少しずつ、染み込んでいく。






恋する7days 02-1






次の日の朝。
とりあえずいつも通りに起床。
目をこすりながら廊下へ出ると何かにぶつかった。

「わぁ」

「お、なんや早いな」

「あれ…烈…おはよ…烈こそ早い」

「普通や。いつもこんぐらいに起きとるっちゅーねん」

「ほんまぁ?いつも遅刻してきよるやん」

「アレはバスケの練習してから遅なるんや」

一緒に階段を下りて、烈は新聞を取りに外へ出た。
私は落ち着かないままリビングとキッチンをうろうろとしていた。

「…何しよるん」

「え、…いや…烈、朝ごはん食べる人?」

「朝は…別にええわ」

「そう?えーと…じゃあコーヒーでも…」

「…」

「え?」

「ちょお、こっち来い」

ソファに座った烈が手招きをする。
持っていたやかんを置いて、烈の方へ行った。

「なに?」

「お前気ぃ使いすぎや。落ち着け」

「…だって」

「自分の家みたいに思っててええねんで?」

「…そんなん無理やもん…」

「……じゃあちょっとづつ慣れていこか」

「え?なにそれどうやって?」

「まず、隣に座れ」


ぽんぽん、と烈が自分の隣を叩く。
はそこに座った。
すると烈は持っていた新聞を広げた。

「…烈、新聞なんて読むん?」

「まぁ…たまにな」

「ふーん…で?あたしは?」

「お前はこっち」

ばさ、とひざの上に置かれたのは広告の束。

「…え、何」

「とりあえずゆっくりしたらええやん」

「…ぶっ…なにそれ」


(ゆっくりしろって、チラシ見ろってこと?)

笑いがこみ上げてきてクスクスと笑いながら
ひざのチラシに1枚づつ目を通す。

「あ、烈、山田さんトコの電器屋リニューアルすんねんて」

「あーなんやおっちゃん儲かってるって自分で言うてたで」

「えーipodとか売ってへんかなぁ。んで安くしてくれへんかな」

「アホかお前!おっちゃんとこに売ってるわけないやろ」

「そんなんわからんやんか!山田のおっちゃんこないだWii買っとったし!」

「おっさんのくせにWiiて…何に使うねん」



チラシ15枚で大分盛り上がってしまった。
時計の針はもう10時を指していた。


「あ、そろそろ準備せな」

「烈どっか行くの?」

「図書館にな」

「あー…」


忘れていたわけではないけれど
ちょっと隅に追いやっていた「受験生」という言葉。
烈は立ち上がって背伸びをした。


(うわ、でか)


まじかでこんなでかい人を見ることもあまりない。
はマジマジと烈を見上げた。

「口開いてんで」

「は…っ…えーと…あたしも着替えてこようかな」

こっち見下ろして、少し笑う烈はドキリとするほどカッコよくて
恥ずかしくなって思わず逃げてしまった。


(何ドキドキしてんのあたし)


パジャマを脱いでお気に入りのTシャツとデニムに着替える。
烈が図書館に行くのなら、私はこのまま家で勉強しようか。
そんなことを考えながら、顔を洗おうと1階へ下りた。


ピンポーン


南家のチャイムがなる。
は慌てて烈を探す。
洗面所を開けると隣の風呂場からシャワーの音がした。

「…烈!?何風呂入ってんねん!?」

「ああ?なんや?どないしたん」

「誰か来たみたいなんやけど!」

「あー悪いけど出てくれへん?」

「あたしが!?あたし南家の人ちゃうけど!」

「どーせなんかの勧誘かなんかやろ、適当に追い返しとけ」



そんなこと言われても…!
『ピンポーン』
チャイムの音がまた鳴り響く。
ああしつこい!帰ってくれればいいのに!!

はしぶしぶ玄関の鍵を開ける。
そして扉を少しだけ開けた。

「あのーどちらさま…」

ドアから見えたその人物は勧誘の人でもなんでもなく
昔から良く知るその顔でした。

「げっ!実理ちゃん!!!」

「げって!え!?!?何してんねん!」

「あ、やっぱり岸本」

「え?やっぱりって…ってえーーーーー!!!?烈なんちゅう格好で!」

「お前、今頃風呂入っとったんか!?わざわざ迎えに来てやったのに!」

「うっさいわ、ちょお待っとけ」

「は!え!?もしかして2人付きおうてんの!?」

「違うわ!もう実理ちゃんうっさい!!」

「うっさいってなんやねん!!もー決めた!今日は勉強会南ンちでやる!」

「はぁー!!?ちょっ、烈ー!」

「あ、岩田?今日図書館やなくて南ンち集合な」

「!!!!」





穏やかな午前中はさっぱりと消え去り。
にぎやかな午後になりそうな、火曜日の出来事。




(つうか烈!!いい加減服着んかい!!)(だって暑いねんもん)
(あたし一応女の子やねんけど!!!)
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