しばらくは、あたしの天気は晴ればかり。






降っても 晴れても






「!」


衝撃的な1日のその次の日。
教室に入るその前に、呼びとめられた。

「あ、みっちゃん!おはよー!」

「ーーー!!!」


あたしの「おはよう」は見事にスルー
みっちゃんはあたしをがばっと抱きしめた。
あたしは抱きしめられた衝撃にぐらり、足元が揺らいだ。

「うわぁ!ちょ、みっちゃん!?」

「〜よかったなぁ」

ぎゅーーーっと抱きしめられて、少し苦しい。
けど、嬉しいからなんも言えない。

「みっちゃんありがとー!」

きゃあきゃあと教室の入り口で騒ぐ私たち。
みんな何事だとジロジロ見るけど気にしない!


「あんたら邪魔や」


相変わらず、さくっと冷たいこの声は
ぱっ、とみっちゃんと離れて声の方を振り向くと
思った通りの人物。

「りぃちゃん!おはよ」

「おはよ」

相変わらず美人。
りぃちゃんが微笑んで挨拶を返してくれた。

「ほら、教室入るで2人とも」

りぃちゃんが教室のドアを開ける。
するとまたしても、呼びとめられた。


「さん」


振り向くと、今度は全然知らない女の子2人。
いや、なんとなく見覚えが・・・

「・・・あ、隣のクラスの・・・?」

なんとなく、見覚えがあると思ったら
この間、あたしが南に告ったのか、と聞いてきた2人だった。

「この間、答え聞けへんかったから」

じっ、と女の子たちがあたしの方を見る。
後ろでりぃちゃんがみっちゃんとコソコソと話すのが聞こえた。
この2人に前呼びとめられた時はりぃちゃんおらへんかったから


「告白したん?ていうかまさか付き合うてないよな?」

「いや、あの・・・」


あたしの気弱!チキン!
なんで言えへんねん!あたしは南の彼女やのに!!


「黙ってへんで、ちゃんと答えてや」

「つうか告っただけやろ?なんでどもるねん?」

「フラレたの恥ずかしがってんの?」


2人は黙っているあたしに、しびれを切らしたのか言いたい放題。
そりゃ1回フラレましたけど!?死ぬほど恥ずかしかったけど!?

でも、昨日南に好きって、言ってもらえたし!!



「あ、あたしは」

「あたしは、南の彼女になりました!!!」


シーン、回りが静まりかえってしまった。
なりました、ってなんや変な言い方になったけど・・・
てか、え、なんで静まるん?
あたし声でかかった?引いた?
みっちゃんは目をキラキラさせてあたしの方見てて
りぃちゃんは・・・ああ、あれは若干呆れてる時の顔や
で、目の前の2人は・・・


「ウソやぁ」


そう言って、2人はにこやかに笑った。
でもちょっとピリっと空気が凍ったように感じたのは
気のせいやないと思う。


「さん嘘はあかんわー」

「は!?う、嘘ちゃうよ」

「いやいや、彼女になりたい気持ちはわかるけどな?」

「そうそう。それはウチらかて一緒やから」


え、何この展開。

どうやらあたしの話はウソと化したらしい。

ええー!せっかく勇気を出して言うたのに!!


「いや、あの・・ホンマやねんけど・・・」

「さんもぅええってーフラレたんやろ?」

「だから違っ・・・!」







「なんや、誰がフラレたって?」


感情に任せて大きな声を出しそうになったその時
みっちゃんでもりぃちゃんでも、
目の前の2人でもない声がして、その声の方を見た。


「・・・岸本」

「あ?フラレたってか?」


にやにやしながら岸本があたしの肩に腕を置いた。
あたしはイラっとして、岸本を睨む。


「あー岸本くん、さんが南の彼女になったって嘘つくねん」

「だ、からウソちゃうて!」


先ほどまでにこやかだった2人はだんだんイライラしてきたようで
声に少しだけトゲがある。
あたしも負けじと言い返すけど、ちょっと怖なってきた・・・
が、何の空気も読めないこの男はお構いなしに話を振ってきた。


「あ!せや!お前俺になんの報告もないってどゆことや」

「え?え、だ、だって、それは南が俺がするからええって言うねんもん」

「にしても薄情やろ!?あんなに俺が協力してやったのに!」

「ご、ごめんて!」

「つうか南からのメールめっちゃ酷かってん」

「へ?」

「は俺の彼女になったから、お前もう用済みって」

「よ、ようずみ・・・」

「ちょっとあんまりちゃう!?」


ホントにちょっとひどいなーと思う反面
ちょっと面白くて笑ってしまった。
それを見て、岸本の怒りの矛先があたしの方へ向いた。


「何を笑てんねんコラァ!」

「ぎゃー!わ、笑ってへんて!」

「ちょ、ちょっと!」


その声に遮られて、あたしと岸本が黙る。
声の方を向くと女の子2人はイライラ顔から一転
不安そうな顔してこちらを見ていた。


「あの、嘘・・・ちゃうの?」

「・・・、さっきからこれ何の話してんねん?」

「あ、あんた散々喚き散らして今そんなこと言う?」

「せやから、南の彼女て誰やねん!」








「こいつやけど」


ぐい、とあたしの頭に手が伸びて引き寄せられた。
心臓がドキドキする。
ほんと、この声にだけいちいち反応する。


「み、みなみ・・・」

「よぅ」

「南!お前昨日のあのメールなんや!」

「ああ?書いたとおりや」

「はぁ!?」

「せやから、お前はに近づくなっちゅーてんねん」

「はぁ?意味わからんわ」

「わからんでええから、まずその手ぇどけろ」


ぺち、とあたしの肩に置いてあった岸本の手を南が叩く。
それにまた岸本が言い返して口げんか。
ちら、と2人組の方を見てみれば、
片方は放心状態で片方は今にも泣きそうな感じ。
あたしは一体どうすればいいのかわからんくて途方に暮れていると


「うるさい!!!」


りぃちゃんがキレた。

「何をこんな入口でごちゃごちゃ言うてんねん!」

「あ、あの、りぃちゃんゴメ・・・」

「別にが謝ることちゃうやろ。ほら入ろ」


一喝したと思ったら元通りのりぃちゃんで
あたしはみっちゃんとりぃちゃんに続いて教室に入る。
南と岸本にも手招きをしようと振り返ると

南はあの女の子たちに呼びとめられていた。



「南、彼女できたん?」

「あぁ?さっき言うたやろ」

「な、なんで?南1年の時から彼女いらん言うてたのに」

「・・・お前そんなカッコええこと言うてたん?」

「憶えてないわ」

「だって、元カノと全然タイプちゃうし・・・!」

「・・・よー知ってんな?」

「って南こいつら同中やぞ?」

「・・・そうやったか?」


そこで一旦会話が途切れて

女の子のすすり泣く声が小さく聞こえた。

南は小さく息を吐いて、頭をがしがしと掻いた。


「まぁよくわからんけど、のことあんまイジメんといてや」

それだけ言って、南はその場を離れて教室の入り口の方を向いて

ばっちり目が合うてしまった。

「何しとん」

「え、南たち遅いなぁ思て」

「ああ」

がら、とドアを開けて南に押し込まれるようにして教室に入った。

岸本はそれに続いて入ってこなくて

ちら、と南を見たけど

ぴしゃり。ドアを閉じられてしまった。



















(っの、南のやつ逃げやがった・・・!)

ポツンと残された3人。
岸本に至っては何も関係がないというのに
泣いている女子と明らかに落ち込んでいる女子を残して
その場を去るということも出来ずに途方に暮れていた。

「・・・よう、わからんけど、って言われた・・・」

「は?」

泣いてない方の女が口を開く。
上手く聞き取れなくて、思わず聞き返してしまった。


「あたしらも、南のコト好きやったのに・・・」

「・・・そんなん南に言うてへんのやったら知らんやろ」

「せやけど!色々聞きに行ったり差し入れしたりしたのに・・・」

「そんなんでわかるかい」

「ちょっとくらい、気づいてくれてもええやんか!せやのに
 ようわからんけどって・・・」


そこまで言って、声を詰まらせた。
まてまてまてまて、まさかお前まで泣きだす気か!?


「あんな、南ニブいねん!そんなんじゃ気づかへんて」

一応、女子2人をフォローしたつもり。
が、なんや怒りを買ったらしく、顔をあげて怒鳴られた。

「せやったら、さんは一体何してん!?」

「あいつは・・・」

「あいつは好き好き言いまくって、めっちゃ頑張ってた」


本当に、頑張ってた。

アドレス聞くもの必死で、試合を見せれば本当に嬉しそうで
不本意ながら気持ちを知られてしまった時も堂々とすぐに告った。
フラレたり、噂ながされてりしたけど


「南が選んだのもわかるし、しゃーないと思うわ」


と、正直な感想を述べた。

すると


「なんっで岸本にんなコト言われなあかんの!?腹立つ!帰ろ!」


さらに怒鳴られて、そいつは友達の手を引いて自分のクラスに帰って行った。

ホンマ、ホンマに貧乏くじもええトコやオレ・・・


とぼとぼと教室のドアを開ける。

と、

すぐそこには南とが立っていた。


「・・・な、何してんねんお前ら」

「岸本、用済みとか言って悪かったな」

「ホンマ、岸本ええ奴やな」


ぽん、と肩に手を置かれた。


え、あれ、何こいつら。

いきなり態度変わり過ぎちゃうん?

てか



「・・・今の、聞いとったん?」

「うん」「おう」


2人が同時にうなづいた。










なんやものすごく恥ずかしなってきた・・・!














「う、うそやから!さっき言うてたのうそ!」

「ええから、岸本お前優しい奴や」

「み、南!おまっ俺が嫌がんの知ってて言うてるやろ!?」

「そんなことないよなぁ南。岸本ええ奴やなって話しててんもんな」


にやにやと笑う目の前の2人。


このネタでしばらくこのカップルにおちょくられるような気がして


岸本は深い深ーいため息をついた。




















友情は不滅です。

(てかお前ら俺にも彼女出来るように協力せんかい)(好きな人教えてくれたら協力するって)
(絶対言いふらすやろお前ら・・・てか南!)(おぉ、よぅわかったな)(鬼!)
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