近くに居過ぎて気持ちが麻痺してた。



近くにいてくれるのが当たり前だと勘違いしてた。






ありきたりロマンス






大泣きした迷惑極まりない私を
落ち着くまでずっと洋平くんが傍にいてくれた。

申し訳なくて、さらになんか泣けてきたけど
息を吸って、自分を落ち着かせる努力をした。

ちらっと見上げたら、洋平くんは笑ってた。



「…ご、ごめん」

「あ?いいよ。すっきりした?」

「うん、かなり…いやホントごめん」

「いーって、嫌なことがあったんだろ?」

「んー…やなことっていうか……楓が…」


ぽそりぽそり、出てくる私のつたない話を
洋平くんはいちいち頷いて聞いてくれた。

それだけで、イライラが少しずつなくなっていった気がした。


「…楓に、あんなこと言われるなんて思ってなくて
 悲しいやら、腹立つわで…」

「で、ポカリ投げつけたわけか」

「…う、…ん」


さすがにアレは危険だったよなぁ…
まぁ楓が取りそこなったりするわけないもんね。


「…ちゃんさぁ」

「…なに?」

「……流川のこと大事なんだよね?」

「え、まぁ…」

「それってさ」




























「…………へ?」







































少し日が落ちたころ、洋平くんはバイトへ行くと言うのでバイバイした。
送ってあげれなくてゴメン、と言われた。


ますます男前だなと心底関心した。


が、私の心はここにあらず。
洋平くんに言われた一言がぐるぐるぐるぐると頭を巡る。

そのまま夕食を少しだけ食べて(お母さんが心配してたけど)
ぼーっとリビングのソファに座ってやっぱり頭の中は
洋平くんの一言を考えてばかり。



「、今日は流川さんトコ行かないの?」

「…行かないよ。そんな毎日行くわけないじゃん」

「何言ってんの。1週間に5日行けば毎日みたいなもんでしょ」

「…そんなに行ってたかな」

「残りの2日は楓君が来てたでしょ家に」

「……そうですね」


…たしかに彼女でもないのによく会ってたと思う。
でも幼馴染だから、普通なんじゃないのかなとも思う。

ずっと前からこんなカンジで
気持ちが入り混じってわかんなくなってたのかな…?



「で、これ。流川さんのトコに持って行ってくれない?」

「ええー今日行かないって言ってるじゃん」

「とりあえず、持って行ってくれればいいから」

「…わかった」


(まだ、楓帰ってきてない時間だし、いいかな)


持たされたお菓子を持ってお隣へ行く。
楓のお母さんがとても喜んでくれた。
他愛のない世間話をして、さらにお返しに紙袋を渡された。
ここのお菓子、大好きです。ニヤリ口元が緩んだ。



「じゃあお邪魔しましたー」

そう言って楓の家の玄関のドアを閉めた。
そして門を出たところで


「何してる」

「…あ」


ばったり、楓に出くわしてしまった。


心臓が少しずつ速さを増していく。



「…あ、お菓子、届けに来ただけ…だか、ら」

目をあわすことができない。
下を向いて、小さく手が震える。


「まだ、怒ってんのか」


「え、いや…お、怒ってない…」


別に怒ってるとかじゃない。
怒りはもう全部解けてしまった。

そう、全部は洋平くんのあの一言のせい。


「楓…私…」




























「それってさ、ちゃん流川のこと好きなんじゃないの?」










































好き?




















小さい時に言っていた、あの好きとはまた別物。





















…本当に別物?




























「…なんだ」


言いかけて、長い沈黙。
しびれを切らして、楓が聞き返してきた。

楓のそんな声よりも
自分の心臓の音が一番大きな音がする。
顔が熱い。きっと真っ赤なんだろう。


今さら言えない








好きだなんて。












「な…っなんでもない…!!!」



貰った大好きなお菓子の紙袋もガンガンと壁にぶつけて
走って自分の家に帰った。












このままずっと隣に居て欲しいなら
いつかは言わなきゃいけない一言。









いくら今までずっと一緒にいたからって
この先も一緒にいてなんてお願いしたら









あなたはどんな顔をするのかしら?


















考えたらきりがない。

だから、言えない。




















好きだなんて、怖くて言えない。



















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