好きな気持ちを隠すのは至難の業です。 恋する7days 05 「烈!!はよ起きて!!」 いつもはゆっくり起こしに来るが 今日はアホみたいに早い時間に起こしに来よった。 「なんやねんな…まだ7時やで!?」 「何言うてんの!今日登校日やで!?」 「…とうこうび…?ってなんやねん」 「何寝ぼけてんねん!学校行く日や!!」 「…がっこう…?」 そや、すっかり忘れてた。 今日は夏休みの間にある邪魔な日、登校日。 なんのためにあるのかわからんけど、行かないといけないらしい。 ノロノロと準備をする烈をよそに、はテキパキと準備を終わらす。 いつもはおろしている髪を結んで、どこか別人のように見えた。 「…」 「え!?烈何!?ていうかあたし先行くで!?」 「は、お前もう行くんか?」 「友達が家まで迎えに来るねん!1回自分の家戻らんと!」 バタバタとカバンを持っては玄関へ走る。 「烈も遅刻したらあかんよー!!!」 と、叫んでドアの閉まる音がした。 「…朝から騒々しいやつや…」 烈はため息を付きつつ、静まりかえった自分の家を見渡す。 どことなく違和感を感じつつ、烈も家を出た。 「わー久しぶりー」 「みっちゃん!元気ー?」 久しぶりに友達たちと会った。 遊びに行きたいけれど、みんな受験で誘うに誘えない。 なので会うなりキャーキャーと騒ぎたてた。 「つうか、焼けてへん…?」 「うっ!ばれた?」 「自分ばっかり遊びに行ったんや!ずるー!」 「いやいや…」 烈と実理ちゃんと海に行っただなんて口が裂けてもいえない。 きっとちょっとした騒ぎになるに違いない。 2人はそれだけ学校中で有名なのだから。 それに、あたしは夏休み前は2人と全然接点もなかったし いきなり2人とあたしが喋ってたりしたらそれこそ騒ぎに… 「おー!」 「!!」 2人と仲良くなったことは秘密に、と思っていた矢先に 前から実理ちゃんと烈が歩いてきて、実理ちゃんに名前を呼ばれた。 隣にいたみっちゃんが目を見開いて口をパクパクと動かす。 言いたいことは分かる。ちょっとまってくれ。 「ちょ…!みのりちゃん恥ずかしいから大声で呼ばんといてよ!」 「はぁ?恥ずかしいて何がやねん?オレとの仲やんけ」 がし!と肩を組まれた。 みっちゃんはさらにびっくりした顔をしてて あたしも負けないくらいびっくりした顔をしてると思う。 「ちょー!!?みのりちゃん何聞いてたん!恥ずかしい言うてるやろ!?」 「やー嫌がるを苛めるんは楽しいなぁ」 「はぁ!?ムカツク!」 「はっはー!砂浜のお返しや!」 「そんないまさら!?てか放さんかい!!!」 「いーやーじゃー」 「いやじゃ、やないわボケ」 ゴツッ 少し大きくて鈍い音がした。 見上げると、烈がみのりちゃんの頭をグーで殴っていた。 「いった!何すんねん南!!」 「お前が悪いんやろ」 「なにがやねん!オレとのスキンシップやっちゅーねん!」 「どこがや。ただのセクハラやんけ」 「あ、ありがと」 烈に小さくお礼を言って、ぱっ、と2人から離れる。 まともに顔なんか見れない。 周りがボソボソと何か言っているのが聞こえる。 やばい!恥ずかしい! 「じゃ、ね!みっちゃん行こう!」 ぐい、とみっちゃんの手を引いて烈と実理ちゃんを通り過ぎた。 小走りで去っていく後ろ姿を烈がずっと見ていたことに私は気づいていなかった。 「で、ちゃん?聞かせてもらおか?」 教室に入った途端、前の席に座り みっちゃんがコチラを向く。 「…あー…」 まぁ聞かれると思っていたが、なんと説明したらいいのか は頭を悩ませる。 「えーと…じつはな、あたし南くんと元々幼馴染やねん」 「はぁ!?あんたそんなこと一言も!」 「昔な、昔!中学上がってから全然喋ってなくて」 「今喋ってたやん、しかも名前呼ばれてたし!」 「あー…夏休み入ってから、南くんの家にお世話になってて…」 「はぁ!?家!?」 「ちょ!!でかい!声でかいわ!!」 クラスの視線が2人に集まる。 は慌ててみっちゃんの口を手でふさぐ。 「だって家て!それでまた仲良くなったん?」 「まぁ、そんなトコ…」 「へぇ…本間びっくりした」 「あたしもびっくりした…」 まさか学校で声をかけられるなんて。 ていうか、実理ちゃんとはちょこちょこ喋ってたな… 烈とはまったく喋ってなかったし… むしろさっきのだって、実理ちゃんが絡んで来たから助けてくれただけで… 「!」 「へ?なに?」 ぼんやり考えていると、みっちゃんがバシバシと私の肩を叩く。 痛いんやけど。何そんなに興奮して… 「南くん!来てる!」 「は?」 「のこと呼んでるて!」 「はぁぁぁ!?」 ぐいぐい引っ張られて、教室の入り口まで連れてこられた。 ドアの所で烈がこっち見ながら笑っていた。 「…なんでお前引っ張られてんねん」 「は…!?や、てか…どうしたん!?」 声を殺して笑う烈にどうリアクションをとっていいのか分からず とりあえず、用事を聞くことにした。 「ああ、今日な夜に岩田と岸本が来んねん」 「あ、勉強?」 人に聞かれないかハラハラしたけど 近くでみっちゃんが他の子近づかせないようにしてくれてて安心した。 「で、あいつらで晩飯ウチで食うってうるさいねん」 「あいつらっていうか、実理ちゃんでしょ?」 「まぁ、そうやねんけど」 「ええよ、4人分作ればええかな?」 「…6人分…かな」 「……ああ、実理ちゃんがアホみたいに食べるしな」 この間ファミレスに行ったときのことを思い出す。 あの食べっぷりは見ているこっちが満腹になるほどだ。 「ん、わかった。帰り買い物して帰るわ」 「あ、帰り迎えに来るわ。荷物1人じゃ無理やろ?」 「ああ、ありがと…は!?迎え!?帰り!?」 「何大声出してんねん」 「え!いや!それ!一緒にかえる…?」 「家一緒なんやし、ええんけ」 「いいかもしれないけれども…えええええ!!!?」 「ほんなら、また帰りにな」 それだけ言うと、烈は自分のクラスへ帰っていった。 あたしはというと呆然と立ちすくむ。 「なぁ、」 「何、みっちゃん」 「あたし今、話全部聞いててんけど」 「ああ、うん」 「あんた、彼女みたいやで?」 ニヤニヤと笑うみっちゃんの顔。 あたしだって、舞い上がらずにはいられない。 だって、 私だって 彼女みたいだと思ってしまったんだから 好きなだけ舞い上がってしまえ だって、これは1週間だけの魔法なんだから 「つうか帰り大騒ぎやで?あんた大丈夫なん?」 「は!!…迎えってクラスに迎えにくんのかな!?」 「そりゃーそうやろ」 「…スーパーで待ち合わせしようって言ってくるわ!!!」 今だけ、 都合の悪いコトは全部全部見ないフリ 目を瞑って、舞い上がった金曜日の午前中 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |