わたしに拒否権なんてありません。 恋する7days 06 「んー…っ」 身体を起こして背伸びをする。 時計は9時を指していて、あくびをひとつして部屋のドアを開けた。 昨日は実理ちゃんと岩田君が来て、ご飯食べて真面目に勉強をしてたから 触発されて、あたしも真面目に頑張ってしまった。 寝たのは4時だったけど… (なんか、目が覚めちゃった…) キッチンの冷蔵庫を開けて、オレンジジュースをグラスに注いだ。 一気に飲み干したところに、リビングのドアが開いた。 「あれ、烈?おはよ」 「お、早いな」 「烈こそ。昨日結構遅くまで起きてたやろ?」 「なんか、目ぇ覚めてん」 「あ、わかる。あたしも」 ジュース飲む?と烈の分のグラスを出してジュースを注ぐ。 烈はそれをの手から受け取った。 「…今日、土曜やんけ」 「へ?何、急に」 烈はジュースのグラスを持ったまま壁に貼ってあったカレンダーを見ていた。 そして驚いたように今日の日にちを指さした。 「明日、親たち帰ってくるん?」 「明日っていうか、月曜日って言うてたけど」 「…オレ店開けとけ言われたけど、1日しか開けてへんわ」 「あはは、そうや!最初の日しか開けてへんかったよ!」 (あれから1週間経とうとしてんのや…なんか…早い) なんてしみじみ1週間を振り返ろうとしていると 烈が突拍子もないことを言い出した。 「あ、…お前浴衣持ってるか?」 「浴衣?持ってへんよ」 「マジで」 「え、うん。てかイキナリなに?」 「よし、買いに行くで」 「…何を?」 「浴衣や」 「は!?」 言うなり、烈はジュースを飲み干して 洗面所に向かった。出かける準備を始めたらしい。 ワケの分からないまま、あたしも部屋へ向かい洋服を選ぶことにした。 「…なぁ、烈。なんで浴衣やねん?」 「つうか、浴衣ってどこで買うもんなん?」 準備を終わらせて2人で家を出る。 外は相変わらずの日差しでギラギラと照りつけられた。 一向に噛み合わない会話にガッカリしては質問に答える。 「浴衣は着物屋さんとかデパートとかに売ってるもんちゃうん? て、いうか!あたし浴衣買うお金とかないねんけど!」 「ああ、それはええねん。気にすんな」 「気にすんなって…」 とりあえずデパートの浴衣売り場へ向かうことにした。 並んで街を歩くのは初めてだったけれど (…目…目立つ…) 人より頭ひとつ出ている身長の烈は人ごみにいても中々目立つ。 そして道行く女子たちがみんなして振り返る。 (ちょ、こっち見んといて…!!) 烈を見てあたしを見る。 みんな口々にいいなーとか言ってるのが聞こえた。 いいな、って、この男あたしンじゃないんやけどな… この間からあんまり考えないようにしてたけど 烈は、彼女いるんやもんなぁ… こんなんしてて、彼女怒らへんのかな… 信号待ちで立ち止まったときに後ろのショーウィンドウを見た。 自分と烈と並んだ姿写っていて、それがなんか信じられなくて なんか夢のようで。 (あーこの並んだ姿、写メ撮りたい…) アホなコトを考えてたら、売り場についてしまった。 「…わぁ、かわいい…」 「好きなん選べ」 「…は?」 「だから、選べて」 「いや、せかやら、あたしお金ないねんて」 「買うてやる言うてんねん」 「…はあぁぁぁぁ!?何言うてんの!?」 「お前が飯作ってくれたから親から貰た金余ってんねん」 せやから好きなの選んで。と背中をポンと叩かれた。 選べと言われても… 烈はじっ、とこっちを見たままで 浴衣を選ばないと、帰れない感じだったので 優しいお値段の牡丹柄の浴衣を選んだ。 どうしようって思ったけど やっぱり嬉しくて 買った浴衣をぎゅうと抱きしめてしまった。 「…で、なんでやねん?」 買った浴衣は烈が持つといって、烈の手の中に。 今は近くにあったハンバーガー屋にいる。 そこでいきなり浴衣を買わなければならないという その理由を聞いた。 「その前に、。日曜に祭り行かへんか?」 「…まつり?」 少し間があいて、祭り、という単語に反応する。 (あ…こないだ玄関先で話してたアレや…) それに今、行こう、と誘われてしまった。 「…え、…それ誰が行くん?」 彼女と行くもんやろ。普通。2人で。 ていうか、彼女が烈に行こうって言うてたのに そこにあたし誘うて何やねん。 「オレと岸本と岩田と岩田の彼女と…こないだ来てたあの子」 …ははーん、実理ちゃんが余るからあたしを誘ったとかそーいうことやな? ぶっちゃけ行きたない。 烈が他の子といちゃついてるとこなんて本間見たくないし! …だけど ちょっとでも一緒に祭りに行けたらいいって思う自分がいて 最後の日に一緒に入れないのも、嫌だし。 見たくないもの見て、 傷つくのも、落ち込むのも、自分なのに それなのに 「…ええよ、行っても」 アホやあたし… 「浴衣、買うてもらったし、な」 無理やりに笑顔を作った。 せっかくのデート気分も せっかくの浴衣も 全部が素直に喜べなくなって。 気持ちが黒くなっていく それなのに 「あの浴衣、にめっちゃ似合うてたな」 ああもう本当にこの人は。 「明日、楽しみやな」 どこまであたしのテンション上げ下げさせたら気が済むねん。 不条理なことも喜んで。 惚れた弱みってこのことだ。と痛感した土曜日。 (…ていうか、結局浴衣はなんやねん?) (全員浴衣で参加って岸本がうるさいねん)(そんな理由!?) 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |