好きな人が彼氏になりました。 降っても 晴れても てくてくと、帰り道を歩く。 いつもの帰り道なのに、なんか違う道に思えて仕方ない。 さらに歩き方もなんかぎこちない。 全部、全部隣にいる南のせいや。 「・・・なんや」 「え、いや・・・」 「お前そない大人しいキャラちゃうやろ」 「はぁ!?じゃあどーいうキャラなんか言うてみ」 「・・・犬?」 「キャラやなくてまんま動物やんか!!」 突っ込んだら南が笑った。 繋がれていた手に力が入った。 そのたびに、あたしの心臓はいちいち反応して仕方がない。 「あ、」 「? 何、どしたの?」 「お前、また岸本にメールすんのか?」 「・・・あぁ、するかも。ずっと話聞いてもらってたし」 「・・・友達らにはせぇへんのか」 「りぃちゃんとみっちゃんにもメールするよ」 「じゃ、岸本には俺から言うとくわ」 「・・・え、なんて言う、の?」 「なんてって・・・と付き合うことになった・・・とか?」 南のその一言に 腹の底から頭のてっぺんまで 熱ががーーーっと上がったのがわかった。 「と」「付き合うことに」「なった」 現実なのに未だに信じられないし、照れてしまう。 これに慣れる日がいつか来るんやろか・・・ 「・・・」 「は、はい?」 「顔真っ赤やけど」 南が笑いながら、指で頬を撫でる。 (ああああああんたがそんなことするから熱が上がるんやろ!!!) と、心の中で大騒動。 誰かあたしのこの暴走を止めてください。 さもないと、あたしきっと明日くらい死ぬかも。 「・・・あたし、南の彼女やねんなぁ」 「は?」 「・・・は、あぁぁ!?今あたし喋った?声出た!?」 「なんや今の無意識で喋ってたん?」 「うわ、恥っ、あたし明日くらい恥ずかしくて死ねるんちゃう?」 「わけわからんことを・・・」 さっき優しくあたしの頬を撫でた南の指が 何を思ったのか、あたしの頬をぎゅうとつねった。 あたしはというと、いきなりの出来事で一瞬ポカンとしたけど ジリジリと頬からの痛みを脳が伝達してきて いよいよ、黙っていられなくなり南に抗議を始める。 「ちょ、ちょー!!痛いんやけど!?」 「ぼーっとしよるから、気合い入れとこう思て」 「わ、わかった!気合いもう入った!痛いー!!」 ぱっ、と南の手が放れた。 その瞬間にあたしは頬を手で撫でる。 地味に痛かってんけど・・・ 「」 「え、なに?」 「お前ンちこの辺か?」 「あ、ああ。もうこんなとこまで来てたんや」 「ンちどれなん?」 「ウチそこの2軒先の家」 「へー・・・でかい家やん」 「南さんトコの薬局にはかなわんわ」 「言うとけ」 「つうかごめんな送ってもらって」 「別に、ンちどこが知りたかったし」 「そう?」 「次は、迎えに来るわ」 「え・・・えぇ!?」 驚いたあたしの顔に南がまた笑った。 手はまだ繋いだまんま。 ああ明日からこの生活が続くなんて なんて幸せなんや・・・! 死ぬ死ぬ言うてたけど、やっぱもったいないし死にたない!! 「南」 「なんや」 「もっぺん、頬つねってくれへん?」 「なんや、お前Mなん?」 「ちゃうわ!なんややっぱり夢みたいやから、再確認!」 「夢みたいって何が」 「み、南の彼女に、なったんが」 「・・・アホか」 「いーいーから!」 きつく目を閉じて、痛みに備える。 備えて、いたのに 触られてはいるけど、ちっとも痛くなくて そっ、と目を開けて南を見る。 「・・・い、痛くないねんけど・・・やっぱこれ夢!?」 「アホか、彼女をそんな2度も痛めつけれるか」 そう言って、南はあたしのほっぺたを緩くつまんで引っ張ってみたり 指先で押してみたり、自由に遊んでた。 「そんなんせんでも、夢ちゃうし」 南の笑顔、もうこの帰り道だけで何回拝めたかわからん。 やっぱりもう幸せすぎて 死ねそうな気がする。 (南、あたしが明日死んだら葬式来てな)(オレがちゅーしたら生き返るんちゃう?) (アホ!・・・って案外生き返りそうやなアタシ)(納得すんな) 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |