿は流川の部屋へ入った。 流川は普段着に着替え、ベッドに横になっていた。 テンション高く部屋へ入ったのに反応がない。 「ちょっと。楓?いきなり寝ちゃったの?」 「起きてる」 「プレゼント貰いに来たよ!」 はニコニコ顔で、両手を流川に差し出した。 流川は無表情で立ち上がり 机の引き出しを開けてそこからのプレゼントであろう ラッピングされた箱を取り出した。 「ん、」 その差し出された手に、ぽん、とプレゼントをおいた。 「ありがとう!あけてもいい?」 「おう」 シュルシュルとリボンを解き、カサカサと包みを開けていく。 ひとつずつ丁寧に包装されたピンクや黄色、茶色に緑。 カラフルなお菓子とは思えないほど鮮やかなマカロンが箱に詰まっていた。 「わぁ…かわいい。おいしそう」 箱を開けたまま手が見とれて手が止まる。 ふたを床に置き、マカロンをひとつ手に取った。 「…食べるのもったいないなぁ」 ピンク色のマカロンを手にしてがボソリ呟いた。 「おい」 「え?あ、ちゃんと食べるよ?」 「ちげぇ、これ」 すると、小さな紙袋を差し出された。 きょとんとした顔でそれを見つめたが 流川は無言でそれを差し出し続ける。 は恐る恐るそれを受け取った 「…なに?これ」 「やる」 「え、だってプレゼントはもらったし…」 「…やるっつったらやる」 そう言い、流川は立ち上がり部屋を出ようとした。 は慌てて振り返り流川に声をかける。 「え、楓どこ行くの?」 「…コーヒー」 を、取りに行ったのだろう。 相変わらず主語も述語も使わないやつだ。 そんなコトを思いつつ、向き直り貰った袋の中身を取り出した。 かわいくラッピングされた、金色のふちの透明の袋。 その中にあったのは 「おんなじだ…」 今、食べるのがもったいないと手に取った 大好きなお菓子と同じ形をしたストラップだった。 カラフルなピンク色。 マカロンの間に真っ白のクリームとキラキラした石がついていた。 「かわいい…」 そのストラップもかわいかったのだが 何よりも驚いたのは 「…これ…楓が…?」 想像すると、なんか信じられないような ふつふつと笑いもこみ上げてきたり… 「何笑ってやがる」 「わぁっ、あ、楓!」 後ろから声がして、背中を丸めて声を殺して笑っていたら 背中をげし、と蹴られた。 「これこれ!すっごいかわいい!!!」 「かわいいって言ってただろーが」 「え?」 「見た目も」 「…あ、昨日」 「だから、買った」 「…そんなの、覚えててくれたの?いつも肝心なことは忘れるのに」 「うるせー」 ふふ、と笑って手にしていたストラップを握り締めた。 「ありがとう。楓一生大事にするね」 「…おお」 ほんとにすっごい意外だったけど 楓は昔から、ここぞというときに私の心をくすぐってくる みんなに明日自慢しよう。 そう思いながら携帯につけたをマカロン人差し指で揺らした。 end 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 ただ単に自分が欲しかったものを書いてみました。すみません。 なんか無駄に長いなぁ。 |