晴れの日もあれば、雨の日もあるのです。 降 っ て も 晴 れ て も 「今日の美術は写生やってー」 それぞれ、みんな筆記用具持って絵を描くために教室を出る。 あたしはりぃちゃんとみっちゃんと3人でうろうろ。 窓から入る日差しが気持よかったので、そのまま屋上へ行くことにした。 「あー気持いー!!今日めっちゃ天気ええなぁ」 ドアを開けた瞬間、日差しを浴びてみっちゃんが伸びをした。 太陽が気持よくて思わず眠ってしまいそうだ。 「てか写生とかさぼれって言ってるようなもんやんな?」 「あははは!わかるー」 あたしとみっちゃんが顔を見合せて笑う。 そんなあたしたち2人をよそに りぃちゃんは持ってきた画用紙をじっと見つめていた。 「・・・ここに1人めっちゃやる気の人おるけど」 「あたし美術好きやし」 そう言って、りぃちゃんはきょろきょろと周りを見渡した。 きっとどこの風景を描くか考えているんやと思う。 ちょっと、あたしも真面目にやろうかと画用紙に目を落とした瞬間 ぐい、と横にいたみっちゃんに腕を掴まれた。 「なぁ。聞こうと思うてたやけど」 元々近くにおったみっちゃんが、さらに顔を近づけてきた。 表情もどことなく怖い。 「・・・え、なに。てかみっちゃん顔近ない?」 「て、南と付き合うてんの?」 「はぁー?!いきなり何言うてんの?!」 気持ちが動転して、持っていた鉛筆やら消しゴムやら一気に落っことした。 この間の南のバスケしてる姿を見てから、さらに南が気になって もう南の話をしてるだけで動揺しっぱなし。 「付き合うてないの?」 「付き合うてないよ!何言うてんの!」 「・・・でも好きなんやな?」 「?!!」 りぃちゃんが、いつもの口調でさらっと絵を描きながら口を挟んできた。 あたしの顔が真っ赤になって、みっちゃんの顔に笑みが広がる。 「えーーーー!!!やっぱそうなんや!」 「ちょ、声でかっ!てか全体的にでかいて!!」 「誰も聞いてへんて。ていうか南かぁ」 「そんなしみじみ言わんといてよ」 「え、南のどこが好きなん?」 なぁなぁなぁなぁ、と噂話大好きなみっちゃんはあたしに食い下がる。 あたしは恥ずかしいやら、なんかテンションはあがるやらで顔が熱い。 そんな中でもりぃちゃんは黙々と絵を描き続けていた。 「えー・・・と・・・、どこって・・・」 さっきまで心地よかった日差しが今はじりじりと痛い。 というかもう全体的に熱い。 「だから、恋に落ちた瞬間!とかあるやろ?!」 「はぁ?!何それ!!」 いよいよ耳まで熱くなってきて、みっちゃんの視線にも耐えられなくて 持っていた画用紙を顔を隠した。 が、隠したってみっちゃんが諦めるはずもなく 腕を軽く揺さぶられて聞き出そうと必死。 これはもう、逃げられないなと半ば諦めて 顔を隠していた画用紙を少し下げて、口を開く。 「あー・・・3年になったばっかの時な」 「うんうん」 「クラス替えしたばっかで、最初みんなあんまり喋ってなかったやんか」 「ああ、みんなまだ慣れてへんかった時な」 「そーそー。でなあたしクラスになじむの最初遅くて」 「ああ。今じゃもう全然なじんでんのにな」 「まだ友達とか出来てなかったときに小銭入れ失くしてん」 「え、いつ?!てかどこに?」 「音楽室。帰りにジュース買って帰ろ思てて、 そしたら小銭入れなくなってて・・・」 「マジで?!知らんかった!!」 「昼休みに1人で音楽室でずっと小銭入れ探しててん」 「えーなんかごめんな」 「あはは、別にそれはええんやけど。 その時に音楽室の前通りかかった南が一緒に探してくれてん」 「へぇ、意外」 「やろ?あたしも南怖いと思てたから、びっくりしたんやけど」 いつでも思い出せる。 南との一番最初の記憶。 1人で心細くて、一緒に探してもらってどれだけ嬉しかったか。 「そんで、南に惚れた、と」 「あー恥ずかしい!!あかん!ちょ、みっちゃんもなんかネタないん?!」 恥ずかしさのあまり、みっちゃんをばしばしと叩く。 みっちゃんは「ごちそうさまー」とか言うてあたしを茶化す。 きゃーきゃー言うてるあたしたちに、りぃちゃんがまたポツリと突っ込んだ。 「・・・今日絵の下書きまで終わらなかったら補習らしいで?」 「「!!」」 その一言であたしとみっちゃんは画用紙と向き合った。 美術が終わって、そのままHRをしてその日一日が終了。 ちょっと南と喋りろうかなーと意気込んでいた時に 手に持っていた携帯が震えた。 「?」 メールを開くと、送信者は岸本。 大至急廊下に出て来いみたいなコトが書いてあって 正直意味がわからんかったけど 仕方がない。 「南、また明日な」 挨拶くらいはええやろ。 南の方を向いて、声をかける。 小さく返事が来たけど、目は合わなかった。 なんか少し違和感を感じたけど、 いつも南はこんなもんかな?と思いつつ、廊下に出た。 出た瞬間に、岸本が寄ってきた。 「あ、岸本。なんか用?」 「ちょ、こっち来い!」 「へ?」 何も聞き返す間もなく、岸本がすたすたと歩き出す。 意味もわからずそれに着いて行くしかなくて 着いたところは屋上だった。 「どーしたん岸本?なんか作戦会議すんの?」 「・・・お前さっき、美術んときここおったやろ?」 「へ?ああ、さっき屋上で絵描いてたけど」 「単刀直入に言うぞ」 「だから何なん?」 「俺らもさっき、ここおってん」 ・・・・・・・・・俺、ら? 「・・・お前らが入って来る前から、反対側におったんや」 「ちょ、ちょっと・・・俺、らって・・・もしかせんでも・・・」 「俺と、南や」 「・・・マジで・・・っ」 「マジや」 「ってか、えーーー!?ちょ、え?!うそぉ!??え、えぇぇーーー?!」 叫ばずにはいられない。 だって、ここにウチらが居た時に南が居ったってことは 「・・・話、聞いて、た?」 「・・・まぁ、ほぼ筒抜けや」 「マジで・・・!」 さっき帰りに目ぇ合わしてもらえんかったのって 偶然ちゃうよな?!明らかに意識されてたよな?! てかその意識もいい意味なんか悪い意味なんかわからん! 「ちょっと!!もう超気まずいやんか!!」 「俺かて気まずかったわ!!」 「・・・反応、どんなやった?」 「正直、わからん」 「役立たず!!」 「うっさいわ!南の表情読むんがどんだけ難しいかわかってんのか?!」 「・・・確かに、わからんかも・・・」 「やろ?」 「いや、でもそれにしたって・・・」 はぁ、と大きく息を吐く。 今はまだ全然メールするとか、学校来て喋るとか そんなレベルで十分だったのに・・・! なんやこの予想外な展開!! 「おい、、大丈夫か」 「・・・もうこうなったらしゃーないな」 「は?」 「もうこうなったら、言うしかないやろ」 「ちょ、本気か!?」 「どのみち気まずいんやったら言うしかないやろ」 「・・・すげぇ前向きやなお前」 「前向きに考えなやってられんわ」 ぎゅう、と手を握る。 本当は どうしていいかわからんくらい混乱してるけど だけど、言わないと。 知らないふりなんて、できへんし 当たって砕けろとは、今まさにこのことかと ちらり、頭をかすめて 震える手で、南にメールを打った。 (は!?ちょ、お前今から南に言う気か!?) (だってこんな状態で明日まで耐えられへんもん!!) 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |