魔法の言葉。



言われただけでこんなに世界の色が変わる。






ありきたりロマンス






そっ、と体育館を覗く。
頭の痛みもひいてきたし、何よりずっと寝てるなんてヒマ過ぎる。
楓が部活に戻った入れ替わりに来てくれた友達と一緒に体育館に来てみた。


「うーわ、女ばっか!すごいね」


バスケ部を見に来たのは初めてだった友達は
ギャラリーの多さに驚いてた。
くるり見渡せば、何人かあたしに気づいてコソコソと話する人もいた。


(言いたいことあるなら、直接言えばいいのに)


なんて余裕かましてたら


「さん」
「こんなトコで何してるの?」
「流川くんとは付き合ってないんでしょう?他に彼氏もいるそうじゃない?」


直接攻撃を食らってしまった。
3人が順番に一言づつ喋る。練習でもしてきたのか…
隣にいた友達が今にも怒鳴りそうなカンジだったので
とりあえずなだめる。

参ったな、こんなトコロで言い合いなんかしたくないのに。


「ちょっと黙ってないでなんとか言いなさいよ」
「ていうか、体育館に来ないでよ」


「あの、ちょっとココではなんですので向こうの方に…」

事を荒立てたくないのでとりあえず下手に。
って思ってるのに彼女たちは引くことをしない。

「何?流川くんに聞かれちゃまずいって?」
「ほんと、調子いいわね」


…ちょっとずつイライラしてきた。
けれども。
ここで反論したらもっと火がついて大変なことになる。


と、


一生懸命耐えていたのに




「何してんだ」




後ろから声がした。

楓だった。


「いや、なんでもない!なんでもないから戻って!」

「てゆーか寝てなくていーんか」

「え!?あたし?あたしはもう大丈夫」

「ふーん…」


チラ、と先ほどまであたしに絡んでいた上級生を見る。
彼女たちはお互い目配せをしつつ口を開いた。


「る、るかわくんて、さんと付き合ってないんでしょう?」
「なんか色々噂聞いて流川くん大丈夫かなって心配してて…」


「付き合ってる」


あと、もう1人が喋ろうとしたのを遮って楓が喋る。
その楓の一言に3人の顔が固まったのがわかった。


「か、楓…」

「コイツはオレと付き合ってる」


トドメの一言に3人は動揺を隠せずに
顔を見合わせてオロオロしているのがわかる。

「う…うそ…!」
「ま・間違いでしょ?」
「そうだよ間違い…」


「、練習終わったから帰る」

「え?あ、練習終わったんだ」

もう絡んでた3人のコトは眼中にないようで
楓は「着替えてくる」と言い残してロッカーへ言った。
友達はあたしと3人組をキョロキョロと見て

「…大丈夫そうだし、お邪魔だから先帰るね」

と、笑って帰っていった。
それに手を振って、この場は居ずらいと思い3人組に頭を下げて
体育館の中に入った。




「あ、ちゃん!大丈夫!?」

「あー彩子先輩!頭コブ作っちゃったんですけどねーもう平気ですよ」

「あなたが階段から落ちたって言ったらもう流川すっごい速さで
 体育館飛び出してみんなビックリしてたのよ」

「あーははは。そうですか」

「で、付き合うことになったの?」

「え、え…まぁ」

「ふーん…ふふふ」

「なんですがその笑顔」

「だって流川保健室から帰ってきたらものすごいご機嫌なのよ。
 わっかりやすいわよねー」

と、彩子さんがケラケラと笑う。
あたしはなんか恥ずかしくって思わずうつむいてしまう。

「ま、流川にはちゃんしかいないと思ってたし。よかったわね」

「はい」


とりあえず、一呼吸。
明日になったきっとまた、こないだのように質問攻めに合うのだろう。


「、終わった」

「あ、うん。帰る!彩子先輩さよーならー!」






だけど。







「…自転車やだ」

「…は?」

「手、繋いで帰りたい!!自転車じゃ無理じゃん!!」

「どあほう。なんでもいいから乗れ」

「付き合ったらとりあえず手を繋いで登下校でしょ!?」

「…今度な」

「ホントに!?楓優しい!!」


走り出した自転車の後ろに乗る。
ギュウ、と楓を抱きしめる。


「楓、今日あたしが居るから放課後の自主練できなかったね?」

「明日やる」

「…明日朝あたしも付き合うよ!」




とりあえず幸せなので。



「明日4時に起こすよ!」

「…絶対だな」



なんにでも耐えてみせましょう。






(はっ、あたし昨日寝てないんだった…!!)
(…4時だぞ、4時。オメーが言ったんだからな)
(はっきり言って自信なし!)






end
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これはまぁオマケみたいなもんだと思ってください。
読んでくださってありがとうございましたー!