まさかこんなこと、夢にも思わない。 恋する7days 03 ジリジリと照りつける太陽と その日差しが反射してキラキラ光る海と 砂浜をワイワイと走り回る人々。 そう、来てしまったのです。 「…海や…」 「海やな…」 「海やで海!もっとテンションあげんかい!!」 各々テンションの異なる3人。 1番のベストコンデションは間違いなく言い出したコイツだった。 「なんやねんな?そんな辛気臭い顔して。海やぞ?」 「だ…だって…高3の夏休みに海…!あああありえへん!」 「落ち着け」 「せやかて烈!あたし成績そんな良くないし!?お母さんにバレたら殺される…!」 「…ええから、ちょっと気分転換も必要やって」 「…気分転換…」 「そーそー遊んだらええねん!」 「…実理ちゃんこないだのテストで成績ケツから4番目やったって本間?」 「………しらんな」 なんだかんだ言いながら、とりあえず水着に着替えて薄手のパーカーを羽織り 岸本と南と合流し、パラソルと敷物を借りて 浜辺で場所を確保しパラソルを開く準備を始める。 さすがにこんな日差しの下にパラソルなしではいられない。 「あー本間暑い!パラソルあるだけでやっぱ大分違うわー」 「こっち押さえとって、なんか…コレ倒れそうやねんけど」 「えっマジで」 「ちょお南!あっち!めっちゃ可愛い子おるって!」 はしゃぐ岸本に、2人で冷たい視線を送るが いまや彼はそれドコロではないらしい。 「実理ちゃん何しに来たん…」 2人で必死にパラソルを固定している所に海辺を指差すこの男。 指差した方向の先にはナイスバディギャルが2人浮き輪を持って 海で遊んでいる姿があった。 「何しにって…そりゃお前…泳ぎに決まって…」 いきなり、態度180度変えて真面目なコトを言い放つその途中 岸本の目線は、3人の目の前を通りすぎた悩殺水着に釘付け。 そんな目的で来たのはなんとなく気づいていたが こんな露骨にされると腹が立ってくるのは仕方が無いと思う。 「…ナンパしに来たんかい」 パラソルを見事に設置して、南はぼそり呟いてその場に座る。 それを見ても隣に座った。 「なんで人事やねん。お前もするんやぞ南」 「アホか!するかそんなもん!」 「なんでやねん!こないだ雑誌見て水着の女捕まえたい言うてやんけ!」 「なっ!?言うてへんわ!それ言いよったん板倉やろ!?」 「南やろ!?なんや自分だけエエ格好しよって!!」 「勘違いもほどほどにせいや!そんなん言うた憶えないわ!」 「もーうるさい!!!!」 いつまでも終わらない言い合いにいい加減嫌気がさして つい、怒鳴ってしまった。 でもイライラして仕方がなかったんだからしょうがない。 「ナンパしたいのはよーわかったから勝手にして!」 ばっ、と立ち上がってビーチサンダルはいてパラソルを出た。 (ナンパしたいならあたしを誘うなっちゅーねん!!むなしいだけやん!) ザクザクと歩くと浜辺の砂が隙間からチラチラと入ってくる。 太陽の熱で焼かれた砂は少し当たっただけで熱かった。 (裸足で歩いたら火傷しそうやな…) 実理ちゃんにバツゲームで歩かせてみればよかった なんて結構エグいことを考えながら海の家の売店までやってきた。 (…結構楽しみにしてたんだやけど) バツゲーム考えて、なんかゲームしたり、3人で泳いだり 最初こそ、この時期に遊びに来てていいのかと動揺したけれど 「…ええから、ちょっと気分転換も必要やって」 (烈がああ言うてくれたから、ちょっと…気が楽になれたのに…) ジュースを3本買ってお金を払う。 なんか大声で怒鳴ってしまった手前帰りにくかったけれど いつまでも売店にいるわけにもいかないので トボトボとさきほどのパラソルへ向かった。 「あれ…」 誰もいない、先ほどまでいたパラソル。 間違いじゃなく、誰もいなくなっていた。 「あ、…勝手にすればって言うたのはあたしか」 足に付いた砂を叩いてサンダルを脱ぐ。 座って、持っていたジュースを置いた。 一本開けて、一気に飲み干す。 「っはー…」 視界が少しずつ滲む。 だって、 なんか、 「あれー?」 うつむいてたら、上から声がしてばっと顔を上げた。 「1人?何してんの?」 全然知らない人で、キョトン、としてしまった。 ほんとに、誰? 「え…いや…人待って…ます」 「すぐ帰ってくんの?ヒマやない?一緒遊ばへん?」 「え…は!?」 これは世に言うナンパ言うヤツ!? 実理ちゃんみたいなんが他にもおったんや!! 「な?オレらのトコ他にもいっぱい人おるし、楽しいって」 「や、いいですいいです!」 「なんで?海で1人て寂しいやろ?」 「…え…っ、と…」 「な?ええから行こうや」 「やーいやいやイイデス!!」 なんてしつこい!ナンパってこんななの? ついていく人おるの!?もうなんでもいいからどっか行って!! さっきから何度同じこと繰り返したかわからんけど この人はまだ私の前から立ち去らない。 もう本間ほっといて欲しいのに… 「なー名前教えて?」 「は!?いやです」 「も少し仲良くなろうや」 「意味がわかりません!」 「自分めっちゃかわいいやんか、お友達になりたいねん」 「はぁ!!?ますますわかりません!」 「照れてんの?かわいいなぁ」 いい加減に空気を読め!!! と、叫びたかったが逆ギレされたらいややし… ほとほと困り果てたその時に 「もー限界。な、一緒おいで」 そう言われて、腕を捕まれた。身体がビクっと跳ねる。 口調は変わらず軽いノリのままなのに、怖い、と思ってしまった。 「や、本間いやですってば!」 「こっち来たら楽しくなるって」 「も、離して!」 「強情やな自分、エエ加減素直になったら?」 ぐい、とさらにチカラを込めて手を引かれた。 怖い。 嫌だ。 離して。 烈! 「コラ、お前何に手ぇ出してんねん」 ぬっ、とあわられた大きな影。 その男の後ろには、汗だくの南の姿があった。 「烈!」 「は、え、連れって男!?」 「ええからはよ手、離さんかい」 「あ、ああ」 「で、さっさと自分のトコ帰りや」 淡々とした口調と対照的な人殺せそうな目線。 男は黙って去っていった。 「、すまんかったな」 「え…あ、…へいき」 ぽと、ぽと、 言葉と対照的なその落ちてくる涙。 別に怖かったわけじゃなくて 「どないしたん!?なんかされたんか?」 「え、…違っ…烈が…」 「おれ?」 「烈が帰ってきてくれて、よかった…な…って」 「お前がどっか行って岸本と言い合いになってな 結局2人でお前のこと探しに出てたんや」 「…そ、やったん…?」 「ごめんな」 ぽん、と頭を撫でられた。 そんな子供のようなあやされ方で、嬉しいと思ってしまったあたし。 ぼんやりと見つめた、南の横顔。 ドキドキが大きくなる。 助けてもらったから? それとも? 「あーーー!!!!」 「あ、実理ちゃん」 「すまんかった!!」 「えっ、ちょ!?」 パラソルに帰ってくるなり、岸本はの前で土下座を始めた。 「ちょー!?実理ちゃん何!何!頭上げて!」 「せっかく一緒海に来たのにナンパがどうとかそんなばっか言うて本間悪かった!」 「え、いや…私も…怒鳴ってごめんな?」 「お前の気持ちも知らんと!オレは女心のわからん最低の男や!!」 「…あたしの気持ちて何やねん」 「お前オレのこと好きなんやろ?」 「アホか!!!」 夏の魔法にかかりました。 いやそれ以前からかかってたのかもしれません。 好きだということに気づいてしまった、水曜日の海。 (実理ちゃんいい加減にせんと砂浜で転がすで?)(何やそのエグい仕打ち!) (ついでに海パンも脱がしたろか?)(さらに鬼が!!!) 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |