全部全部全部 全部「私のせい」になればいい。 降 っ て も 晴 れ て も 「ちょ、人多っ!」 おととい、見事に南のメルアドをゲットして ウザがられない程度に慎重に、南とメールのやり取りをした。 そして今日、体育館に来た理由は 昨日の、一つのメール。 ”明日、俺部活出るで“ 夏が終わってさくっと勉強に切り替えた南が 部活に行くなんて何ヶ月ぶり?というくらい久しぶりで これはもう、見に行くしかない!!! と、昨日の夜から楽しみに楽しみにして放課後を待った。 授業が終わり、友達のりぃちゃん(notバスケファン)を説得してたら 南も岸本も行ってしまって、急いで体育館に来てみたら あまりの人の多さに思わず声をあげてしまった。 「部活の見学になんやのこの人の多さ!アホくさ!なぁりぃちゃん!」 「いや、あんたも仲間やろ」 横でさらっと言い放つりぃちゃんは 美人やのに、みんなが言いにくいことを言ってのける。 今まさにあたしにもりぃちゃんの言葉の矢がぐさりと刺さった。 が、あえて聞いてない振りをして私はそのまま呟いた。 「・・・まさかこれみんな南を見に来てんのとちゃうやろな・・・」 ぐるり、体育館を見渡す。 そんなにしょっちゅうバスケ部見に来ていたわけやないけど (ホントは毎日でも来たかったんやけどなんか恥ずかしくて!?) 「・・・2人くらい岸本見に来てんちゃう?」 私のつぶやきのフォローなのか ただ単に岸本への嫌がらせなのか、りぃちゃんが返事をくれた。 (てか2人てリアルな数字やな) 2階を見れば女の子たちのグループが、あちこちでこそこそと話をしたり 1階にいる女の子たちは南が自分たちの方を見れば歓声があがり手を振っていた。 入り口の隅の方にいるのは1年生だろうか、 あまり目立たずにこそこそと中の様子を何人かで伺っている。 「なぁ、」 「ん?」 「あれもバスケ部見に来てんの?」 とりあえず見た目ヤンキーな男たちが 「岸本ー!」「南ぃー!!」と叫びながら盛り上がっている。 りぃちゃんはそれの団体に冷たい視線を浴びせていた。 まぁ、あたしもどちらかと言えば苦手やけど・・・ 「あれもバスケ部の応援団やねん」 「へー・・・あんたの敵て女の子だけやないねんな」 「は!?どーいう意味!?」 「え、あいつらもファンやねんやろ?」 「そーやけど・・・えー・・・あいつらがライバルとか嫌やわ」 あたしもりぃちゃん同様冷たい目で 無駄に盛り上がっているその応援団を眺めた。 すると、わぁ、と歓声が上がって目線をコートに戻す。 試合が始まるのかと思てたら、目の前にいたのはあの男。 「・・・何してんねん岸本」 「冷たっ、ちょ、今の歓声聞いたやろ?!俺も人気者やねんぞ?」 「え!今の歓声岸本の?マジで!?」 「お前本間俺には興味ないねんな」 「はは、ごめん」 そう言って笑ったら、岸本が軽く頭にチョップをかましてきた。 そして、隣にいたりぃちゃんに目線を移す。 「おお、リコちゃんも見に来てくれたん?」 「馴れ馴れしいわアンタ」 「相変わらず美人なのにきっついな」 「ほら、南出てきたで岸本もはよ行きや」 「え!?どこ!?南どこ!?」 「・・・見てろよお前ら」 捨て台詞を吐いて、岸本がコートの真ん中に戻っていった。 そこには、Tシャツ姿の南の姿があって あたしの視界は、もう南しか捕らえていなかった。 バスケ部員は体育館内で走り込みを始めた。 先頭はもちろん南。その隣?後ろ?に岸本。 部活は夏で引退したはずなのに、走る速度は衰えず ずっと同じペースで走り続けた。 (・・・自主練とか、しとったんかな・・・?) そんなことをぼんやりと思いながら、 ただ、走っているだけの南を見て軽く目眩さえ憶える。 かっこいい、とかだけやなくて・・・ 走り込みを終えて、 1年から3年でチームわけをして試合が始まった。 ホイッスルが響きわたって、みんなが一斉に動き出す。 その早い動きにただただ必死に南を目で追った。 