優しさが痛いと思ったのは初めてでした。 恋する7days 04-2 「…あー…えーと…南さんのお家です…」 お家ですよね?と確認をされたので、 こう答えるしかなくて、答えてしばらく2人とも沈黙。 きっと、誰なんだこの人と思われているに違いない。 「…えと、烈に用事なんですよね?」 「あ、…はい」 「ちょ、今呼びますから!」 沈黙に耐えられなくなって、女の子を玄関先にあげて 烈を呼びに中に入った。 心臓がバクバクしてる。 変な汗が出る。 平然を装っているけど身体が熱い。 あの子は誰? 「つ、烈!」 リビンクのドアを開けてソファーでくつろぐ烈を読んだ。 烈はテレビから目を離し、こちらを向いた。 「何、。どうした?」 「え、と…烈にお客さんやった!」 「客?誰?岸本ちゃうん?」 「全然違うわ!女の子!」 「おんなぁ?誰やねん」 「アレや、1コ下の可愛くて有名な子!」 「…あぁ…」 思い出したように呟いて、烈がゆっくりと立ち上がる。 プツリとテレビを消してドア近くまで来た。 「えーと…一応玄関で待ってもらってんねん。はよ…行ってあげて」 「そんな気ぃ使わんでもええって。は気ぃ使いやなぁ」 ぽん、とすれ違い様に頭を撫でられた。 ドキドキして、本当はその子のところに行って欲しくなくて 意味もなく泣きそうになった。 玄関先から声が聞こえる。 女の子の高い声と、烈の声。 「で、あたし、今度のお祭りに行きたいんです!」 「祭り?そんなんあるんか?」 「知らないんですか?今週末にあるんですよ」 「ふーん、ええんちゃう?」 「やった!じゃあお願いします」 「なんやお前、それ言うために来たんか」 「違いますよ。例のブツを貰いに来たんです」 「ああ、あれな、ちょっと待っとけ」 パタパタと烈が階段を登る音がする。 きっと自室に何かを取りに行ったのだろう。 私はというと。 「…やばい、もう死にたい…」 呟いて、リビングの床に倒れこんでいた。 だって祭り!!祭りに行く約束してたし! しかも今週末って!!! (…その日、あたしこの家にいるの最後なのに…) じわり、うっすらと涙が目に浮かぶ。 普通に考えたら、幼馴染よりも彼女を優先するに決まってるし きっと、あの子が彼女なんだ、と思う。 1人で舞い上がってアホかアタシは 烈が優しいのも、女の子に気ぃ使えるようになったんも 全部、彼女がおったからや きっと、きっとそうに違いない。 バスケでキャーキャー言われてモテてたのも知ってるし 実際彼女がおったっていう噂も聞いたことあるし 元々あたしの入る隙間なんてなかったんや 「あー…もう恥ずかしい…本間死にたい…」 ガチャ、とドアの閉まる音がして静まり返る。 きっと烈は一緒にあの子と出て行ってしまったんだろう。 リビングを飛び出して、自分の部屋へ戻る。 枕に顔をうずめて、目をつぶった。 また勉強しなきゃいけなかったけど それドコロではない。 見たくなかった。 烈の彼女なんて。 「、おい、起きんかい」 「ん…っ…」 目を開けると目の前には烈がいた。 びっくりして、目を見開いた。 「うわ!びっくりした!」 「…お前もう夕方やぞ?夜勉強するんか?」 「え…や、頭…痛なって…」 「頭痛いんか?」 ペタ、と烈の手があたしの額を触った。 近いやら恥ずかしいやらで目が合わせられない。 触られたのは一瞬なのに、ものすごく長く感じた。 「熱はないな、薬飲んどくか?」 「…ん、平気や。ありがとう」 やさしい、やさしい。 もう優しくしてもらえるだけで十分だ。 「ほんなら、今日飯食いに出よか」 「え!ええよ!あたし作るて!」 「1日くらい出てもバチあたらんて。金あるし」 「……ええの?」 色んな意味で、聞いてみた。 でもストレートに、彼女はいいの?とは聞けなかった。 「ええよ。何食いたい?」 「フレンチ!!」 「アホかお前。そんなん腹いっぱいになるか!」 「えー!じゃあ烈は何がええねん」 「オレか?…お好み焼き」 「……ええな」 「じゃ、決まりな」 ぐい、と手を引かれて立ち上がる。 繋がれた手の大きさに少し驚いた。 「…ちょっとくらいええかな」 「は?何か言うたか?」 「言うてないよ」 彼女さんすみません。 今だけ、 今週だけ、 この7日間だけ。 烈と一緒にいさせてください。 悲しくて、笑って過ごした木曜日の夜 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |