それでもやっぱりどーしても、あたしは。 降っても 晴れても なんか息が苦しい。 別に息を止めてたわけでも、ダッシュしたわけでもない。 さっきの、さっきの南の一言が今だにあたしに影響を及ぼしている。 心臓もまだまだフル活動。 (あたしこの数日で寿命絶対縮んだ気ぃする・・・) 朝からずっと目を追うのを我慢してたけど もう我慢なんてできなくて、じっ、と目で追ってしまう。 見る人が見たらもうあたしが南に惚れてるのなんてバレバレやな。 「?」 「ぅわ!みっちゃん・・・びっくりしたー」 「何をさっきからぼーっとして。ほら、授業もう終わりやで」 「え、あ!ホンマや・・・」 周りを見渡せばみんなボールを片づけて、集合していた。 のろのろと立ち上がりみっちゃんの後ろを歩く。 もう整列というか、ただ先生の周りにみんなが固まった状態で集まり 前で先生が何か言っている。 みっちゃんは背伸びして、話を聞こうと頑張ってたけど あたしはそんな気力もなく、先生の声はするりと頭から抜け出して 考えるのはやっぱり南のことばかり。 (あーいい加減あたし気持悪い・・・) 小さく息を吐いて、ぼんやりとただなんとなく向いた右側。 「・・・ひっ・・・!?」 思わず声をあげてしまうほど、びっくりした。 とりあえず手を口で押さえた。 あたし!あたし一体何を目で追ってたんや!!!? ちょっと目を離しただけなのに、気づけば横にいたのは南。 ここここんな近くで見たの久しぶりちゃうん!? 席が隣だった時は、机ひっ付けたりとかした時に距離近くてドキドキしたけど こんな感覚もなんか久しぶりな気がした。 (あー喋りたい。こんなに近くにおるのに・・・) なんてもやもやしてたら、小さく南の声がした。 もしかして、話しかけられたのか、なんて淡い期待を含みつつ ちら、と顔をあげて南の方を見た。 「南まだ腕落ちてないなぁ」 「アホか、落ちるわけないやろ」 喋っていたのは、南、とあたしの反対側にいたヤマダさん。 あたしの期待は見事に外れてしまった。 「てかダンク、見たけど高校生でも出来んねんな」 「ヤマダさっきからオレのこと馬鹿にしてんのか?」 「なんでやの!褒めてんのに!」 小さく、ヤマダさんが笑う。 南もちょっとだけ笑ってた。 ただそれを、黙ってうつむいて聞いてた。 聞きたくなかった。 あたしも、あたしも南とそーやって何事もなかったかのように 普通に、ただ普通に喋りたいだけやのに。 持っていたタオルを持つ手に力がこもる。 今、なんやホンマ色々後悔した。 好きでいるの止めるなんて言わなきゃよかった。 口利くの止めるなんて言わなきゃよかった。 告白なんてしなきゃよかった。 南のこと 南のこと、好きにならなきゃよかった。 こんなこと思うなんて、数日前には考えられへんかったのに。 先生の、解散!の一言で一気にざわめく。 りぃちゃんとみっちゃんが心配するから 滲んだ涙は汗と一緒にタオルで拭いた。 そして南の方を見ないようにして、すぐにみっちゃんたちの所に行った。 さっきは、目で追っててそれだけで楽しくて仕方がなかったのに もう、今は何も、南のすること何も見たくない。 (なんやのあたし、勝手すぎる・・・) 自己嫌悪しながら、教室に戻った。 「ーなんや元気ないなぁ?」 着替え終わって、早々に終わったHR。 気づけばもう放課後になっていて、 みっちゃんとりぃちゃんがあたしの席まで来てくれていた。 「え、あ、なんやバスケとかしたから疲れたんかな?」 「お前、あんだけでバテんのか」 「・・・岸本うっさい」 いきなり、くるりとこちらを向いて岸本が話に入ってきた。 うちら3人の顔が一気に険しくなる。 そして岸本のことを無視してみっちゃんが口を開いた。 「あ、でな。さっきりぃちゃんと話てたんやけど、今日お茶せぇへん?」 「え!行きたい!!」 「この間なんかカフェ出来てたやんか。あそこ行こかーって」 「行く行くー!」 どん底だったテンションが少しあがってきたその時に 机の上に置いてた携帯が震えた。 「っと、ん?メール・・・」 携帯を開いて、届いたメールを開く。 送信者を見て思わず携帯を落っことした。 「?どしたん?携帯落ちたよ」 そう言ってりぃちゃんが携帯を拾ってくれた。 が、あたしはその携帯を触る気になれへんくて それを見た岸本が、あたしの携帯をあたしの手に無理やり乗せた。 「・・・きしもと・・・?」 「見ろ」 「へ?」 「ええから、今着たメールはよ読め」 岸本は知ってるんや。 今あたしに着たこのメールは 南からのメールやって。 見ないわけにもいかへんし。 一体南がなんてメールしてきたのかも気になるし。 そんな気持ちが入り混じって 手がうまく動かない。 だけど。 心臓停止まであと5秒。 (なんでメール開くだけなのに手が震えてんねんあたし!!) 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |