たまには嘘も必要なことを知りました。






降 っ て も  晴 れ て も






振り向いた先には、思った通り南がいて

声聞いただけで跳ねた心臓が、さらに大きな音で鳴り続ける。

息が苦しい。この心臓はあたしを殺す気なんやろうか。

ていうかこのタイミングで現れた南もあたしを殺す気に違いない。



「・・・」

「・・・な、に、どないしたん!?」


また声がひっくり返った。いい加減にしてや自分!

動揺してるのが丸わかり。

南もいい加減声がひっくり返るのはノドがおかしいからやないことに気づくよなぁ・・・

どうしたらいいかわからんし、恥ずかしいし。

で目が合わせられないあたしの視線は、泳ぐように公園の周りを目で一周した。

ただ、見渡したわけやなくて、誰もおらんことの確認。

また誰かに見られて、変な噂立てられんのも困る。


「お前探したら、もう帰った言われて」

「・・・あ、うん・・・」

「お前んちの近くまで行ったら、メールしよ思うてたんやけど」

「は!?あたしんち!?」

「行くつもりやったけど、ここ通りかかったらお前がおったから」

「な、んで・・・」



さっきから、曖昧なことしか喋ってへん気がする・・・

つうか南が一体何を言いたいのかわからん。

ていうかこんなのんびりお喋りとかここでしてる場合やないのに!

早く、早く行かないと・・・!



「・・・みなみ」

「あ?」

「あたしに、なんか用なん?」

「・・・ああ・・・」

「・・・何?」

「・・・噂聞いたか?」

「!!」



早い!南相手やと噂広まんの早っ!!

噂に疎い南の耳に入るなんて相当早い!

・・・いや、単に岸本が教えただけか?


なんて、ぶつぶつ考えてると
あたしの返事を待たずに南がまた口を開く。


「・・・お前、大丈夫か?」

「・・・へ?」

「噂、気になるやろ」

「・・・あたし・・・?」


もしかせんでも、心配してくれてんの?

南が?

あたしのことを?










どうしよう


めっちゃうれしい













ぎゅ、手に力を込める。

こうやってないと、うれしくて涙が出そうになる。

さっき、決めたことも止めてしまいそうになる。


せやけど、あたしはちょっと離れた方がいいねん。

南のためにも、自分のためにも。

ちょっとブレーキかけないと、な。






























気持ちを持ち直して、深呼吸。


「南」

「ん?」

「心配してくれてありがとうな」

「いや」

「あんな、南」



唇が震える。

告白をした時よりも、心臓が痛い。


好きって言ったあの時と、痛い場所が違う。






だけど、決めたから

好き、だからって相手に迷惑かけていいわけないもんな。







「あたし、南のこと好きなんやめるわ!」

「・・・は?」

「って、宣言されても困るよな!」


なるべく明るく、ふるまおうと思った。

そうすれば南もきっと気にならないだろうし

あたしも、そっちのほうが楽やし


「あんな、こうやって南に宣言せんとあたし好きなのやめれんくて」

「・・・なんやそれ」

「色々南に迷惑かけるかもしれんし」

「・・・」

「・・・でな、気ぃ悪くせんで聞いてほしいんやけど」

「なに?」

「明日から、南と口きくの止める」

「は?」

「あたし、南と喋ったらあかんねん」

「あかんて・・・なにがや」

「わかるやろ!好きなんやもん!喋ったら、好きなのやめられんから」


顔が赤い。

決別宣言してんのに、好き好き言いすぎやろあたし

握った手を一瞬緩めてしまった。

気が緩んで、目に涙がうっすら浮かぶ。

今泣いたらあかん。

もう少し。



「ごめんな南。噂、嫌やろ?」

「オレは別に・・・」

「きっと、すぐなくなると思うねん!」


あはは、とわざとらしく笑って南を見る。

南は笑ってなかった。

じっ、とあたしのほう見据えて口を開いた。


「なんやねん、それ」

「え・・・」

「そんなんで、オレが納得すると思てんのか」

「・・・な、納得って・・・何・・・」


南の言ってる意味がわからなくて、聞き返す。

が、少し遠くから人の声が聞こえた。



(あかん、うちの生徒やったらまたなんか噂がたって面倒なことになる!)



「あ、の!あんな、あたし用事あんの思い出してん!」

「は!?オレの話終わってないやろ!」

「いや、もうめっちゃ急ぐねん!せやからあたし行くわ!」


地面に置いていた鞄をつかんで、南に背を向ける。

南が後ろでなんか叫んでたけど

振り向かない。

走って走って走って

南の声が届くなるところまで早く行かないと!





































まだ泣かへんもん!



家に帰り着くまで絶対に泣くもんか!!!







































(あたしが死んだらちゃんと墓参り来てや)
(!?おまっいきなり何言いだすねん!?)
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