ダメだ。好きすぎる。






かわいい人






「おはよー三井!」


朝、学校へ行った。

隣の席には。これはいつものことだ。

ただ、コイツが着てるのが制服ではなくジャージで

そのジャージにはオレの名前が。


「ちょっと待て。お前何着てんだ?」

「えー?へへ。三井のジャージv」

ぺちっ、とは自分の頭を小突いて笑って見せた。
なぎさにオレのジャージは大きいようで(当たり前だけど)
裾は太ももまであり、スカートのプリーツが少しだけ見えていて
袖も大分長くて手の半分くらいまで隠れていた。


(ぶっちゃけカワイイ)


そんな下心丸出しで、三井は固まったままを見つめる。
は動かない三井を少し心配そうに見つめ
立ち上がり、三井の顔を覗き込む。


「おーい?三井ー?」

「はっ!?な、なんだよ!!?」


いきなりの顔のアップに驚き、三井は後ろに下がる。
それを見たは、少しむっとした顔で三井を見た。

「…何。三井怒ってるの?」

「な、別に…てかお前こそ何キレてんだよ」

「だって三井が…なんか…怒ってるから」

「や、オレは別に…」



2人でぼそぼそ言い合ってると後ろから声が聞こえた。


『ちょ、あの格好ヤバくねぇ?』

『アレいいよな』

『すげぇ好みだけど!!!』

ぎゃははははは!!!


男なら気持ちはわかるが、
自分の好きな女を別の男に見られんのも、ネタにされんのも
正直面白くないし、今すぐにそこらへんの机を蹴飛ばしたい。
くらい腹が立ったが、気がついたらの手をとって教室を飛び足した。





無言のまま三井はの手を引いて屋上まで来た。
予鈴が聞こえたけれど、2人とも何も言わずその場に立ちつくした。

「…みつい…?」

最初に口を開いたのはだった。
朝とは打って変わり、弱々しい口調だった。

「やっぱり怒ってんの…?」

「ちげぇ」

「…怒ってるじゃん!!」

「怒ってねぇ!」


怒ってるけど、に怒ってるわけじゃねぇし
それなのにはうつむいたままで
なぜかそれにも腹が立った。

「…そんなにあたしがジャージ着たのいやだった?」

「は?なんでそーなる…」

「だって他に思い当たらないんだもん!今すぐ脱ぐから!!」


がばっ!!
言い放って、はジャージをまくり
下に着ていた白いTシャツが丸見えになった。

「ちょ!!!待て待て!脱ぐな!」

「だって!!あたしが勝手に三井のジャージ着たから怒ってるんでしょ!?
 三井が怒るのもケンカするのもいやだ!!!」

「……?」

「そんなに…そんなに怒るなんて思ってなかったんだもん…」

「待て待て、オレの話聞けって」

「三井に嫌われるのもいやだあぁぁー」


勝手に勘違いをして不安になってきっと緊張の糸が切れたのだろう。
へたり、座り込んではワンワン泣き出した。


「ちょ、おい!?」


いきなり泣き出したもんだから、三井も慌てて近くに座り込んで
をなだめる。が、三井の声は一向になぎさには届かない。
三井はダメ元で、というか勢いで

右手をひっぱり自分のほうへ引き寄せて
ぎゅう、と抱きしめた。
瞬間、はピタリと泣き止んだ。


「…やっと泣き止んだ…」

「…あ…ぅ…ぇぇ…??」

どうなってるんだ、と言わんばかりのの声。
うまく喋れずに言葉になっていないけど、なんとなくわかる。

「ちょっと、オレが喋るから聞いとけ」

三井がいうと、ちょうど肩辺りにいるがコクコクとうなずいた。

「まず、オレはお前に怒ってねぇ」

少し間があって、がうなずく。
間があったっつーことは、あんまり納得してねぇなコイツ…


「で、がジャージ着てんのも別いいし」

「…ほんと…?」

「おお」

小さく咳き込んでから、ぼそりと呟く。
ずずっ、と鼻水を吸い込む音も聞こえた。

「…あ、鼻水ついた」

「…気にすんな」

「三井やさしい…」

「おー惚れんなよ」

「…無理」


声がかすれて、がまた咳をした。
聞き捨てならんことが聞こえた。

そういえば、肝心なことをまだ聞いていなかった。


「なぁ」

「なに?」

「なんでオレに嫌われんのいやなんだ?」

「…え」


なんていうか、ほぼ確定といっても過言ではない。
きっとは


「つうか、お前オレのこと好きだよな?」

「…えー………と…」

きっと今は、さっきまで泣き喚きながら言ったことが
ぐるぐると頭の中を駆け巡っているのだろう。
うつむいていたの耳までもが真っ赤になっているのがわかった。

「?」

耳元で、ささやいてみる。
びくっとの身体が跳ねる。

そして

「…すき」


腕の中で小さく告白。

やばい。


色々ツボすぎてもうやばい。




「そのカッコでそんなコト言われたらもう無理」



「無理って何が…っ…!?」



くいっ、と下向いてた顔を上げて
間髪いれずにそのまま唇と落とす。

「ぅ…ん…っ…!」

小さく声が漏れてそれもまたツボ。
ぎゅうと袖を掴まれているのがわかる。
その小さなの手を握り返す。

そして反対の手は…。


「み…つい…」

ゆっくり、から唇を離す。
同時に目を開けた。


「何、どした?」

「…胸に手がある」


じっ、とがこちらを見る。
なんでそんなことするの?と純粋に聞かれているようで
そのまま手を動かすことも引くことも出来なくなった。

「三井…?」

「お…おめーがそんなカッコしてっからだろ」

「やっぱりジャージがダメなの!?」

「かわいーんだよお前が!!!」


また顔が真っ赤になった。
…たぶん。オレも。


そのまま押し倒してやったケド

ガツンとパンチを食らってしまった。






「おい。もう学校でそのカッコすんなよ」

「しないよー三井に襲われるもん」

「……だな」

なんか納得いかねぇけどそれでいい。

他の奴らなんかに見せてたまるか。



かわいい彼女は僕だけのもの。










end
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なんか長い…無駄に…
天然なおっとりとしたヒロインにしたかったんですが…
きっと失敗。