ドリブルして駆け抜けていけば、手に力が籠もる。 パスをすれば、パスした相手に一度目がいってやっぱり南に戻る。 シュートを決めれば、やった、と小さく声をあげる。 どれも、本間にすごくって 上手いとか、ただそれだけやなくて (やっぱ気持ち籠もってるとダメや・・・) でも、ひいき目入ってたとしても それでも、やっぱり南が一番ええと思うてしまう。 大きな音でホイッスルの音が鳴って、わぁと大きな歓声があがる。 後輩たちは試合が終わると、 南と岸本の所に駆け寄ってお礼を1人づつ言うてた。 (ちゃんと、先輩してんねんなぁ) あたしはというと、試合が終わって息を大きく吐いた。 まだ心臓のドキドキが収まらない。 そのドキドキの原因は、今駆け寄ってきた後輩たちに 笑顔を向けていた。 さっきとはまた違うその姿に、あたしの心臓は無駄に反応する。 「」 「へ、え、りぃちゃん、なに?」 「いや・・・なんやボーっとしてるから」 「はは、だいじょー・・・ぶ」 ふぅ、とまた小さく息を吐いた。 すると、ちょっと離れた所にいる女の子たちが大きく歓声をあげた。 あたしは声を上げるどころか、息を吸うことも少しの間忘れていた。 「」 目の前に南。 今、まさに、見とれていたその人物が。 「みっ・・・!」 「見に来てたんやな」 「えっ・・・や!当たり前やんか!」 「最初おらんかったから、帰ったかと思た」 「や、それはりぃちゃんを説得すんのに時間かかって・・・」 ちら、りぃちゃんの方を見ると無言でこっちを見ていた。 ばっちり目が合って、すぐに口を押さえたけど遅かった・・・。 「え、えと!南!バスケ楽しかった?」 「おお、見ててわからんかったか?」 「はは、めっちゃ楽しそうやったなぁ」 とりあえず話を変えようと、南に話を振る。 その時、気付いた。 バスケの話をするときの南はすごく表情が柔らかい。 本当にバスケが好きなんやなって思った。 「てか、なんで今日部活出よう思たん?」 何気なく、思ったこと。 とくに深く考えずに思いついた質問。 でも聞いた瞬間に南が少し驚いたような顔をした。 そして、少し間を置いてゆっくりと口を開いた。 「・・・お前が・・・」 「あたし?」 「・・・お前が昨日メールで、」 「メール??」 南にしては、歯切れが悪い。 あたしは聞き出そうと必死になって南に食い下がる。 南は口元を隠して、目線をあたしから外した。 「なぁ、南・・・めっちゃ気になるんやけど」 「せやから、」 言葉を少し区切って 相変わらず視線はあたしから外れたままでなんか地面を向いている。 諦めたように、小さな声でぼそぼそと喋りだした。 「メールで、バスケ見たい言うたやろ」 ・・・バスケの話をメールでしたのは、確かメルアドをもらった一昨日。 南=バスケというイメージで、バスケの話を憶えている。 が それと、今日のと何が結びつくんやろ? なんて考えてたら、思いもよらない言葉が返ってきた。 「お前がバスケしてるとこ見たいとか言うから、したなったんじゃボケ」 えええええ!? 何やそれ! 「南先輩!」 少し遠くから、南を呼ぶ声が聞こえて 南は「おお」と小さく呼ばれた声に返事をして手をあげた。 そしてこちらに向き直り、南は「じゃあな」と小さな声で呟いて走って行った。 あたしはというと 「りぃちゃん」 「、大丈夫?」 「・・・あたし、絶対今日寿命縮んだ気ぃするわ」 「あー縮んだんちゃう?」 「え!?なんで!?」 「・・・だって顔の色やばいで?」 今までにないくらいに 赤い顔。 これが恋をしている証なのです。 「よかったな」って言うてくれたりぃちゃんの一言に ふわふわな私は、さらに舞い上がってしまった。 (おい!ちゃんと俺の活躍見とったか!?) (ちょ、岸本うっさ!今浸ってんねんから出てこんといて!)(ひどっ!) 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |