この瞬間に 緊張しない人なんてこの世にいるんだろうか。 降 っ て も 晴 れ て も 『南、今どこおる? 時間あったら学校の近くの公園に来てほしいんやけど』 震える手で、平然を装って打ったメール。 平然装ったってしゃーないねんけど なんの強がりか自分でもわからん。 けど 「!!」 手の中で携帯が鳴った時は、体全部が跳ねた気がした。 今日の屋上からの眺めは素晴らしくキレイやけど それどころではないあたしの心は今、この携帯に着たメールのことでいっぱい。 「・・・メール、誰からや?」 隣にいた岸本が、緊張した声であたしに聞いてくる。 携帯を開けて、差出人の名前を見る。 「・・・南」 こんなに早く返事くれへんでもええのに・・・! もっと心の準備がほしかった・・・ (まぁ、返事がこんかったらこんかったできっとイライラしてたと思うけど) メールを開いて、届いた文章を読む。 文章、というほどの内容はなかったけれど。 「・・・南、なんやて?」 「15分で来れるって」 「俺、ついて行こか」 「あはは、平気やって。あとでメールするわ」 笑って、岸本の方を向く。 でも岸本は笑ってへんくて、あたしが無理してんのバレてんのやろな 「じゃあ行ってくる!」 「、がんばれよ!」 走り去るあたしの後ろで岸本が声をかけてくれた。 あたしは無言で大きく手を振って返した。 *** あかん。失敗したわコレ。 待ち合わせ場所に選んだ、学校の近くの公園。 わかりやすいかなって思て特になにも考えずにこの場所にしたんやけど (公園に人がいないのはええとして・・・) 公園の近くの人通りはほとんどうちの学校の生徒。 南と一緒にいる所なんて見られたら何言われるかわからんな・・・ しかも告白シーンとか・・・! さらに振られるとことか見られたらもう恰好の噂のネタやんか!!! てか振られるとか何自分で言うてんのあたし! 人の通りから見え難いベンチを選んで そこに腰かけて南を待つ間、いろんな事が頭を駆け巡って 回りから見たらただの変な人の様に頭を抱えてうなだれる。 (あー・・・もう2時間くらい待ってる気ぃすんのに2分しか経ってへん・・・) 緊張しているときの待ち時間が長いったらない。 携帯は手に握り締めたまま、ちらちらと時計を見る。 心臓の音がすごく聞こえる。 こんなおっきい音で、鳴ってたっけ? なんて色んなことを考えてたら、時間がそこそこ過ぎていて でもじっと待っているのも限界で 目の前にあった、ブランコに乗った。 少しずつ勢いをつけてブランコを漕ぐ。 ホントは立って漕ぎたかったけど、パンツ見えるしな。 なかなかの勢いがつき始めたブランコ。 (ブランコちょっと楽しい・・・) ちょっと楽しくなって、少しだけあの追い詰められた気持ちから解放された。 漕いで、高い位置まで行くと日が落ちるの所が少しだけ見えた。 もう今で何分たったんかな? 携帯を手放してから、時間はもう見ていない。 時間の感覚も麻痺っててよくわからへんし。 このまま南が来なかったら、なんて考えてたら 「!」 声がした。 南 の。 「あ、」 なんかすごい息が切れてる。 南走って来たんかな。 「悪い、待たせたな」 「いや、全然!こっちこそ呼び出してごめんな」 南がベンチの近くまで来たから ブランコから降りて、あたしもベンチの前に立った。 そして沈黙。 せやな、あたしが喋らな誰が喋るんやって話やんな。 「あー・・・あの、ですね」 なぜか、敬語。 別に敬語で喋ろうとか思うてないんやけど、なんや上手く喋れない。 「おぉ」 南が小さく返事を返してくれる。 それだけでもう胸がきゅうってなって嬉しくって 今から言おうとしている言葉をためらってしまう。 (いや、言わなあかんよな。だってもう南は知ってんねんから) 息を吐いて、また吸って 意を決して、口を開く。 「南」 「あんな、あたし南が好きやねん」 ずっと、あたしの中で四六時中ぐるぐる回っていた言葉を吐きだす。 心臓は相変わらずばくばく鳴っていたけど 気持ちは割とすっとした。 目は、ずっと南を見据えたまま。 南は少し驚いたような顔をした・・・ように見えた。 (うん、ほんまわかりにくい・・・) 南は視線をあたしから外して、黙る。 さっきまでのすっとした気持ちはあっという間にまた重くなって 沈黙が続けば続くほど、あたしもまっすぐ南の方を見れなくなってうつむく。 南は、何を考えてんのやろ? あたしのことを、考えてくれてるんやろか? それとも、どうやって断ろうかとか・・・考えてるんかな。 「・・・」 「は、はい!?」 あまりの沈黙の長さに耐えきれず明後日の方向を向いていて 名前を呼ばれた瞬間びっくりして声が裏返った。 「んん、ごめん」 「や、。あのな」 「・・・う・・・うん・・・」 一言づつゆっくりと南が続ける。 あたしはその言葉に返事をする。 「お前のことが、嫌いっちゅーことやないねん」 「・・・うん」 「でもな」 「・・・・・・うん」 「今、なんか付き合う、とか」 「・・・・・・ん」 「あんま、考えられへんねん」 「うん」 「・・・せやから」 「うん!」 きっと、「ごめんな」と続くはずだったであろう南の言葉を遮って 少し大きな声で返事をして、その場に立ち上がる。 南はいきなり立ち上がったあたしを見上げる。 「うん。南、ごめんな言いにくいこと言わせて」 「いや、」 にこ、笑って南の方を向く。 たぶん、 笑えてるはずや。 たぶん。 「えーと、じゃあ明日からまたクラスメイトってことで頼むわ!」 置いていた鞄を掴む。 そして 「ごめんけど、先に行くな」 「・・・」 「じゃあね!」 鞄を抱きかかえて、その場から走り去る。 なんか南が呼んでた気がしたけど 多分気のせいや だって だって、あたしを今呼ぶはずがないやん 別に 別に知ってた 振られるのなんか知ってたし! だけど それでもやっぱり振られたら泣きたなんねん!! (ぎじも゛どーーーーー!!!) (うわっおまっ電話越しでいきなり泣いてんな!) 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |