何で言えないんだ そんなの好きだからに決まってる この男、最低につき。 「なんや、お前もここか」 面倒くさいとみんなで話していた委員会。 一番やることなさそうで楽そうな美化委員をジャンケンで勝ち取った。 それなのに 決められたその席の前にはこの1週間徹底的に避けまくっていたヤツが。 「…最悪や、なんで南がおんの」 「失礼なヤツやな」 言い返してやろうと思ったときに、席に座ってくださいと促された。 仕方がないので黙って席に座った。 南は後ろの私の机の上に肘をついて前の方を眺めていた。 (なんで誰も注意せんのやろ…) 美化委員の委員長さんとやらがなにやら喋ってるけど この手が気になって仕方がない。 無駄な肉のついてない硬い腕。筋張っててゴツゴツしてる手。 (あたし、この手に触られてたんや) *** 「…南、顔が赤いよ?」 「……さっき殴られてん」 「え?誰に?」 「名前なんやったかな…ミヨちゃん?」 「…ちょ、何。名前知らん子に殴られたん?」 「大人の事情や」 「…アンタが女の子喰いまくってるコトくらい知ってるわアホ」 「人聞き悪いな、向こうが寄ってくんのや」 「ふーん、モテられるんですね。南さんは」 時々思う。 なんでこんなだらしない最低のヤツを好きなのか こんな平然と話しているけど 家に帰ったらきっとヤキモチと怒りで枕を壁に投げつけていることだろう。 「でも一番お願いしたいんはやけどな」 「…はぁ?」 何を言い出すんやこの男は。 あたしの気持ち知ってて言ってるのか? 「なぁ、お願いしたらやらせてくれるん?」 じっ、南の視線につかまる。 大きな音で心臓が鳴った。 あほか!って頭叩いて逃げたい。 でも身体が動かない。どうしよう。 でも、遊びでも 南の相手をしてもらっている子のコトを 不覚にも羨ましいと思ったこともあった。 南の手が私の手に触れる。 電流が走ったみたいに身体が反応してしまう。 熱い。 嫌なのに。 だけど 「ええよ」 ずるい男。 卑怯な男。 だけど、一番バカなのはアタシ。 と、これが1週間前。 まんまと喰われてしまった。 最低だと思ったし、このままやったらキライになれると思った。 元々南はメールせん人やったからメールこないし 電話は2回来たけどシカトして 教室は隣同士だったけど徹底的に会わないようにしてた。 それなのに たかだか委員会ごときで私の気を張ってた1週間がパァ。 どこでも掃除するから早く終われ! 「」 「えっ、あ、なに?」 あ、しまった普通に返事しちゃった あの日から、もし会ってしまって喋らないって決めてたのに 「今日、これ終わったらどっか行かへん?」 「あんた部活やろ」 「今日休みやねん」 「ほんなら他の子誘えばええやん」 「前も言うたけど、お願いしたいんはだけなんやって」 またあの目。ズルイ。 なんでコイツはこんなに卑怯なん? もうほんまどうしよう やられてポイされて泣くのは自分なのに 何度も何度も、思ったけど それでもやっぱりキライになれなかったのは ものすごく優しく、触るから。 錯覚に陥るくらい。 キライにならせてくれへん。 せやからずるいねんコイツ。 遊んだだけなら、そんな優しさ安売りすんな 「なぁ、南」 「なんや」 「…なんで私なん」 「あ?」 「あんたに振り回されるのはもう嫌やねん」 「ちょ…っ」 「それでは、今日はこれで終わります」 (あ、委員会終わった) (これ以上変なこと口走る前に帰らな) ガタガタとみんなのイスを引く音で騒がしくなる。 あたしも一緒に立ち上がろうとすると 手を掴まれた。 「…!?、やっ、離して」 「嫌や」 「もう…っ、やだ!」 「絶対離さん」 「…なんで!!」 「好きやから」 時間が止まった気がした。 デジャブ? じゃない。 たしか先週もこんなことを思った。 なにを言い出すんやこの男は。 「…何、言うてんの?」 「好きや、言うてんねん」 「誰を」 「お前や」 「ンなワケないやん」 「なんでやねん」 「だって…先週…」 「先週のは…オレが悪い。すまんかった」 「………」 「でも嬉かってん」 「…私のこと、遊びちゃうの?」 「ちゃうわ。つっても信じられんかもしらんけど」 「…………」 「とりあえず、携帯のメモリの女全部消したから、ちょっと信じて」 気づけば誰もいなくなった教室。 渡された南の携帯を受け取って カチカチと携帯のボタンを押してメモリーを見た。 「…ホンマや」 「女はお前のしかない」 「じゃあ、…ちょっとだけ信じるわ」 「おおきに」 そう言った南の方を見て笑ってしまった。 泣きそうな笑顔だったかもしれない。 悔しいけど、嬉しかったのはきっと隠しきれてなかった。 だって、好きなんだもん 手を繋いで、校門を出た。 南が手を繋ぐのをものすごい嫌がってたけど ごり押しで(今はあたしの方が有利やからな)繋いでもろた。 「つうか、普通誘う前に告白とかせぇへん?」 「告白とか恥ずかしくてよーできんわ」 「はぁ?!何それ」 「シャイボーイやねん」 「だっれがシャイボーイ」 「で?ちゃんは今日オレの相手してくれんねんな?」 「んーお茶やったらええよ?」 「…茶ぁ?その後は?」 「ん、買い物とか?映画見るとか?」 「もっと大人なことしようや」 「まだ(仮)お付き合いやからダメ」 「なんやそれ」 「言うたやろ?ちょっとだけ、信じるって」 「………しゃあないな」 ちぇーと口を尖らす南が最高にウケた。 順序が逆で節操のない男だけど 何とかやっていけそうな気がした放課後。 (とりあえず、浮気したらコロスから!) (…マジで) end 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 こんな南。 …ナシですか。ですよね。 なんかすみません。 |