言ってしまえば、止まらない 君がいないのは耐えられない! 恋とはそういうものなのです 「あー…最悪だ」 暗い部屋に1人。 額には冷えピタ貼ってベッドに転がる私。 外は夜だというのにザワザワとしている。 (…夏祭りだもんなぁ…) 毎年ある近所のお祭り。 出店も多くて人も結構集まるし 何よりも花火が意外に豪華。 かかさずずっと行ってたのに… 今年はよりにもよって前日に熱が出るという大失態。 治りかけてはいるけれど、家から出してもらえるはずもなく チラ、と壁にかけている浴衣を見る。 友達と一緒に買ったばかりだった。 (浴衣…買ったのに…新しいの…) ああもう何度目だろうか、泣けてくる。 1番泣けてくる理由は他にあるのだけれど 右手に握り締めていた携帯を開く。 画面には差出人『藤真 健司』からのメール画面。 2件隣の幼馴染で毎年ちっちゃい時からずっっと一緒にお祭りに行っていた。 今年だって、友達と健司と健司の友達とかとみんなで行くつもりだったのに… (いつからかなぁ、2人で行かなくなったの) 付き合っているわけではないから、別に2人でなくても不満はなかった。 ただ一緒に、お店回って、花火見て、きれいだねって 言い合えればそれで毎年満足してたのに。 (つうか今健司と2人で祭りとか行ったらファンの子に殺されそう) モテモテだからなぁ… ホント、好きだけど彼女になんて絶対なれないし。 だからもう一緒に遊びにいけるこの祭りが唯一の楽しみだったのに!! 「うー…っ」 ああついに泣いてしまった。子供みたいだ。 だけど、たかが夏祭りなんだけど…! 「ー、お友達来たわよー」 下から聞こえてくる声。 涙を布団で拭きながら、もぞもぞと起き上がる。 「着替えるからーちょっと待ってっていってー」 「もうここ居るから着替えなくていーって」 「は!?」 ドアのすぐ前から声がした。 しかも女の子の声じゃない。 え、てゆーか今の声って…。 ガチャ、なんの返事もしていないのにドアが開いた。 そこにいたのはやっぱり 「健司!!?」 「おー風邪治ったか?」 「ていうか何入ってんの!?着替えてたらどうするの!」 「そりゃオレがラッキーなだけだろ」 「はぁー!?なにそれ!」 「とりあえず、ウケるから冷えピタ取れって」 「…はっ!」 ピリピリと冷えピタをはずす。 くっそー笑いこらえてんじゃねぇー!!! 「…ていうか、まだ花火始まってないのに何来てんの?みんなは?」 「ん、ああまだ祭りのトコいんじゃね?たこ焼き食う?」 「え、あ、うん!…じゃなくて…」 「じゃなくてなんだよ、おい、落とすなよ」 「ありがと……って健司いつも花火終わっても屋台が撤去し終わるまで帰らないのに」 「…そうだっけ?」 「そうだよ。どんだけ祭り好きなんだコイツって毎年思ってたよ」 「まぁ、好きだな。地元の祭りは」 「…ふぅん?」 「コラ、流すな」 「は?」 「地元の祭りは、好きだっつってんだろ」 「うん」 「オレは祭りは地元のヤツ以外はどんだけ誘われても行かないんだよ」 「え?なんで?祭り好きなんでしょ?」 「祭り自体好きか嫌いかっつっから普通なんだよ」 「…健司意味がわからないよ?」 「…っとに…このニブ!」 「はぁ!?健司の日本語がおかしいんでしょ!?」 「が一緒じゃねぇと祭りは楽しくねぇっつってんの!」 へ? 「…え…何、今のカミングアウト」 「……おい」 「は、はい?」 「来月、祭りあんだろ」 「あ…えと、あるね。ちょっと遠いけど」 「行くぞ、それ」 「へ?あ、…うん?」 「なんで疑問系で返すんだよ」 「いや…だって…なんか混乱してて」 「アレ、着て来いよ」 烏賊焼き咥えた健司が あたしが一日中ベッドの上から眺めていた新品の浴衣を指差す。 「いいけどー…あれ着て行ったら、ちゃんと言ってね?」 「…何を」 「さっきの話」 「…まぁー…いいけど」 ぱぁ、と窓の外が明るくなった。 と、同時に大きな音が鳴り響く。 「あ!花火上がったー」 もらった綿飴を食べながら、窓枠のほうに近づく。 健司も隣に水飴片手に近寄ってきた。 「…ンちから意外と見えんだな」 「んーでも迫力ないよねー」 「やっぱ外で見ないと見た気がしないな」 「じゃ、やっぱ来月だね」 「つうかさっきからチラチラ腰見えるんだけど誘ってんの?」 「ちょっ、何見てんのよ」 「パジャマ結構萌えるんだけど」 「…まだちゃんと言ってないからダメです」 「…ほっぺたに綿飴つけていばってんな」 くい、とあごを持たれて 頬を、舐められたのか、キス、されたのか。 (健司がこんなに堪え性がないとは知らなかったよ) (うっせーな、言っとくがもう止まんねーぞ) 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 おだい |