周りから見たら笑っちゃうかもしれないけど 私にとっては一大事! 降 っ て も 晴 れ て も 「・・・っはー」 「おまっ、さっきから人の顔見てため息つくなや!」 ドーナツをかじって、ちら、と向かい合って座っている 岸本の顔を見る。そして出るため息。 「何が悲しくて岸本とお茶せなあかんの?」 「俺に言うな。つーかもちょっとお前俺に気ぃ使えや」 さかのぼる事30分前。 「みなみー今日帰りドーナツ食べに行かへん?」 「今日図書館行くけど」 「じゃ、その前の腹ごしらえってことで。岸本も呼ぶし」 「あー先生に呼ばれてるから、先行っとけ」 「うん!ほな先行って待ってるわ!はよ来てな!」 一緒に放課後お茶しよう作戦。 岸本使て、一緒にお茶してさらに・・・ 「ええか、さりげなく俺がメルアドの話持ち出すから お前自分で聞けよ」 「わかった!絶対聞き出す!」 もう一つの作戦。 南のメールアドレスをゲットしよう! いつも聞くタイミングを逃して 毎日南とメールする妄想にもう耐えられなくて 岸本経由で聞いてもむなしいし、なんや意味ないし・・・ それで岸本に相談してみたら、協力してくれることになり 本日、作戦決行となった。 (最近、岸本はすっかり南話相談相手やなぁ・・・) 一つのドーナツをもじもじと食べながら 南が来ないかとキョロキョロして時間を過ごした。 が その時、私をどん底に落とすメールが岸本に届いた。 「・・・」 「何?あ、メール南からやった?」 「・・・あー、まぁ、南からなんやけど」 「! もう来るて?」 がばっ、と身を乗り出して岸本の手から携帯を引ったくる。 岸本が小さく悪態を付いたのが聞こえたけど 気にせず、携帯の画面を見た。 ”すまん、今日そっち行けなくなった“ 「・・・えーーーーーーーーーーーーーーー!!!?」 「うるさっ!ちょ!声でか!!」 「ちょ、岸本!どーいうことなんこれ!?」 「俺が知るわけないやろ!」 「えぇーありえへん・・・」 一気にテンションは急降下。 がつん、と大きな音を立てて岸本の携帯をテーブルに落として そのまま、はテーブルにうずくまった。 「・・・おい・・・、?大丈夫かお前」 「・・・あかん、もう本間がっかりや」 携帯を引ったくって、さらにテーブルに落っことすという 最悪なことをしでかした私に、岸本が心配そうに声を掛けてきた。 案外ええヤツやったんやな岸本。 これが、30分前の出来事。 今はもうドーナツ6個目。やけ食いに近い。 「・・・岸本、ごめんなー」 「あ?何がや」 「岸本、甘いもの嫌いやなかった?」 「や、別に食えへんほどやないし」 「はー・・・なんか・・・気持ち悪なってきた・・・」 「お前食い過ぎや。つうかそない落ち込むなや」 「めっちゃ気合い入れて来てんねんで?そら落ち込むっつーの」 「・・・明日も会えんねんからそんな気ぃ落とすなや」 「・・・んー・・・」 「・・・ここ俺が奢ったるから」 「え!まじで!?」 「・・・元気やんけ」 放課後南とお茶しよう&メールアドレスゲット作戦失敗。 ショックのあまり、晩御飯は食べられへんでした。 (まぁドーナツ7個食べたしな)(結局奢ってもろたし) 次の日、いつもどうり学校へ行く。 私の隣の席にはすでに南の姿が。 (なんか、なんや・・・緊張する・・・) ゆっくりと、自分の席へ近づいてそっと机に鞄を置いた。 ちら、南の方を向いたら 「」 ばっちり目が合うて、さらに名前を呼ばれてしまった。 あの目力はなんとかならへんのやろか。 目が合っただけで心臓がドキリと跳ねる。 「あー・・・お、はよ」 「おう、昨日悪かったな」 「え!?あ、あーいやいや!気にせんで!!」 「昨日な、お前にも詫び入れよ思たんやけど」 「詫び?」 「せやけど、俺お前のメルアド知らんかってん」 「え!メルアド?」 「おー、教えといてくれへん?」 「よ・・・」 「よ?」 「喜んで!!」 「居酒屋か」 自分の携帯を南の携帯へ向ける。 赤外線通信で私のアドレスが南の携帯へ。 携帯を持つ手が震える。 私の携帯が送信終了の画面になった。 「お、着た」 「あ、あたしも・・・!」 と、携帯を赤外線受信に設定しようとしたその時 教室に入ってきた先生によって中断せざる終えなかった。 「はい、席につけー」 南が先生に気付いて、携帯を閉めて前に向き直った。 あたしはと言うと・・・ 携帯を握りしめて、がつん、と音をたてて机に突っ伏した。 (・・・あああああ!ちょ!ありえへん!アドレス!南のアドレス!!!) ものすごい音に周りから小さくざわめきが聞こえた。 が、そんなもん気にならん・・・ 昨日からなんやねんなこのタイミングの悪さ! 南が、あたしの、アドレス知ってても意味ないねん! あたしからメールせんと南からメール来るなんてこと 絶対に滅多にありえることやないし・・・ (ここでまた南にメルアド自分から聞けたら苦労せんっちゅーねん!) あと一歩という所で逃した南のメールアドレス もう悔しいやら悲しいやら ぎゅっと目を瞑って、うっすらと涙すら浮かんできたとき 手の中の携帯が小さく震えた。 「?」 顔をあげて、手の中の携帯を机の下に隠しながら 着ていたメールを開く。 そこには見たことのないメールアドレスからのメール。 そして “頭、痛ない?” の一言。 がば!と顔をあげて 期待を込めて隣の、好きな人を見た。 「・・・み、なみ?」 小さく、呟く。 こちらを向いていた南は自分の額を指さして 「だいじょぶか?」 と、口ぱくで言った。 「え、あ・・・!」 ぱっ、と額を手で隠す。 気付いたらHRが終わっていて 先生が出て行った。 あたしは額を押さえたまま そのまま動けずにいると 私のほうを見ていた南が小さく笑った。 「それ」 「へ?」 「俺のアドレス」 「・・・あ!」 「登録しといてな」 携帯を握りしめて、画面と南を交互に見る。 手はやっぱり小さく震えたままだったのを 南にばれないように必死に隠した。 「よ、・・・喜んで!」 「居酒屋か」 「おい、!」 「あー?岸本なにー?ちょ今忙しいんやけど」 「そんなん後でええやんけ!」 「は?ちょ、ノート返して!」 「次の作戦考えてきてん」 「作戦?」 「南のアドレス聞き出すんやろ?次はお前奢れよ!」 「ん、」 息巻いてやってきた岸本の目の前に携帯を突き出す。 画面は 南 烈のアドレス。 満面の笑みのあたしと なんとも悔しそうな岸本の顔。 (俺ドーナツ奢っただけやんけ!)(ごちそうさまでした。) 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 → |