君といることが、こんなに楽しいなんて。






恋する7days -02






通された客間は隅々まできれいにされてて
布団まで干してあってふかふか!
なんか申し訳ないな。


廊下に出ると、昔走り回っていた思い出がよみがえる。


トントントン、と1階に下りる。
リビングを覗くとシンとししていて少し薄暗い。

(…烈はまだ店かな)

そのまま廊下を進んでお店に出る出口から顔を出す。
カウンターにはノートと参考書を広げて
シャープペンをまわしながら勉強をしている烈がいた。

「…おーい」

「わ、びっくりさすな」

「そっちが勝手に驚いたんやろ」

「…なんか用か」

「あ、冷蔵庫開けてもええ?なんか勝手に開けるの気が引けて」

「別にええよ。 てか勝手にいじっても
 やったらおかんも何も言わんと思うし」

「…そうかな。まぁ、とりあえずキッチン借りるわ!」

それだけ言い残し、はバタバタと走ってその場から逃げた。
そのままキッチンへ行き、でっかい冷蔵庫を開ける。

「わーすごーウチとは全然ちゃうわー」

キレイに使ってある冷蔵庫。食材もそこそこ入っており
は何が入ってるかチェックをして冷蔵庫を閉める。
ついでに冷凍庫も。

「んー烈のおばちゃん料理上手やったもんなぁ
 料理うまい人は冷蔵庫ン中もキレイやなぁ」

関心しながら、キッチンもまじまじと見つめる。
もちろん。キッチンもキレイだった。


「よし、やるか」


選んだ食材を並べて、静かなキッチンとリビングに
包丁の音が小さく響いた。

























***





























「ー」


手には先ほど開いていたノートと参考書とペンケース。
リビングに烈が入ってきた。

「あ、店閉めたん?」

「もうええかと思て…てか何しとん?」

「え、夜ご飯作ってるんやけど…もしかしていらんかった?」

「いや…飯は外食でもせえって金もろてんけど」

「え!?そうなん!?あいたーでしゃばった!ごめん!」

「ええやんけ。何作ったん?」

「…ハンバーグ?…いや、やめよう。絶対ファミレスとか行った方がええって!」

「なんでやねん。あー腹減った。コレ部屋に置いて来るわ」


口元に笑みを浮かべて烈は自分の部屋へ上がっていった。
さっきまでノリノリに作っていたけれど
恥ずかしくて今はもう座り込んでしまいたい。
不恰好なハンバーグをマジマジと見つめる。


「何自分の作ったハンバーグ見つめてんねん。持ってくで」

「え!いや!ちょ…!」


最後の抵抗もむなしく、料理は運ばれてしまった。
テーブルの上にハンバーグと野菜の乗ったお皿とコンソメスープ
炊き上がったばかりのふっくらしたご飯。
お箸を添えて、向かい合って座った。

「ほな、いただきます」

「…ど、どうぞ」

烈がハンバーグを口に運ぶ。
そしてご飯も口に運ぶ。

はそれを穴がくらいじーーーっと見つめた。

「…はよ食えや」

「だって気になんねんもん!」

「美味いって、も食うてみ?」


(…美味しいって言った…!)


はおそるおそる自分のハンバーグに手を付ける。
一口食べてゆっくりと噛み締めた。

「あ!美味しい!え?あたしすごない!?」

「言い過ぎやアホ」

「だって美味しく出来たの嬉しいもん!」

「でもココ焦げてるやんけ」

「うっ…って!烈トマト何避けてんの!?」

「…お前オレがトマト嫌いって知ってて入れたやろ!」

「まだ食べれへんの!?」

「うっさいわ!」

「子供やなぁ烈は」

「…お前かてまだグリンピース嫌いとか言うてんのやろ」

「もう食べれるし!」

「ホンマかぁ?なら明日の晩飯グリンピース入った料理作りや」

「…明日…?…明日もあたしの作ったご飯でええの?」

「が作るのしんどかったら別ええけど」

「作る!あたしヒマやし!作る!」

「ほな頼むわ」

「まかせて!」


誰かに作ったご飯食べさせるなんて初めてだったけど
こんなにチカラいっぱい返事をしてる自分。
夕食を済ませてパラパラと料理の本をめくる。
こんなに真剣に明日の献立を考えている自分。



まだ、気づいてないけれど。



少しだけ、何か新しい感情が芽生えた月曜日の夜。









(お前絶対明日グリンピース使えよ)(…え?何の話?)
(やっぱり食えるようになってへんやんけ!)
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