君にサヨナラを言ったのはいつだったかな?




思い出せないのは、ずっと奥のほうに隠していたから。






ひと恋めぐり






開いたメールは心臓にトドメの一撃。

練習試合のお知らせだった。




「なんで練習試合のお知らせメールがトドメの一撃なのよ?」

コトの経緯を大体知っている(と、いうか喋らされたんだけどさ)
ミカちゃんがビミョウな顔をして机につっぷしている私の方を見た。

「だって!これ会いに来いってコトでしょ!?恥ずかしい!!」

「恥ずかしいって何。行けばいいじゃん」

「えええーーー!?行ったほうがいいのかな!?ミカちゃん!!」

「はいはい一緒に行きゃーいんでしょ」

「…友ちゃんは?」

「アイツは彼氏出来たからたぶん来ないよ」

「ええ!?いつ!?てか誰!?」

「こないだの合コンの男と」

「へぇー知らなかったよ」

「チッ、あたしも狙ってたのに!」

「…ミカちゃん…」



チャイムがなって、授業が始まる。
が、先生の話は右耳から左耳へ抜けていくばかり。

寿の高校…ってコトは…湘北かぁ…
練習試合ってコトは…


また、バスケやってるんだ。



























寿と別れたのは、高校一年の時の六月。

学校が離れても全然問題ないと思ってたのは大間違いで。
毎日楽しそうに学校の話とか部活の話とか安西先生の話とかしてたのに
ケガをして、それでも頑張ってたのに
少しずつ、いつもの寿じゃなくなって何を聞いても答えてくれなくて
そんな寿をわかってあげられなくて、私が別れたいって言った。

その後、中学の友達から寿がバスケ辞めたって聞いて
それからはもう、なんか気になるけど聞きたくなくて

それからの寿のコトは全然知らなくて


(まさか合コンで会うなんてなぁ…)


なんか顔に傷が増えてたり髪型変わったりしてたけど
笑ったらカッコいいし、面白いし、


キライになって別れたワケではなくて

好きなのに、寿が何も言ってくれなくてわからなくなって
それが嫌で別れた。



(…よく考えたらあたしかなり勝手だよなー…)



いいのかな?また会いに行っても。

あたしが会いたいなんて、思ってもいいのかな。






ぼーっとしていると気づいたら昼休みになっていて
ミカちゃんと友ちゃんがお弁当もってやってきた。

「さ、作戦会議するよー」

「…なんの」

「が元彼をよりを戻す作戦」

「はぁ!?別にあたしはより戻そうなんて思ってないし!」

「ええー?そうなの?」

「そ、…そうだよ!」

「だってキライで別れたワケじゃないんでしょ?」

「そうだけど!…寿はどうかわかんないし」

「…でも…普通練習見に来いとか言うかな?」

「……と、とにかく!今度の日曜は純粋にバスケの応援!!」

「ま、いいけどね」



お母さんの作ってくれたお弁当を広げてガツガツと口へ運ぶ。

そうだよ!別により戻そうとか思ってないし!

メールだってそれしかしてないし!

もしかしたら…



もしかしたら、湘北に彼女とかいるかもしれないし…



はっとして手を止める。

そうだ。

もう彼女とかいるかもしんないんだ。

合コンも人数合わせで来たって言ってたし…!



「…ちょっと。大丈夫?早食いしたかと思ったらいきなり手止めたり…」

「…え、うん。平気」



期待なんかしてない。

ただ、寿を見に行くだけだもん。





























「うあー結構人多いね?」

ミカちゃんと2人でやってきた湘北高校。
人の流れにそって体育館までスムーズに来れた。
ちら、と体育館の中を覗くとバスケットボールの弾む音と
たくさんの人が練習をしてる光景があった。

「…中々イケメンぞろいだね。だからこんなに人多いのかな」

ミカちゃんがそんなコトを呟くが
あたしはひたすら寿の姿を探す。


あ、いた!


ひざにサポーターをつけて、女の人と何かを話してる。
話して笑って…
やばい。
寿と喋ってる人みんな彼女に見えてきた…!

すると、ばっちり目が合って寿がこっちに寄ってきた。


「!」

「…あ…」


恥ずかしくてミカちゃんの後ろに隠れる。
そんなあたしをミカちゃんは無情にも前にグイグイと押した。
そして

「あたし、2階で場所取っとくから。ごゆっくり」

と、1人残して行ってしまった。


「あー…せっかくの休日にわりぃな」

「え!いや全然!寿バスケまた始めたんだね」

「まぁ…色々あったんだけどな」

「ふぅん?ま、よかったじゃん!寿スタメン?」

「当たり前だろーが」

「あ…膝は?」

「大丈夫。治ってっから」

「そう」



「ミッチー!!もうすぐ集合だぞー」

「おーすぐ行く」



「ぶっ!」

「ああ?」

「あはははははははは!!え!?ミッチー!?寿ミッチーなの!?あははははは」

「うっせ!こら!笑いすぎなんだよ!」

「やははははは!ダメ!ツボ入った!」

「マジでウケすぎだろお前 っと、いかねぇと。」

「…っはー久しぶりにツボ入った。じゃ2階から見とくから」

「おー」

「3Pシュート!決めてね!」


寿は背中を向けてヒラヒラと手を振って返事をした。


姿を見て、話せて、一緒に笑えることがこんなに嬉しい。




あたしやっぱり…


























「おーおかえりー」

「ミカちゃん」

「ん?どした?」

「あたしやっぱり寿のコト好きかもしれない」

「ようやく自覚したの?」

「え!?知ってたの!?」

「三井君の話するときのあんたの顔みりゃわかるわよ」

「…寿は…どうかなぁ…」

「…どうかねぇ」


(案外、脈アリだと思うんだけど)



ピーーー

笛の音がして試合が始まる。

目でひたすら追っていたのは寿の姿。

中学のころに戻ったような気がした。







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