言ってしまったら最後。もう君は僕のもの






どうしてか、君なんだ






「…ちゃんご機嫌だね?」

「あ、仙道君おはよー!」


一目見て分かる。
ものすごくテンションが高くてよく笑う。
今の「おはよう」と言ったときの笑顔もものすごく輝いていた。


「なんかあったの?」

「えー?えへへへへへ」

「あーあったんだね」

「最近ね、宏明が怒らないの。しかも昨日はお弁当美味しいって言ったの!」

「…ふぅん?」

「今日も張り切って作っちゃった」

「オレにも作ってきてよ」

「ふふ、気が向いたらね」


チャイムが鳴って、先生が教室へ来た。
あ、黙っていましたが
オレとちゃん同じクラスで席が前後ろなんだよね。
後ろからちゃんをじっ、と眺める。
楽しそうにペンを回して授業を聞いてた。


…こないだ越野を煽った甲斐があったかな。

























「越野、最近あの子と仲いいじゃん」

「…………」

大して喋ったことのないやつに話しかけられた。
シカトしよーかと思ったけど、ずっとこっち見るから
めんどくさそうに口を開いた。


「…あの子ってのこと?」

「そーそー、何、ついに付き合うの?」


余計なお世話だ。
つうかお前になにか関係あるのか。
そのニヤニヤした顔がむかつく。


「いや、別に付き合ってないけど」


「へぇ?つうかあんだけ尽くされてたらぶっちゃけ悪い気しねぇだろ?」


「…は?」


「手ぇ出しちゃえばいいじゃん。見ててなんか勿体ねぇなと思ってたんだよね」


「……何、言ってんのお前」


「やるだけやっちまえっつってんだよ。女の子も喜ぶしさ」





…やべぇ


気持ち悪いくらい腹が立ってきた。


































「…ふざけんな」

「は?」

一呼吸置いて、また息を吸う。
そして、机をガツン、と一発殴った。
大きな音が響き渡ってみんながいっせいにこっちを向いた。





でも、そんなことブチ切れすぎて気にもならない。





がっ、ジリジリ痛い机を殴ったほうの手を男の胸倉を掴んだ
これでもかっつーからいガンを飛ばす。


「勝手なこと言ってんな」



「オレはそんな気一切ねぇよ!!」」



怒鳴り散らして、突き飛ばして、教室を出た。
腹が立つ。なんだあいつ。

なんか、を汚された気がしてものすごく腹が立った。






(…意外と独占欲が強いのか?オレ)






なんて思いながらテクテクと廊下を歩く。
なんとなく顔をあげたその先には呆然と立ち尽くしたの姿があった。
一気に気持ちが晴れやかになって、自分の気持ちに気づく。



(あーなんか…あいつ見ると和む…)



声をかけようとしたとき、ふと気づいた


「…お前、何泣いてんだ?」

「………しってた、けど…」

「…何、どした」

「宏明があたしのコト好きじゃないのも、付き合う気がないのも知ってたけど」

「…は!!? てかお前…え!さっきの聞こえた!?」

「最近なんか…宏明優しくてあたし調子に乗ってて…」

「ちょ、待て待てお前なんか勘違い…」

「…ごめ…頭冷やすから…!」



くるっ、と後ろを向いたそのままは走って言ってしまった。
越野はいうとその場にただただ立ち尽くすのみだった。


(ちょ…まて。違うんだけど…)

「オレはちゃんと見てたよ」

「!!!!」

「ちゃんはたぶん最後の所しか聞いてなかったんだろうねー」

「せ…せんど…」

「越野にしちゃ頑張ったと思ったんだけど、まだまだだね」

「最後のところって…」

「オレはそんな気一切ねぇよ、かな」

「いや待て!それは!あいつに軽々しく手を出すとかそーいう意味で!!!」

「その場に居たやつは、そう思うんじゃない?」

「…じゃあ…最後の所だけ聞こえた…は?」

「…ちゃんと、付き合う気、が一切ない…と思ったんじゃない?」

「…!! さいあくだ…」

「それでなくても、ちゃんはお前に好かれてるなんて思ってないんだよ」

「…どうすりゃいーんだよ」

「言うしかないだろ」

「何を」

「好きって」

「…………は…?」

「お前がちゃんに告白するしかないだろ?」


真面目な顔していたのかと思っていたら
仙道の顔はニヤニヤと笑っていた。

してやられたと思った。

でも、


オレもそれしかないのかと思っていたところで




覚悟を決めることにした。


































「…こねぇ」

昼休み。机で1人じっと座って待つ。
が、待てど暮らせどは来ない。

もう3日。の顔を見ていない。
短い休み時間、昼休み、放課後、体育館、帰り道
すべてに顔を出してきていたがあの日からぱったりと来なくなった。
仙道に聞いて、一応学校には来ているそうだがオレの話を一切しないという。
そんな話を聞くと、自分から会いにも行きづらい。



(…いい加減嫌われたか?)



ツケが回ってきたのだと思った。
いつも笑って付いて回る彼女を粗末に扱ってきたそのツケが。
教室の窓から見える空をぼーっと眺める。
屋上で毎日空の下でのお弁当を食べていたのを思い出す。
ちら、視線を机に落とすそこにはカフェオレと購買のパン。


(…の弁当が食いたい…)



























「…はぁ。つまらない…」

休み時間のたびに落ち着かない。
お弁当も渡しに行けないのに2個作ってしまう。




(あー…宏明に会いたいなぁ…)




「…ちゃん大丈夫?」

「仙道君…」

「なんか最近ほんと元気ないよ」

「やだなー元気だよ?あ、仙道君今日もお弁当食べてくれない?」

「…昨日も一昨日も貰ったし悪いな」

「いいんだよ。だって…余って捨てるだけだし…」

「越野のとこ行きなよ」

「……行けないよ」


明るく振舞っていたの顔が、越野の名前を出した瞬間に暗くなった。
仙道は、やっぱり、と呟いての頭を撫でる。


「ちゃんいつも頑張ってたのに、何してんの」

「…だって…なんかこないだのは効いたんだもん」

「…なんで?越野いつもあんなの言ってたじゃん」

「…最近ね、調子に乗ってたのあたし。優しくしてもらって」

「…越野元々冷たかった?」

「…そーいうんじゃなくて…なんか…勘違いしちゃって…」

声が詰まる。
涙を堪えてるのがわかる。
ずっと見てて、本当に越野がスキなのがわかる。

なんとかしてあげたいとホントに思ってた。

「それ、勘違いじゃないよ」

「へ…?」

「越野は、ちゃんのこと好きになってたんだよ」

「…うそだぁ…」

「ほんと、越野スキな子いじめちゃう奴だからさ
 好きなら優しくしろよってオレが言ったの」

「……好きなら、優しく?」

「そ、そしたらちゃんに優しくしたでしょ?」

「うん…やさしかった」


「じゃあやっぱり越野はちゃんのこと好きだったってことだよ」


「……ほんと、かな。あたしの勘違いじゃないのかな」

「うん、絶対勘違いじゃないと思うよ」

「…でも、こないだ教室で」

「ああ…ちゃん、あれ全部聞いてないでしょ?」

「…全部?」

「アレね、越野は…」

























***

























放課後
授業が終わり、みんなガタガタと席を立つ。
越野もゆっくりと席を立った。
そしてつい、いつものクセで廊下を見てしまう。
いつもこのタイミングでが来るからだ。


…今日もこねぇよな。


と、教室を出た瞬間


「宏明!!」


呼ばれて、振り返った。


「…」


「あの…っ…ひろあき…あたし…」


息を切らして、少し顔を赤くして、
やっと、会えた。


「好きだ!」

「へ!?」

「オレは!オレはのことが好きだ!!」

「ひろあき!?」


少し赤かったの顔はさらに赤くなった。
ずっと言おう言おうと心の中で唱えてた言葉
本人を前にして弾けてしまった。

近づいて、手を引いて、抱きしめて






「好きだ」







やっと いえた。





「…ッ…うぅ〜」

「…は!?!?何泣いてんだ!!!」

「だ…だってえぇーーー!!!!」

「え、つうかなんでお前今来たわけ!?怒ってたんだろ?」

「ひっ…ぅ…っ…それは…っせんどーくんが…っ」

「また仙道かよ…」

「…とりあえず色々聞きたいから、早く泣き止め」

「う…しばらく…むりぃぃ…」




抱きしめた腕の中で彼女が泣きじゃくる。

もーホントどうしたらいいのか分からなくて



短く、唇を落とす。




はピタリと泣き止み越野の方を見た。
越野はというと、顔を真っ赤にしてそっぽを向いていた。


「…宏明今…チューした?」

「わりぃか」

「…意外と手ぇ早いね越野」


後ろから声がして振り向く。

仙道が笑いながら真後ろに居た。

ぜんっぜん気が付かなかった…



「…見てたのか」

「見てたよ」

「…普通見ないフリしねぇ?」

「いやぁ、オレはしないね」

「仙道君!今ね!宏明がね!」


は、がば!と越野の腕から離れて仙道の方へ駆け寄る。

仙道も笑って近寄ってきたの頭を撫でる。


「ちゃんよかったね」

「うん!仙道君のおかげだよ!」

「ちょ!こら!近い!!」

「なんだよ越野。オレ達はオレ達で仲良しなんだよ」

「うるせーな!はもうオレのなんだよ!!」


















(越野意外と独占欲強いね。ちゃん止めるなら今だよ?)
(うるせーっつーの!もう絶対放さねぇし!)

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おだい