君を思い出したことはなかった。 でも、忘れたこともなかったよ。 ひと恋めぐり 高一の時に彼氏と別れてから浮いた話が一切ないあたしに 友達のミカちゃんが合コンの話を持ってきた。 「ね?行こうよ!」 「嫌だよ。何すんの合コンて」 「えー?普通に楽しく飲み会だよ」 「飲み会とか学校で普通に言わないの。てか飲み会ならミカちゃんたちとの方が…」 「何言ってんの!?女子力下がるよ!?干物になるよ!?」 「ちょっとミカちゃん何をOLみたいなコトを…」 「いいから!えーと、今週土曜の6時ね。場所はまたメールするから!」 「だから嫌だって!!」 「ダメダメ。もうメンバーに入ってるから」 「はぁ!?行くなんて一言も!!」 「ドタキャンしたら、どうなるかわかんないよー?」 今日洋服買いに行こうね。 と、付け足してミカちゃんは自分の席へ戻っていった。 合コンて…そんなの別に… 別にっていうか行きたくない…!! *** 自分でも信じられない格好をしてると思う。 スカートは持ってるけど自己ベスト更新の短さに アホみたいにグロス塗られたし(でもコレ色はすごい気にいってる) マスカラは三本使い(…落ちるの?コレ) こんな無理した格好の時に出会っても恋も愛もないと思うんだけど… グダグダ言うあたしをミカちゃんともう1人の友達の友ちゃんが引っ張る。 待ち合わせ場所だというカラオケ屋に辿りつき部屋の前まで来た。 「いい?行くよ?」 「よし!がんばるよ!!」 「…ガンバレ」 「…やる気あんの!?」 「……ない」 ないっつったのに、ミカちゃんがテンション高くドアを開けた。 すると男が3人歓迎してくれた。 もー完全に乗り気ではないのであたしは一番端に座った。 チラっとミカちゃんと友ちゃんを見ると隣の男の子と自己紹介し合ってた。 …あんたたちすげぇーよ!! そーいえば、アタシの隣のやつはどんなヤツなんだろう? 興味本位。ミカちゃんたちと喋ってる男の子たちも普通だし 残りのこいつはいったいどんな… そーっと、隣を向いた。 すると、向こうも私が気になってたのだろうかバッチリ目が合った。 合った瞬間0.2秒。 身体が固まった。 「…ひ…さし…?」 「………?」 髪型が違う。 なんか雰囲気も変わってる。 だけど間違うはずかない。 「…え、ホントに…みついひさしさんですか…」 「おお…、なんで敬語だよお前」 あ、笑った。 笑った顔は変わんない。普通にカッコいい。 「…ていうか何してんの?」 「いやお前こそ」 「あたしは…ただの数合わせだもん」 「オレだってそーだよ」 「うそだぁ、どうせ出会い求めて来たんでしょ?」 「ちげーよ」 「ていうか、寿モテるんだからこんなとこ来なくて…いたっ」 鼻を摘まれた。 寿は口で適わなくなるといつも手を出す。 「余計なお世話だよ。おめーこそこんな化粧して何人男落とすつもりなんだよ」 「友達にやられたの!あ、でもコレかわいいでしょ?」 と、さっきアホみたいに塗ったグロスを見せた。 「…かわんねぇな。オレに見せてもわかんねーっつってんのに やれリップが。とかチークが。とか見せてきやがって」 「寿だってバスケ雑誌指差して、こっちとこっちのバッシュどっちが かっこいい?とか聞いてきたじゃない。私わかんないのに」 なんでわかんねーんだよ! と、あのころと同じ突っ込みを返してきたから面白くて笑ってしまった。 気づいたら、寿としか喋ってなくて時間はあっという間に過ぎてた。 帰り際。ミカちゃんと友ちゃんは男の子たちとメルアド交換してた。 あたしは別に喋ってないしそれを遠くから見てたら寿が後ろにいた。 「…寿はいいの?」 「お前としか喋ってねぇし別いいよ」 「あはは。ごめんね出会いの邪魔して」 「…、メルアド前のまんまか?」 「え、あ、うん」 「メール、してもいいか?」 「…うん」 どんな顔していいのかわからなくて、俯いてしまった。 向こうのほうから呼ぶ声がして振り向いたらミカちゃんが手招きしてた。 「じゃあな」 寿がそれだけ言うと、男の子たちの中へ入っていった。 その後ろ姿を見つめて心臓のドクドクいう音が聞こえた。 その夜 受信メールボックスに『三井 寿』の名前が入った。 あの時保護メールも全部消してしまったから この名前がメールボックスに表示されたのは3年ぶりだった。 寿からのメールを開くのに30分かかったのはなんでなんだろう。 ドクドク鳴る心臓。 原因はまだ知らないフリで。 → 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 続きマス。 |