リセットボタンが欲しい今日この頃。






降 っ て も  晴 れ て も






南からの返事が来たかと思って喜んで開いたメール。

が、

送信者を見てがっくり肩を落とす。






「・・・どないしたん」

「岸本からメール着た」

「・・・ああ、そら落ち込むな」


別に岸本から悪いわけやないねんけど

このタイミングはあかんやろ。

つうか


『飯食ったら、屋上来い』


なんやのこの命令形なメール。

ちょっと行くの放棄してやろうかと思うたけど

一応、行くことにした。


(次、体育やし)


別に体育が嫌いなわけじゃなくて、むしろ好きやけど

今日の体育はバスケで、嫌でもバスケしてる南を見てしまうことになるから

(今、カッコいい南見るのはきついし)

きっと女子に声援を浴びるに違いない。

なんか、それも見たくなかった。



「りぃちゃん、みっちゃん。次あたしサボるから適当に言うてて」

そう言って、2人に手を振って教室の出口に向かう。

が、一瞬足を止めて、ちらっと目は南を捜す。

まだ、学食から帰って来てへんかな・・・

いつ、何をしてても南が気になって仕方がない。

目でも合えば一目散に逃げ出すに決まってんのに


(なんや矛盾してんなぁあたし・・・)


そんなことを思いながら、結局南を見つけられなくて

小さくため息をついて教室を出た。
































***




























屋上に着いて、ドアを開ける。

大きな風が吹いて、髪の毛が揺れる。

それを押さえながらは屋上へ入り岸本を捜す。


「」

後ろかの方から、声をかけられて振り向く。

岸本が手招きをしていた。


「岸本なんなん?呼び出して」

「まぁ、ちょ座れや」


そう言って、岸本が床に手を置く。

は黙って、そこに座った。


しばらく、沈黙。


この沈黙の意味がわからなくて、口を開こうとした時に

先に、岸本が口を開いた。


「なぁ、お前まだ南好きなん?」

「・・・へ?」

「だから、諦めたんか?」

「・・・や、まぁ、正直諦め切れてへんけど」

「お前、なんで振られたん?」

「は、はぁ!?な、なんでそんなん言わなあかんの!?」

「ええから言え」

「・・・っ、だから・・・」

「おぉ」

「・・・なんか、付き合うとかあんま考えられへん、て」

「そぉか」



人の傷口えぐって、岸本はまた黙った。

なんやねん!!人の言いたないことほじくり返して!


「ちょ、岸本!いったいなんやの?」

「お前、南に彼女おったん知ってるか?」

「・・・え?」

「前っつても中学ん時やけど、知らんよな?」

「・・・知、らない・・・」

「あんまり、ええ別れ方せぇへんくて」

「・・・ええ別れ方・・・?」

「ああ、南は、今もそれ引きずってんちゃうかって思うねん」

「・・・そう、やったんや」


さっきまでの怒りはどこへやら、

いきなりの話にただびっくりして、何も言えへんかった。

ていうか・・・


「・・・なんで、それあたしに言うたん?」

「には、言ってもええかな思うて」

「え?」

「お前は、まだ諦めてへんやろうなって思うてたから」

「・・・まぁ、おっしゃる通りで」

「お前自身があかんわけやないっつーのを教えといてやろか思うてな」

「・・・もしかして、励ましてくれてんの?」

「励ますっつーか・・・まぁ、どうとでも思うてくれ」


岸本が、あたしから顔をそむける。

もしかして、照れてんの?!

にやにやしながら、岸本をバシバシと叩く。

岸本は叩くあたしに痛いと文句を言いながら

あたしのパンチを受け止める。


「っはー、南も意外にめんどくさいねんな」

「・・・そんな奴を好きになったお前が悪い」

「あはは、せやな」


なんか、落ち込んでしまいそうやったけど

岸本と馬鹿な話してたら、そんな気持ちもどこか行ってしまって

とりあえず、がんばろうって思った。


あたしはまだまだ、君を追いかけます南くん。

































と、思てたのに。































「!」

体育が終わって、教室に帰る。

すると、みっちゃんが走ってこちらにやってきた。

「あ、みっちゃん。バスケどやった?」

「それどころやないねん、ちょっと面倒くさいことになってんで!」

「は?面倒くさい?」

そのみっちゃんの話を聞こうとした時、後ろから肩を叩かれた。

見ると、隣のクラスの子で

顔は見たことある。くらいの認識の子2人やった。


「なぁ、さん南に告ったって聞いたんやけど」

「・・・・・・へ・・・?」

「昨日、現場見たって言う子がおって」

「ホンマなん?」




・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・現場って









やっぱりあの公園は選択ミスやったか・・・!!









「・・・えー、と・・・」

なんて返事をしたらええのかわからなくて、しどろもどろになっていると

いつの間にか次の授業の予礼が鳴っていたようで

先生に声をかけられた。

2人の女の子は慌てて教室に戻って行き、あたしもみっちゃんと教室に入る。


先生に、何か言われたけど

先生のお言葉は右から左へ。

頭の中は、さっき言われたあのことばかり。








『現場、見た子がおんねんけど』








・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・


最悪や。

バレへんように奥のベンチまで行ったんやけど

甘かった・・・


岸本を盾にして。


席に座って頭を抱える。



さっきまでのテンションはもうガタ落ち。

変な噂が流れたら、きっと南にも迷惑かけるし

好きで居続けるという、気持ちを手放してしまいそうになる。



ていうか



このまま行くと、好きでいんのは迷惑でしかないんじゃ・・・?



ぐるぐると回るマイナスな思考。


どうしよう、どうしよう



南に迷惑掛けるのだけは



それだけは避けたい。







その時、思いついたのは



今日の昼休みとは正反対な考え。















***













































授業が終わって、HRも終わった瞬間

誰にも捕まらないように、誰よりも先に教室を出た。

りぃちゃんに呼ばれた気がしたけど

心の中でごめんと呟いて走った。














「はぁ・・・」

とりあえず、学校を出れば大丈夫やろ

と、いうことで例の公園に来た。

どうもあたしはここが好きらしい。




「あーあ・・・」




小さく呟いて、ブランコに乗る。

今日はもうどうでもええわ!って気分になって

立ち漕ぎでぐんぐん勢いをつける。




どうしよう

どうしよう

あーもうどうしよう!!!




南を好きでいたい。

またちょっとづつ喋れるようになって

昔の彼女のことも忘れて

それでまた

少しづつでもあたしを見てくれるようになったら


そう、思てたのに





(あの、噂はあかんわ・・・)





ただでさえ、南は有名なのに

きっと噂も変な風に流れていくに決まってる



告白したのも

この公園を選んだのも

全部、あたしやし

全部、あたしのせいやから

あたしが、なんとかせな・・・


























「!」









































どきり、心臓が跳ねる

というかもう身体全部が跳ねる。


この、声に反応する。





ブランコの勢いを止めて、ブランコから降りる。

そしてゆっくりと、呼ばれたほうに振り向いた。











「・・・みなみ・・・」














この、タイミングは



きっと神様が仕組んだに違いない。






























(なんでこんな連日緊張せなあかんの!?)

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